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41話 魔女の街ビャクヤ
しおりを挟む「えーと……うん、ここで合ってるね」
王都ヘイリオスを出て西へと向かい、まあちょっと色々あったけど、遂に魔女の街『ビャクヤ』へとたどり着いた……らしい。
「アサツキさん、やっぱりわたしにはただの森にしか見えないんですけど……」
目の前に広がるのは、鬱蒼と茂る暗い森……どこからか、カラスのような鳥の鳴き声まで聞こえてくる。
うーん、魔女が住んでそうな森ではあるわね。迷い込んできた子供を食べちゃいそうなタイプの。
「まあ、隠匿系の魔法結界ってそういうもんだから。それじゃあベルベルちゃん、ボクに続いてちょっと呪文を唱えてくれるかな?」
「あ、はい……呪文? 呪文唱えるんですか?」
「お日様、雛人形、カチコチアイス」
「お、おひさま、ひなにんぎょう、かちこちあいす……」
「この寂れた森を街へと変えよ!」
「こ、このさびれたもりをまちへとかえよ……?」
ええ、なんなのこの呪文……?
「うんうん、成功したみたいだね。それじゃあベルベルちゃん、森の入り口に大きな木があるでしょ?」
「えっ? あーはい、ありますね」
「あそこからビャクヤに行けるから、ちょっと入ってみようか」
「はい……はい?」
そう言うとアサツキさんは木に向かって歩き出す。
いやちょっと、そのままだと木にぶつかっちゃうんじゃ……
「……いざ行かん」
「えっ? ちょっと、デュラちゃんも!? ま、待って、ちょっ……ぶつかるぶつかる!」
わたしを乗せたデュラちゃんも木に向かって歩き出す。
ええ……本当に大丈夫なの?
「わっちょっと! あ、ぶつか……きゃああああ!!」
…………。
「……あれ?」
恐る恐る目を開けると、そこは木の中……とかではなく、普通に街中だった。
「ええ……? ここ、どこ……?」
「ビャクヤだよ」
__ __
「ここが魔女の街、ビャクヤ……」
さっきまで森の前にいたとは思えないくらい人で賑わっている、レンガ造りのお家と石畳が素敵なオシャレな街並み。
本当に魔法結界で隠されていたのね。これはさすがにお見事だわ。
「あっアサツキさん、なんか魔女っぽい帽子被ってる! いいな~」
「こっちのほうが変に目立たないしね」
今にも喋り出して入る寮を教えてくれそうなトンガリ帽子を被るアサツキさん。
周りを見ると、たしかにアサツキさんのような服装をしている、いかにも魔女ですって感じの人が多い。
「……わたし、浮いてません?」
「ベルベルちゃんも、そのローブみたいなの魔女っぽくていいと思うよ」
「本当ですか? これ、ヘイリオスのお城でメイドさんに着せてもらったお気に入りの服なんです。えへへ、魔女の街に溶け込めてるかな」
「謎の妖精に乗るパンチラ少女だから溶け込めてはいないかな」
「今はパンチラしてないですよ!」
うう、周りから結構見られてる気がする……とりあえずデュラちゃんから降りてアサツキさんと街を歩こう。
「デュラちゃん、ここまで乗せてくれてありがとうね。あなたはもう、わたしから解き放たれて自由に生きて……」
「都合の良い友達以上恋人未満みたいなこと言うね」
「そ、そんなこと言ってないですよ……!」
「……また、いつでも呼ぶと良い」
デュラちゃんはそう一言だけ呟いて、霧のように姿を消した。
「デュラちゃんに助けてもらってばかりでなんだか申し訳ないわ……アサツキさん、妖精ってなにか好きな事とか、貰って喜ぶものとかありませんか?」
「彼らは気まぐれだからねえ。ベルベルちゃんを乗せるのも、デュラちゃん本人は遊んでもらってるくらいの感覚かもしれない」
「ニンジンとか食べるかな?」
「馬じゃないんだから食べないと思うよ。まあ妖精の事は置いといて、とりあえず行こうじゃないか」
「どこにですか?」
「ボクの知り合いの魔女の家さ」
「ま、魔女の家……」
大丈夫かしら、ここホラーゲームの世界じゃないわよね。
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