無用少女のフェアリークエスト~女神様から授かったスキルが使えないと言われて勇者候補を降ろされたので妖精さんと旅に出ます~

ふぃる汰@単行本発売中

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47話 依頼よりも大切なこと

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「というわけで、占い屋のリンデンさんから妖精さんが出る魔道具を預かってきたんですけど」


「彩見の水晶か……」


 フェアリークエストの依頼人のリンデンさんから話を聞き、問題の水晶を受け取ってサントリナさんのお家に帰ってきたわたしは、アサツキさん達に依頼の詳細を話す。


「リンデンさんの話では、他の知り合いの占い師さんや、呪術師さんの魔道具にも同じような妖精が出没するみたいです」


「その魔道具っていうのは、全部水晶かい?」


「いえ、鏡だったり、水を注いで使う水鏡……これも鏡の1つなのかな? あとは夢を見ることで未来を占う儀式で、夢の中に現れたり、だそうです」


「未来視系の魔道具に影響する妖精ってことか」


「夢見の儀式に限っては、悪夢を見せる魔物の類ではないのかしら?」


「ナイトメアか。たしかにそっちの可能性もあるね」


「でも、皆さんが見た妖精なり魔物なりの姿を聞いた所、全員回答が同じでした」


 それはわたしが見たのと同じ、真っ黒で、目が黄色い妖精さん。
うん、あれは魔物じゃなくて妖精だった。
現れたとき、突然だからびっくりはしたけど、魔物特有の嫌な気配は感じなかった。


「それで、お二人にこの水晶の使い方を聞きたくて……リンデンさんは、魔道具だから使うだけなら誰でも使えるって言ってたんですけど、何度やっても起動しないんです」


「なるほどね、魔道具の扱いには最初はコツがいるから。それじゃあベルベルちゃん」


「はい、ご教授よろしくおねがい」


「晩ごはん食べにいこっか」


「はい、晩ごはん……はい?」


 ……。


 …………。


「あははは! ベルベルちゃんかんぱ~い!」


「あ、乾杯です」


「ちょっとぉ、ベルベルちゃんテンション低いわねぇ~はいかんぱ~い」


「あ、乾杯でーす……」


 もう乾杯10回目くらいなんだけど。
そりゃあ流石にテンションも下がってきちゃうわよ。


「あの、お二人とも飲みすぎでは……」


「なーに言ってんにゃ、まだ全然食前酒」


「全然ごはん食べまくってるじゃないですか……にゃ?」


 アサツキさん、泥酔するとこんな感じになるのね。


「うふふ、アサツキちゃんはいつもクールぶってるけど、酔うと可愛いのよ」


「サントリナさんも同じくらい飲んでますけど、まだまだ平気ですか?」


「アタシは事前に代謝活性ポーション飲んできたから」


「代謝活性ポーション?」


「お酒を飲んでも酔いにくくなる効果のポーションよ。アタシの店の売れ筋商品」


「そんなのあるんだ……」


 昔、お父さんが会社の飲み会から帰ってきた時に飲んでたやつも同じようなドリンクだったのかしら。


「ここのお店、アタシの行きつけなの。お酒の種類が豊富でね。お料理も美味しいでしょ」


「はい、お料理とっても美味しいです……でもなんでこんな、お料理の色がピンクとか水色とかなんですか……?」


 まっピンクのパスタに、水色のミートパイ、虹色の葉っぱのサラダ……
味は普通に美味しいのが不思議さに拍車をかけている。


「こっちのほうが映えるでしょ?」


「ええ……」


 異世界も映えとか気にするんだ。
まあでも確かに、ファンタジー感溢れる料理で新鮮かも。


「これって、なにか魔法とかで着色してるんですか?」


「いえ? ここのお店は天然素材にこだわってるから、お料理にそういう添加系の魔法は使ってないわよ」


「そうなんですか、天然素材……えっ」


 こ、こんな色のお野菜とか動物がいるってこと?


「べれべれちゃ~ん、それ食べさせて~」


「ベルベルです。べれべれなのはアサツキさんじゃないですか」


「あ~ん」


「もう、しょうがないですね。はいアサツキさん、あーん」


「……ベルベルちゃん、あなた将来クズ男に引っかかって地獄に落ちるわよ」


「占い師さんみたいなこと言わないでください!」


 こうして、ビャクヤに来た最初の1日はあっという間に過ぎていったのでした。


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