5人の王子様とマネージャーの話♡アイドルの秘密を暴露します

はなたろう

文字の大きさ
2 / 10

CASE1 楽屋の雑談

「あ、みつけちゃった……」


国宝級イケメン、コウキの顔がすぐ間近に迫る。


「ほら、ここにも」


ドラマのワンシーンか、はたまた不意打ちのキスでもされるのか――。


「……もう、抜いちゃえば?」

「だ、だめよ、そんなの」


ツンと軽く引っ張られたのは――。


「白髪なんて、ばばぁになれば、みんな生えてくるもんだろ」

「サクヤ!お黙りなさい!自ら白髪にしてるヤツにはわからないよ」


私は反射的に頭を押さえて飛び退いた。


「オレは白髪じゃないし、これはシルバーアッシュ」


サクヤがコーラを飲みながら反論した。


「サクヤもケイタも、髪をいじめすぎだからね。いつか後悔するわよ」

「葉山さん、そんなに気にしないで大丈夫だよ。まだ数えるほどだし」


コウキは困ったように眉を下げた。

優しいフォローのつもりだろうが、その「数えるほど」という言葉が、逆にリアルな本数を突きつけられているようで胸に刺さる。

そう、コウキは嘘をつかないから。


そこへ、涼やかな足音が近づいてきた。


「おはようございます」


現れたのはジュンだ。

ヘアケアブランドのCMキャラクターも務める彼の髪は、今日も光を反射して、一筋の乱れもなくサラサラと流れている。


「ジュンは黒髪サラサラでいいわね。……あぁ、キューティクルが羨ましい」


心底ため息が出る。


「はぁ、白髪ならともかく、薄毛になったらどうしよう」


年齢の壁は厚い。
40代の嘆きを聞いて、コウキがなぜか自分の頭に手をやり、神妙な顔つきになった。


「ねぇ、ジュン。その美髪の秘訣は何なの?特別なサロン?高いオイル?」


私が食い気味に尋ねると、ジュンは無表情のまま、短く答えた。


「特別なことはしてないけど」

「嘘つき」


職業柄たくさんの女優を見ている。美容に関して「特別なことはしてない」ほど、簡単な嘘はない。


「うーん、納豆汁とか?」

「納豆汁?」

「子どもの頃からよく食べてたけどね」


東北の雪国育ち。
そういえば、ご両親にお会いしたとき、ふたりとも年齢を感じさせない黒髪だった。


「納豆ね」

「納豆か」


どんな高級トリートメントよりも説得力があるから不思議だ。


私とコウキが真剣に聞くのが面白かったようで、ジュンがふっと口角を上げた。


「まぁ、期待しすぎても無駄ですよ。僕のおじいちゃん、毎日ワカメ食べてるけど、頭はツルツルだからね」

一瞬の沈黙。

「おはようございまーす」


そこへ、何も知らないケイタが金髪をなびかせてやってくる。

というか、入り時間に遅れてるのよ。


「ケイタ……あんた、今のうちに納豆食べときなさい」

「え、なんの話?ってか、納豆は苦手なんだけど」

「いいから、明日から全員お弁当には納豆を付けるわよ!」


それくらいの経費はいくらでも事務所が出せる。


最高傑作dulcis〈ドゥルキス〉の未来を案じるのは、マネージャーとして当然のことですからね。


「俺の通う美容クリニック、頭皮ケアもやってるよ。紹介しようか?」


楽屋の隅で、自分が表紙の雑誌を読んでいたアラタだ。


「スカルプケアのコース、予約してやるよ。ふたり分な」

「……お願いします」


私とコウキが重なった。


「それよりさぁ、ボク、タトゥ入れたいなぁ」

「は?」


これには、ケイタ以外の全員が反応した。


「ANNA♡って、首すじあたりに」

「ダメに決まってるじゃない!なに考えてるのよ!」

「うーん、やっぱりダメか」


あぁ、やっぱり。
この王子様たちの相手をしている間は、どんなに納豆を食べても、ストレスで毛根が悲鳴をあげてるわね。


そのとき、スタッフが扉をノックした。

「dulcis〈ドゥルキス〉さん、出番です」


空気が一瞬で切り替わる。


「ほら、行くわよ」


私は手を叩いた。
さっきまでくだらない話で笑っていた男たちが、すっと立ち上がる。

全員、もうアイドルの顔だ。


「行ってらっしゃい」


光の向こうへと消えていく。
新曲の初披露、フルバージョンでのパフォーマンス。

細胞が一気に目覚めたみたいに、体の内側からじんわり熱が広がっていく。

キラキラと輝く5人を見ると、私の中の細胞が活性化するのがわかる。


私はそっと自分の頭に手をやった。
帰りに納豆、買って帰ろう。


輝く男たちの近くにいる以上、恥ずかしくない自分でいたいから――。
感想 0

あなたにおすすめの小説

国宝級イケメンとのキスは、ドルチェみたいに私をとろけさせます♡ 〈dulcisシリーズ×コウキ編〉

はなたろう
恋愛
◆人気アイドルとの秘密の恋愛♡ コウキは俳優やモデルとしても活躍するアイドル。クールで優しいスパダリだけど、ベッドでは少し意地悪でやきもちやき。溺愛する彼女が他の男に取られないかと不安になることも。出会いから交際を経て、甘いキスで溶ける日々の物語をお届けします。 ◆出会い編あらすじ 都会の片隅にある植物園で働く美咲。 そこに毎週やってくる、おしゃれで長身の男性。カメラが趣味らしい。まさか、その彼が人気アイドル、dulcis〈ドゥルキス〉のメンバーだとは気づきもしなかった。ある日、彼からの「今夜会いたい」と突然のお誘い。 毎日同じだと思っていた日常、ついに変わるときがきた。 【作者より】 ・章ごとに完結しているので、長編ですがお好きな章から読んでいただいてOKです ・みなさまの心にいる、推しを思いながら読んでください… ・dulcis〈ドゥルキス〉は5人組アイドル。他のメンバーの物語も合わせてご覧ください ※2026年3月より改稿していきます。 一時的に非公開の章になることがあります。内容が大きく変わることはありませんがご了承ください。

癒やし系アイドルは、甘い歌声で私の心を離さない♡ 天使の微笑みの奥にある、静かな独占欲〈 dulcisシリーズ×ジュン編〉

はなたろう
恋愛
裏路地にある小さな猫カフェ『ネコのしっぽ』 猫田未唯は、店長の失踪によって400万円の借金と猫たちを残されてしまう。 未唯の救いは、彼は日本中を熱狂させる人気アイドルグループ 『dulcis』のメインボーカル・ジュンの存在。舞台出演の合間、こっそりと猫カフェに通うジュ 崖っぷちの経営の中でも、猫たちの居場所とジュンの憩いの場を守ろうと奮闘する未唯。 ジュンの助けで『ネコのしっぽ』活気を取り戻すが、人気店になってしまい、ジュンは来れなくなる。 ある夜、閉店後の店で再会したジュンは、初めてメガネを外し、素顔のまま告げる。 「ずっと君に会いたかった」 猫がつないだ出会いから始まる、癒やし系アイドルと猫カフェ店員の、優しくて甘い恋物語。

【完結】あるアイドル見習いの、恋にならないメロディをきいて

はなたろう
青春
静まり返ったダンススタジオに、サクヤがやってきた。生意気だった少年は、アイドルを目指す21歳の大人の男になっていた。 「踊ろうぜ」 差し出された手に触れると、あの日のメロディが静かに蘇る。 「才加、オレさ――」 サクヤの淡い初恋は、10年を経てようやく動き出す。その行方は――。 dulcis〈ドゥルキス〉のメンバー、サクヤがアイドルとして輝く前。少年から青年へと成長するまでの、原点となるサイドストーリー。 ※表紙と挿し絵はAIで作成しています

【完結】幼なじみは春を待たずに旅立った~雪の街に残された私の初恋~

はなたろう
青春
短編/完結★ジュンは私を置いてアイドルになった――。 雪に閉ざされた街で育った雪子にとって、幼なじみのジュンは「ずっと隣にいる存在」だった。 優しくて、誰にでも同じように笑う人。 だからこそ――その特別が、自分じゃないことも知っていた。 高校の修学旅行で訪れた東京。 そこでジュンはスカウトされ、「光の世界」へと足を踏み入れる。 彼は春を待たずに街を出ていった。 ――そして数年後。 再会した彼は、もう手の届かないアイドルになっていた。 それでも。 かつて自分がかけた一言が、彼の背中を押していたと知ったとき―― 止まっていた時間が、静かに動き出す。 これは、初恋を置いていかれた私が、もう一度前に進むまでの物語。 ★皆様からの反応が執筆のエネルギー源です。 いいな~と思ったら、お気に入りや♡をポチっとお願いいたします🎵

ツンデレ王子は深夜2時のシンデレラを溺愛する♡同級生のアイドルが彼氏になった夜 〈dulcisシリーズ×サクヤ編〉

はなたろう
キャラ文芸
国民的アイドルグループdulcis〈ドゥルキス〉のメンバー、サクヤ。 世間では「ツンデレ王子」として絶大な人気を誇る彼は、私にとっては中学校の同級生。アイドルになる前、同じダンススクールで知り合った昔馴染み。 大人になって再会した今は、ただのゲーム仲間。 二人きりで過ごしていても、深夜2時になると決まって「さっさと帰れ」と冷たく追い出される始末。 ——それが、私たちの当たり前だった。 それなのに、ある夜。 突然キスされて戸惑う小春。だけどサクヤの態度は相変わらずで、何もなかったかのように振る舞う。 近いのに遠い、曖昧な関係。 私はずっと、サクヤにとって“女として見られていない、都合の良い相手”なのだと思っていた。 現実の切なさを癒やしてくれるのは、オンラインゲームの世界。 そこで出会った東洋風のアバターの彼は、いつも献身的に私を守り、優しく寄り添ってくれる存在だった。 私は知らないうちに、その彼にばかり本音をこぼすようになっていた。 もう、この苦しい恋から卒業したい。 そう決めてサクヤからの連絡を断つと、職場の問い合わせに、サクヤを思わせる人物から連絡が届く。そこには、『ピンクのパンダ』というキーワードが添えられていた。 ゲームの世界で彼が連れていたオトモが、ピンクのパンダだった。 心機一転と参加した合コンの帰り。 部屋の前にいたのは、サクヤだった。 「いい加減気づけよ、鈍感」とサクヤは言う。 現実でも、ゲームでも。サクヤはずっとそばにいたのに。 深夜2時に伝えたかったのは「帰れ」ではなく——「帰らないで」だったなんて。 ツンデレだけど実は一途で不器用なトップアイドルに、私はずっと愛されていたなんて。 ※表紙は挿絵はAI生成 いいなと思っていただけたら、お気に入り登録ポチっとお願いします♡ 他のメンバ―が登場するdulcisシリーズも合わせてご覧ください

生徒会室は秘密の監獄 ~義兄の執着と溺愛~

はなたろう
BL
「僕だけを見ていればいい」 母の再婚で名門・聖音高校へ転入した篠原零。 派手な金髪で浮く零を、生徒会長で義兄の神大寺弦は、毎日のように生徒会室へ呼び出す。 「ネクタイが曲がってる、直してあげるよ」 放課後の生徒会室で、弦は零の行動を管理し、逃げ場を塞いでいく。 反抗するたびに押し付けられる、静かで冷たい支配と独占欲。 だが神大寺家には、もう一人の兄がいた。 穏やかな笑みで他人を壊すことを愉しむ長男・律。 弦が執着する零へ、律までもが異常な興味を示し始め――。 「君は、どれくらい壊れるのかな」 神大寺兄弟に絡め取られ、零は少しずつ逃げ場を失っていく。 逃げたいのに、 弦の腕の中だけが苦しいほど安心できた。 執着系生徒会長義兄×ツンデレ義弟。 閉ざされた生徒会室から始まる、甘く歪な学園共依存BL。

なぜかラブコメの主人公に転生したら幼馴染じゃなくて、友達のお母さんから好かれまくるし、僕の体を狙ってくる

普通
恋愛
ラブコメの主人公に転生した少年。それなのに幼馴染や後輩や先輩たちに好かれるよりも、その母親たちに好かれてしまっている。こんなはずじゃないのに、母親たちは僕の遺伝子を狙ってくる。 もうどうすればいいんだ!!!

会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)

久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。 しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。 「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」 ――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。 なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……? 溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。 王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ! ✽全28話完結 ✽辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。 ✽他誌にも掲載中です。 ✽2026.4/11 エブリスタ用に使用している表紙に変更しました。 →表紙はイラストをGrok タイトルをChatGPTでAI生成しています。