【完結】ドジな新人マネージャー♂に振り回される、クールなアイドルの胸キュン現場 <TOMARIGIシリーズ>

はなたろう

文字の大きさ
14 / 20
#1

13. 酔っちゃいました…

しおりを挟む
駅から少し離れた、隠れ家のような小さなバーだった。
古びた木製の扉を開けると、薄暗い店内には心地よいジャズが静かに流れている。

まだ夕方だからか、客はまばらだ。


「いらっしゃいませ」


桐生さんはスタッフに笑顔で挨拶を交わすと、慣れた様子でカウンターへ腰を下ろした。


「さてと、何を飲む?」

「えっと、あまり詳しくなくて、弱めのカクテルでオススメがあれば」

「うん、わかったよ」


桐生さんは、バーテンダーに軽く合図を送った。


やがて目の前に置かれたのは、透き通るような瑠璃色のカクテル。


「チャイナブルー。君に似合うと思って」

「キレイな色ですね」


グラスの中には、青い海のように澄んだ液体が揺れ、照明を受けてきらめく。


――伊勢くんの色だ。


伊勢くんのメンバーカラー、胸の奥が、きゅっと締めつけられた。


「乾杯」


そっとグラスを傾ける。

ライチの甘い香りと、グレープフルーツの爽やかな酸味。
炭酸のシュワシュワが心地よく喉を通り過ぎていく。


「人事異動だって?伊勢くん、寂しがってたよ」

「え……、まさか。僕なんて、ミスして怒られてばかりでしたよ。新しいマネージャーは、経験豊富で頼りになる方だと聞いてます」

「いやいや、違う違う!」


桐生さんは肩をすくめ、いたずらっぽく笑った。


「キスシーンの撮影日、覚えてる?」

「はい」

「あの日の夜、すっごい怒られたからね、伊勢くんに」

「え?」

「悪い虫から遠ざけられたのはいいけど、自分まで会えなくなって、かなり落ち込んでたよ。まあ、ドラマの役作りにはぴったりな状況だけどね」

「まさか……」


アルコールが回ったのか、顔が熱くなるのを感じた。


「キミ、本当に可愛いなぁ」


桐生さんは、熱を帯びた僕の頬を優しく撫でた。突然のことに、僕は思わず息をのんだ。


「こんな風に二人で飲んでたら、また伊勢くんに怒られてしまうな」

「そ、そんなこと……!」


緊張を紛らわすように、僕はグラスを一気にあおってしまった。


「明日でドラマはクランクアップ」

「そうなんですか。あっという間ですね」

「そう、しかも、ベッドシーンの撮影」

「べ、ベッド……!?」


思わず声が裏返り、グラスを持つ手が小さく震える。桐生さんが、くすっと笑みを漏らした。


「顔まっ赤だよ。君、そういう話には弱いんだね」


耳まで熱くなり、視線を落としてしまう。

頭の中に浮かぶのは、カメラの前で演じる伊勢くんの姿。
その相手役の顔が自分に重なってしまい、慌てて首を振った。


「伊勢くんは、誰を思いながら、演技をするのかな?」

「だ、誰って?」

「答えは、君が一番わかってるんじゃないかな」


その言葉が、僕の思考を完全に停止させた。

視界がぐにゃりと歪む。目の前の桐生さんが、二人、三人と増えていくようだ。


「大丈夫?」

「すみません……僕、お酒弱いんです。ちょっと、酔ってしまったかもしれません」

「そんな可愛いこと言うと、連れて帰っちゃうよ?」


ああ、だめだ。視線が定まらない。


「伊勢くんに見せてやりたいね。彼も怒った顔は可愛いからな」


桐生さんは苦笑しながら、僕のスマホを手にした。そして――


「もしもし、伊勢くん?」


伊勢くん?


「君の大事な人が、ここで酔いつぶれてるけど、どうする?早く来ないと、食べちゃおうかなぁ」


遠くで伊勢くんの声が聞こえた気がする。また、ぼくのミスを怒っているのかも。それとも、呆れているのかなあ。


伊勢くんに、会いたいなぁ……。


僕の意識は、そこでふっと途切れた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

オレンジの奇跡~夕と凪、僕らが交わる世界~

けいこ
BL
両親が営む小さな旅館『久我屋』を手伝いながら、BL小説を書いている僕。 穏やかにゆっくりと過ごす日常に満足していたある日、僕の前にとんでもなく魅力的な男性が現れた。 今まで1度も誰かを好きになったことがない僕にとっては、この感情が何なのか理解できない。 複雑に揺れ動く心に逆らえず、今までとは明らかに違う現実に戸惑いながら、僕の心はゆっくり溶かされていく……

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

イケメンに惚れられた俺の話

モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。 こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。 そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。 どんなやつかと思い、会ってみると……

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

前世で超有名だったBLゲーに転生してた

明瑠
BL
同性愛も異性愛も当たり前にある世界なのでチラチラとNLやGLも出てくる予定ですがBLメインのお話です 趣味に全振り 忙しい合間にちまちま書き進めていこうと思っています。たまに読み返しておかしな所があったらぼちぼち直していきます。 恋を知ってる青年と、まだ恋をした事がない彼らのお話

大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)

子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ 喰われるなんて聞いてないんだが(?) 俺はただ、 いちご狩りに誘われただけだが。 なのに── 誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に なぜか俺が捕まって食われる展開に? ちょっと待てい。 意味がわからないんだが! いちご狩りから始まる ケンカップルいちゃらぶBL ※大人描写のある話はタイトルに『※』あり

処理中です...