先輩アイドルに溺愛されて、恋もステージもプロデュースされる件 <TOMARIGIシリーズ>

はなたろう

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ステージ 1 〈高校編〉

10. ステージへ!

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ホテルの部屋で、スマホのアラームが鳴り響く前に目が覚めた。

カーテンの隙間から差し込む光が眩しい。

隣では、カイリがまだぐっすりと眠っている。ライブ当日の朝だ。

昨夜、蒼真先輩の部屋で過ごした時間を思い出し、オレはベッドの中で静かに頬を赤らめた。先輩の温かさ、そしてあの甘く優しい声。頭の中で反芻するだけで、心臓が大きく高鳴る。

先輩のためにも、今日は最高のパフォーマンスをしよう。


ライブは18時開演。リハーサルのために昼過ぎにホテルを後にする。


バスの窓から見える景色は、ライブ会場に近づくにつれて活気づいていく。

多くのファンが列をなして、会場の入り口へと向かって歩いている。8月最後の土曜日、まだまだ暑い日差しの下、ライブグッズのタオルを首にかけ、ペンライトやうちわを手に、期待に満ちた表情が見て取れる。みんな、キラキラと楽しそうな笑顔だ。

あの中に、オレのファンだと言ってくれた、あの子もいるのかな。

胸がじんわりと温かくなる。


バスが会場に到着すると、その巨大さに圧倒された。ライブ会場の入り口は、まるで別世界への入り口のように輝いている。TOMARIGIのライブとしては、過去最大の動員数。ステージから見る客席は圧巻で、ここにお客さんがいることを想像すると、さすがに足がすくむ。

でも、ここで活躍ができたら、デビューへの道は、きっと現実味を帯びてくるはずだ。

楽屋には張り詰めた空気が包まれていた。各々が衣装に着替え、メイクを施していく。オレもメイクさんに言われるがまま、椅子に座る。


「はい、ツバサくん、顔上げて」


サイドの前髪を編み込み、リップやアイラインを引かれる。鏡に映る自分は、普段の高校生とは違う、どこかプロの顔つきをしていた。


そのとき、隣の楽屋から、きらびやかな衣装を身にまとった、TOMARIGIのメンバーたちが姿を現した。

蒼真先輩、片倉さん、伊勢さん。スパンコールが付いた煌びやかなステージ衣装は、彼らの存在感を一層際立たせている。まるで、光を纏っているようだった。


「みんな、準備はいいか?」


片倉さんが、いつもの明るい声で候補生たちに呼びかける。


「はい!」


全員の声が揃う。


「ツバサ、準備できたか?」


蒼真先輩がオレの隣に立つ。そのオーラに気おされて、思わず後ずさってしまった。


「どうした?」

「あ、いえ、かっこいいなって」

「はは!ツバサにそう言ってもらえると嬉しいよ」


蒼真先輩は満足そうに頷き、オレの肩をポンと叩いた。


「ツバサだって、ちゃんとステージに上がる男の顔になってるよ」


その言葉は、誰よりもオレを勇気づけた。


開演時間が迫り、俺たち候補生とTOMARIGIメンバーは、舞台袖へと移動した。バックステージは、最終調整のため、ざわめきと緊張感が渦巻く。

開園を待ちわびるファンの歓声が、オレの心臓を早鐘のように打たせる。


「全員、位置について。3分後に開幕です」


ステージマネージャーの声が響く。


「よし、全員集合!」


TOMARIGIのメンバーを中心に候補生たちが円陣を組んだ。その周りを多くのスタッフが取り囲む。


蒼真先輩が、ゆっくりと口を開く。


「みんな、今日のライブ、最高のステージにしよう」


彼の声は、静かだが、会場の熱狂に負けない力強さがあった。


「俺たちのグループ名は、『止まり木』という意味だ。疲れた鳥が羽を休める場所、安心して帰ってこられる場所。俺たちは、ファンの皆にとって、そんな存在でありたいと思ってる」


その言葉に、オレは胸が熱くなった。


「TOMARIGIはメンバー3人だけじゃない。今日このステージに立つ全員、そしてかかわってくれたスタッフ。みんなの努力で、ファンの心に安らぎと、そして明日への希望を与えるんだ」


蒼真先輩の瞳は、真っ直ぐに俺たち全員を見つめていた。


「さあ、行こう!最高のパフォーマンスを!」

「おー!」


全員の力強い声が、舞台裏に響き渡る。


呼吸を整えながら、オレは深く息を吸う。幕の向こうから、カウントダウンの声がこだまする。


いよいよだ。
眩い光が、オレたちの目の前に広がった。

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