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ステージ 1 〈高校編〉
19. 最終審査の行方
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3月、TOMARIGI追加メンバーの最終選考日。
事務所のレッスン室、集合時間より早く着いたオレは、スマホを握らしめていた。
「ど、どうだった?」
なぜかオレより緊張した顔のカイリ。
「う、うん」
午前10時になった。
合格発表のページを、震える指で更新した。数秒の長いフリーズの後、画面に「合格」の二文字が表示される。
「う、受かった!」
「まじか!」
冬休み中、蒼真先輩にもらったお守りを、握りしめて勉強した日々が蘇る。
深夜の玄関先で交わしたキスと、先輩の温かい腕の中にいた時間。全部が、この瞬間のためにあったんだ。喜びと安堵が、全身を駆け巡った。
「やったな、ツバサ!お前なら絶対受かるって信じてた!」
カイリは心底嬉しそうに微笑み、グッと拳を握ってくれた。
「これで心置きなく、全快でパフォーマンスできるな!」
「うん、ありがとう」
その時、別の候補生がオレたちの方へやってきた。彼は、ファン投票でオレを罵った一人だった。
「へえ、めでたいじゃん。今日の選考に落ちても、めでたく大学生ってわけだ」
皮肉のこもった言葉に、カイリの表情が固まる。だが、オレは冷静だった。
「この選考に、人生をかけてきた気持ちはわかる。お前の本気は、見てればわかるよ」
「な、なに言って……」
顔を赤らめている。意外と褒められるのは苦手らしい。
「でも、オレも同じだから」
そう言うと、彼の顔から皮肉な笑みが消えた。
その目に、これまでの敵意とは違う光が、微かに宿っているように見えた。
「お、みんな集まってるね!」
スタッフがやってきた。
「準備はいい?今日は生中継でのパフォーマンスだからね!そろそろ準備お願いします」
緊張した空気を切り裂いた。
スタジオのドアを開けると、正面にはカメラが複数台並んでいて、その向こうには小さな観覧席。そして、審査員席には、TOMARIGIメンバー、事務所の偉い人たちが並んでいる。
「1人ずつ、TOMARIGIのデビュー曲、『Light up』を披露してもらいます」
スタッフの声が、静まり返ったスタジオに響く。
オレは深呼吸をして、胸の中で蒼真先輩からもらったお守りを握りしめた。先輩の温かい手の感触、夜の玄関で交わしたキスが、目を閉じるたびに蘇る。
視線を上げると、審査員席で先輩がオレを見つめて微笑んでいる。その一瞬で、胸の奥の緊張が少し溶けていく。
受験も、アイドルも、そして蒼真先輩との恋も。全部、手に入れる。
オレは静かに、そしてゆっくりと目を閉じた。心臓の奥で、熱い決意が燃えている。
「ぶちかませ、ツバサ」
小さく、自分自身に言い聞かせるように。
事務所のレッスン室、集合時間より早く着いたオレは、スマホを握らしめていた。
「ど、どうだった?」
なぜかオレより緊張した顔のカイリ。
「う、うん」
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合格発表のページを、震える指で更新した。数秒の長いフリーズの後、画面に「合格」の二文字が表示される。
「う、受かった!」
「まじか!」
冬休み中、蒼真先輩にもらったお守りを、握りしめて勉強した日々が蘇る。
深夜の玄関先で交わしたキスと、先輩の温かい腕の中にいた時間。全部が、この瞬間のためにあったんだ。喜びと安堵が、全身を駆け巡った。
「やったな、ツバサ!お前なら絶対受かるって信じてた!」
カイリは心底嬉しそうに微笑み、グッと拳を握ってくれた。
「これで心置きなく、全快でパフォーマンスできるな!」
「うん、ありがとう」
その時、別の候補生がオレたちの方へやってきた。彼は、ファン投票でオレを罵った一人だった。
「へえ、めでたいじゃん。今日の選考に落ちても、めでたく大学生ってわけだ」
皮肉のこもった言葉に、カイリの表情が固まる。だが、オレは冷静だった。
「この選考に、人生をかけてきた気持ちはわかる。お前の本気は、見てればわかるよ」
「な、なに言って……」
顔を赤らめている。意外と褒められるのは苦手らしい。
「でも、オレも同じだから」
そう言うと、彼の顔から皮肉な笑みが消えた。
その目に、これまでの敵意とは違う光が、微かに宿っているように見えた。
「お、みんな集まってるね!」
スタッフがやってきた。
「準備はいい?今日は生中継でのパフォーマンスだからね!そろそろ準備お願いします」
緊張した空気を切り裂いた。
スタジオのドアを開けると、正面にはカメラが複数台並んでいて、その向こうには小さな観覧席。そして、審査員席には、TOMARIGIメンバー、事務所の偉い人たちが並んでいる。
「1人ずつ、TOMARIGIのデビュー曲、『Light up』を披露してもらいます」
スタッフの声が、静まり返ったスタジオに響く。
オレは深呼吸をして、胸の中で蒼真先輩からもらったお守りを握りしめた。先輩の温かい手の感触、夜の玄関で交わしたキスが、目を閉じるたびに蘇る。
視線を上げると、審査員席で先輩がオレを見つめて微笑んでいる。その一瞬で、胸の奥の緊張が少し溶けていく。
受験も、アイドルも、そして蒼真先輩との恋も。全部、手に入れる。
オレは静かに、そしてゆっくりと目を閉じた。心臓の奥で、熱い決意が燃えている。
「ぶちかませ、ツバサ」
小さく、自分自身に言い聞かせるように。
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