先輩アイドルに溺愛されて、恋もステージもプロデュースされる件 <TOMARIGIシリーズ>

はなたろう

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ステージ 1 〈高校編〉

最終話 約束の夜

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蒼真先輩の部屋に着くと、玄関先で靴を脱ぐ間もなく抱きしめられた。


「頑張ったな、ツバサ」


その一言に、涙が止まらなくなった。たまらず、蒼真先輩の背中に腕を回した。

合格できなかった悔しさ。カイリが合格した安堵と寂しさ。全部がごちゃ混ぜになった。


蒼真先輩の胸の中で声を殺して泣いた。


「選考する側の人間として、真摯に向き合い努力してくれたことに感謝している。だけど俺は、お前をTOMARIGIに入れられなかった。選んでやれなかったこと、申し訳ないと思っている」

「そんなこと……!」

「いいから、聞いてくれ」


先輩は、そう言ってオレの手を握った。先輩の手は、大きくて温かかった。


「だけど、俺は、お前の才能を誰よりも信じている。お前には、誰にも真似できない、お前だけの魅力がある」


先輩は、そこで一度言葉を切った。


「俺が、お前の才能を、世界中に見せつけてやる」

「え?」


先輩は、そんなオレを優しく抱きしめてくれた。


「だけど、それは少し先の話だ。今夜は、俺だけのツバサでいて欲しい」


蒼真先輩はそう言うと、冷蔵庫からケーキを取り出してきた。小さなホールケーキに、ろうそくが一本。


「誕生日、おめでとう」

「えっ」


忘れていた。いや、オレ自身、必死で気に留める余裕もなかった。今日が自分の誕生日だなんて。

先輩が火を灯すと、淡いオレンジ色の光が部屋を照らした。


「願い事は?」

「……先輩と、一緒にいたい」


呟いた声は自分でも驚くほど小さかったけれど、蒼真先輩は聞き逃さなかったらしい。優しく微笑まれた。


「叶えてやるよ」


そして、火を吹き消した瞬間、唇を塞がれた。

最初は震えるくらいにやさしいキスだった。オレが無意識に先輩の服をぎゅっと掴むと、彼の手が首筋に滑り、熱を帯びた。


「誕生日プレゼント、欲しいものは?」

「……キス、もっと」


我慢できなくて、おねだりしてしまった。

先輩は小さく笑い、再び唇を重ねてくる。何度も、何度も。息が苦しくなるほど深く。

涙も、寂しさも、全部溶けていく。


そして、蒼真先輩の手が、背中にスッと入り込んできた。


「怖い?」


先輩の言葉に、胸が締め付けられる思いだった。先輩は、オレの気持ちを、どこまでも大事にしてくれている。


「大丈夫です」


オレは、そう言って、身体を預けた。


「蒼真先輩が、オレを必要としてくれるなら、オレは……」


そこまで言って、言葉が詰まってしまう。顔が熱くなるのを感じた。

先輩は、オレの言葉の続きを待つように、じっとオレの目を見つめていた。その瞳は、まるで星空のように深く、オレの全てを見透かしているようだった。


「全部、受け止めます」


先輩の腕の中で、オレは静かに頷いた。


「ツバサ」


再びオレの唇にキスを落とした。今度は、さっきよりも深く、熱いキスだった。

オレは、先輩の首に手を回し、そのキスに応えた。二人の体が、熱を帯びていく。


「俺は、ずっと、この時を待っていた」


先輩の瞳は、これまでにないほど熱く、真剣だった。オレは、その瞳に吸い込まれるように、ただ先輩の胸に顔を埋めた。


「ずっと、側にいてください」


オレの声は、夜の静けさに溶けて消えた。

答えの代わりに、蒼真先輩の唇がそっと重なる。
熱と鼓動が混ざり合い、二人だけの世界が広がっていく。




――こうして、オレのアイドルへの道は。まだ終わらない。本当のドラマは、蒼真先輩と歩んでいく。

そう、まだ始まったばかりだ。

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