いじめられっ子の僕は、異世界で無双する。

せつ

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死んだはず

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ーーーーチュンチュン、ピチチ

窓から光が差し込んでいる。明るい、…朝だ。

僕は腫れた首元をさすって、体の外から見える位置を確認する。

「……あっ、ここアザができてる」

僕はそこだけに家に落ちてた絆創膏を貼った。
体中が痛い。鉄の味がする。……一日が、始まる。
切り餅を一つ焼いて食べ、ボロボロなリュックを背負って家を出た。

「ねーあの人くさぁい」

「こら!そんなこと言わないの。」

通りすがった親子から視線を感じた。どこかの傷が見える位置にあったのだろうか。何を話していたのか聞こえなかった。………まあ、いつものことか。
僕はそのまま歩き進んだ。


学校につき、下駄箱の中の上履きを探す。

ーーーない。

またあそこだろうかと思い、近くのトイレの中のゴミ箱を確認する。
あった。

僕はそれを拾い、トントンと音を鳴らして履いて、自分のクラスへ向かった。

ガラガラ

教室がしんと静まりかえる。

「ーーーうわ、またあいつあんな服で来たよ。」

「よく学校来れるよな。」

「くっせーな、来るんじゃねぇーよ。」

「うわーーー………なんで来るのよ」

「今日は来ないに賭けてたのに!負けたじゃないのなんで来たのよ!!あーもーあたしのおかずぅー」

いろいろな人から冷ややかな視線を送られる中一番鋭い視線を感じ、その元の人を探す。
クラスの可愛い系男子、川野さんだ。

「ーーふふっ、また来たのぉ~?いい度胸してるじゃぁ~ん」

その後、川野さんは小声で僕にこう言った。

「ーー君が最初、生意気な格好して皆の気を引こうとするからだよ?自業自得だよ。あぁ、いい気味。」

そうだ。高校生活初日、僕はいわゆる高校デビューをしようと思い、髪の毛を少し切り制服もしっかり着て学校に行ったのだ。

それが、川野さんの気に触ったのだろう。僕は、色々な男に遠目で見られたまに話しかけられていた。どうしていいのかも分からずあたふたしていると、川野さんが僕に突っかかってきたのだ。

その後も、川野さんとその川野さんの取り巻きにいじめられ、親からの教育と川野さん達からのいじめの跡が隠せなくなり、皆が離れていったのだ。

……自業自得だろう。僕は、中学校生活に嫌気がさして少しでも変わろうとしてしまったのだ。全部僕が悪いのに。

僕は、返す言葉も見つからず自分の席へと向かった。

「は?ーーなに無視してんだ、よっ!」

どたーーーん

足を引っかけられて、僕は盛大に転んでしまった。もう17歳だというのに、盛大に、だ。周りの皆は笑ってる。もちろん、川野さんもだ。ーーーー辛い。そんな目で見ないで。あぁ、気持ちが悪い。
僕がイヤな思いをすれば皆は笑う。そういうものなのだろうか。いや、そんなことはないだろう。きっと僕が、僕が全部全部悪いんだ。

「……………ごめんなさい」

「ん~~?どうして謝るの?僕は何も悪い子としてないのにぃ……もしかしてぇ、僕のこと悪者にしようとしてるの?」

川野さんはわざとらしく目に涙を浮かべ取り巻きの男達に話しかける。

「なっ!川野さん………!川野さんは何も悪くない!悪いのは薄汚いあいつだよ!」

ーーバキッ

「おらっ、!なにっ、!俺達のっ、!川野さんをっ、!いじめてるんだよっ!」

ードカッ!バキッ!ゲシゲシッ!

僕は取り巻き達に何度も何度も蹴飛ばされた。

「…………ごめんなさい、僕が全部悪いです。川野さんに悪いことを言ってしまって、……生きていてごめんなさい。」

「はぁ!?お前、そんなんで許されるとでも…」

「………そうだよねぇ。君もいくら悪気があったとはいえ人間だししょうがないよぉ。みんな、そんなに蹴らないであげてぇ……」

川野さんは俺を見下ろしてほくそ笑み、嘘っぽい笑みを浮かべる。

「っ!!!川野さんお優しい…!!ほら!!お前も、川野さんの優しさに免じて許してやるから早く座れ!!次やったら許されねぇからな!」

ようやく先生が来て、ボロボロになった僕をスルーして朝のHRを始めた。


そこからは、いつもと同じだった。


ーーー放課後、家に帰る。
ドアを開けると、早速ママに教育を施される。

「ーーーゆき…なんで女の子じゃなかったのよ……こんな汚らわしい男だなんて……あぁ、イヤだわ…………私のゆきちゃんを返してよ…こんな…こんなモノなんて生むはずじゃなかったのに……コレのせいで私の人生最悪よ!」

いつものように何度も何度も何度も何度も怒られ、僕の部屋でたたき込まれる。

ビシッ、バシッ、ビシッ、バシッ、バシバシバシバシ……

………痛い。痛いよ。僕が女の子に生まれなかったから。こんな目に遭ってるんだ。雪って言う名前も、生まれてくるはずの女の子の為にママが付けた名前だったのに…ぼくが生まれてしまってごめんなさい。……………

生まれたときの記憶が蘇る。……ママの、残念そうで絶望した顔。
…ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。


…いままで受けた扱いに似合う言葉が、やっと出てきた。


ーーー死のう。


お母さんももういないお父さんも生まれてくるはずだった本当の雪ちゃんも先生も川野さんもその取り巻きもクラスの皆も全員、……僕が死ぬのを待ち望んでいるのだ。

そこからは早かった。僕は次の日休み時間に屋上へ行むかい、上履きを脱いで下をのぞき込んだ。

ーーー高い。

そりゃそうか。ここ、階数でいうと5階だしな。……休み時間が終わる前に飛び降りなきゃ

びゅうっ………

……………怖い。やっぱり、死ぬのは僕でも怖かった。いままでいろいろなことをされ、いいことなんて何もなかった僕でも死ぬのは怖かったのだ。心底自分に吐き気がした。こんなに死ぬのを望まれているのに死なないなんて、なんて性格が悪いのだろうと。あぁ、早く死ななければいけないのに。でも、怖い……、ここから落ちたら痛いだろうな…いままでで一番。

そう考えていたら、強い風が吹き床を踏み外してしまった。

ーーーーびゅうううううううううっ!

ーーー落ちている。本当に、これから、僕は死ぬんだ。
走馬灯のように今までの記憶が流れる。死ぬとき、時間がゆっくりに感じるって本当なんだな。
…ああ、良い思い出はひとつもないや。

窓から、先生の驚きつつも面倒くさそうな顔、川野さんやその取り巻き達の心底嬉しそうな顔が見えた気がした。


ーーーごめんなさい。


こうして、俺は地面に強く頭をぶつけ、衝動的に目を瞑った。死んだ…………はずなのに、なぜまだ考えているのだろうか?


そして僕が目を開けると、そこには青く茂った草木と青い空が見えた。後頭部は少しヒリヒリする程度だった。
…………ここはどこだろうか。死後の世界?………いや、クラスメイトが言っていた、異世界、というやつだろうか。

俺は、探るようにして歩き出してみた。
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