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7 1st ミッション:デートに誘う②
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「店がお休みの日に?」
「うん、今度の月曜日、祝日の時。その――もし空いてたら俺と一緒にお出掛けしない?」
「……えっ!?」
ある日の朝、いつものようにセレスタイトを訪れた蓮は、泉水にそう切り出した。
さりげない感じを最大限に装って余裕の笑みを浮かべているが、実際のところ握りしめた拳は手汗でびっしょりである。
カウンター越しに立つ泉水は大きく目を見開き、蓮を見詰め返している。
真正面からジッと見詰められることにもドキドキするが、予想以上の戸惑いが伝わってきて蓮の心拍数は上がりっぱなしだ。
「僕と蓮くんが、2人で……?」
「うん。ダメ……かな??」
小首を傾げ、年下らしさをアピールしてみる。だが蓮は泉水より身長が高いので、上目遣いで「お願い♡」とはいかず、可愛さを訴えることにはあまり成功していない。
「ダ、ダメって言うか……ええっと、あの、その」
あからさまに目を泳がせ挙動不審になった。泉水のその様子を見て、蓮は慌てる。
やはりムリなのだろうか――
橘の言う通り、好意を向けられていると分かると腰が引けてしまう、というのは本当らしい。
(マズい……このままじゃ断られる……!)
危機を察知し、蓮はさらに言葉を続けた。
「えーっと、泉水さん行ったことあるかな? 横須賀にある『ツキナギ』ってお店」
「……え、『ツキナギ』!? 珈琲の有名店だよね。行ったことはまだ無いけど……!」
蓮が店名を告げると、泉水は喰い気味に言葉をかぶせてきた。思いがけず気になっていた店の名前が出てきて、戸惑っている場合ではなくなったらしい。さすが「珈琲マニア」と言うべきか。
「でも土日営業だけで、予約しないと中々入れないって聞いたよ?」
話に乗って来てくれたので、一縷の望みを賭けてさらに話を続ける。
「祝日はやってるんだ。だから、今度の月曜日は営業してるんだよね。俺はたまたまその日が都合良かったから、予約を入れてて……店長が珈琲の焙煎名人として有名だとか? もしかしたら泉水さんも興味あるかなーって」
反応を伺うようにそっと泉水を見ると、白い頬に赤みが差して何とも嬉しそうな顔になっている。ぱあぁ…と効果音付きの後光が差して見えるようだ。
(うっ可愛い、眩しいっ)
表情は崩さず、目を眇めながらそっと胸の裡で呟く。
「もちろんある!大ありだよ。実はずっと行きたいと思ってたんだけど、土日しかやってないと思ってたから……でも本当に俺と一緒でいいの?誰か他に行く予定だったとか?」
「まぁ、お客さんに頼まれて予約したんだけど。行けなくなったって振られちゃったからさ……泉水さんが一緒に行ってくれるなら、ありがたいんだよね」
本当は「泉水のために予約した」と、声を大にして言いたい所だが……また困らせてしまっては元も子もない。嘘が混ざるのは心苦しいが、一緒に行きたい気持ちは本物だ。
「……そっか。じゃあ、是非、僕なんかで良ければ。ありがとう蓮くん」
――「僕なんかで良ければ。ありがとう蓮くん」……
――「ありがとう蓮くん」……
――「蓮くん」……
少し照れたような泉水の声が、エコー付きで頭の中に繰り返しこだまする……。
はにかんだ笑顔を向けられ、何かに心臓を射抜かれた――……いや、もちろん錯覚だ。
(照れ顔ヤバい)
平静を装っていた表情筋が一気に弛みそうになり、くっ、と奥歯を噛みしめる。
笑顔の威力と安堵のせいで、蓮は腰から崩れ落ちそうになった。
カウンターに肘をつき脱力しそうな身体をグッと押しとどめ、なんとか微笑み返す。ふにゃりと力の抜けた、締まらない笑顔になってしまったが。
「僕なんかって……いや、泉水さんならって、すぐに思い浮かんだんだからね?」
「あ、いやごめん。蓮くんなら一緒に行きたがる人が沢山いるだろうと思ってさ。……当日、楽しみにしてるよ」
はぐらかすような表情が気にはなったが――兎にも角にも出かける約束を取り付けることに成功した。
「1stミッションクリア」、である。
泉水に見えない所で、蓮は思わず小さくガッツポーズをした。
移動しつつ、レジからコの字型に店の奥につながっている座席へ視線を向けたが、今日、橘は店にいないらしい。
『ツキナギ』という店の情報の出所は橘だ。「泉が行きたがっているが、未だに行けていない店」として教えてくれたのだった。
たまたま月曜日に予約が取れて、運命も味方してくれたかもしれない。
後で報告しなければ…!と、蓮の心は一気に薔薇色になった。
未だかつてこんなに「よっしゃー!」と叫びたくなった経験があるだろうか?(いや無い)。
まさに我が世の春、といった気分である。
(いやいやいや、お出掛けに誘えたくらいで……落ち着け、川嶋蓮)
ニヤけた顔を手のひらで隠し、自分にツッコミを入れる。これでも百戦錬磨のホストの端くれではないか。こんなのはまだまだ想定内の展開……(のはず)だ。
しかもデートと言っても、完全に「非公認」である。公式サイド(泉水さん)にはそんなつもりは1ミリもないだろう……。まだまだ、こっそり地下で応援している「唯のファン」の域を出ない。悲しい現実だが。
それでもまぁ、1歩前進できたことの意味は大きい、と……隠しきれない喜びと共に、蓮はそう思うことにしたのだった。
「うん、今度の月曜日、祝日の時。その――もし空いてたら俺と一緒にお出掛けしない?」
「……えっ!?」
ある日の朝、いつものようにセレスタイトを訪れた蓮は、泉水にそう切り出した。
さりげない感じを最大限に装って余裕の笑みを浮かべているが、実際のところ握りしめた拳は手汗でびっしょりである。
カウンター越しに立つ泉水は大きく目を見開き、蓮を見詰め返している。
真正面からジッと見詰められることにもドキドキするが、予想以上の戸惑いが伝わってきて蓮の心拍数は上がりっぱなしだ。
「僕と蓮くんが、2人で……?」
「うん。ダメ……かな??」
小首を傾げ、年下らしさをアピールしてみる。だが蓮は泉水より身長が高いので、上目遣いで「お願い♡」とはいかず、可愛さを訴えることにはあまり成功していない。
「ダ、ダメって言うか……ええっと、あの、その」
あからさまに目を泳がせ挙動不審になった。泉水のその様子を見て、蓮は慌てる。
やはりムリなのだろうか――
橘の言う通り、好意を向けられていると分かると腰が引けてしまう、というのは本当らしい。
(マズい……このままじゃ断られる……!)
危機を察知し、蓮はさらに言葉を続けた。
「えーっと、泉水さん行ったことあるかな? 横須賀にある『ツキナギ』ってお店」
「……え、『ツキナギ』!? 珈琲の有名店だよね。行ったことはまだ無いけど……!」
蓮が店名を告げると、泉水は喰い気味に言葉をかぶせてきた。思いがけず気になっていた店の名前が出てきて、戸惑っている場合ではなくなったらしい。さすが「珈琲マニア」と言うべきか。
「でも土日営業だけで、予約しないと中々入れないって聞いたよ?」
話に乗って来てくれたので、一縷の望みを賭けてさらに話を続ける。
「祝日はやってるんだ。だから、今度の月曜日は営業してるんだよね。俺はたまたまその日が都合良かったから、予約を入れてて……店長が珈琲の焙煎名人として有名だとか? もしかしたら泉水さんも興味あるかなーって」
反応を伺うようにそっと泉水を見ると、白い頬に赤みが差して何とも嬉しそうな顔になっている。ぱあぁ…と効果音付きの後光が差して見えるようだ。
(うっ可愛い、眩しいっ)
表情は崩さず、目を眇めながらそっと胸の裡で呟く。
「もちろんある!大ありだよ。実はずっと行きたいと思ってたんだけど、土日しかやってないと思ってたから……でも本当に俺と一緒でいいの?誰か他に行く予定だったとか?」
「まぁ、お客さんに頼まれて予約したんだけど。行けなくなったって振られちゃったからさ……泉水さんが一緒に行ってくれるなら、ありがたいんだよね」
本当は「泉水のために予約した」と、声を大にして言いたい所だが……また困らせてしまっては元も子もない。嘘が混ざるのは心苦しいが、一緒に行きたい気持ちは本物だ。
「……そっか。じゃあ、是非、僕なんかで良ければ。ありがとう蓮くん」
――「僕なんかで良ければ。ありがとう蓮くん」……
――「ありがとう蓮くん」……
――「蓮くん」……
少し照れたような泉水の声が、エコー付きで頭の中に繰り返しこだまする……。
はにかんだ笑顔を向けられ、何かに心臓を射抜かれた――……いや、もちろん錯覚だ。
(照れ顔ヤバい)
平静を装っていた表情筋が一気に弛みそうになり、くっ、と奥歯を噛みしめる。
笑顔の威力と安堵のせいで、蓮は腰から崩れ落ちそうになった。
カウンターに肘をつき脱力しそうな身体をグッと押しとどめ、なんとか微笑み返す。ふにゃりと力の抜けた、締まらない笑顔になってしまったが。
「僕なんかって……いや、泉水さんならって、すぐに思い浮かんだんだからね?」
「あ、いやごめん。蓮くんなら一緒に行きたがる人が沢山いるだろうと思ってさ。……当日、楽しみにしてるよ」
はぐらかすような表情が気にはなったが――兎にも角にも出かける約束を取り付けることに成功した。
「1stミッションクリア」、である。
泉水に見えない所で、蓮は思わず小さくガッツポーズをした。
移動しつつ、レジからコの字型に店の奥につながっている座席へ視線を向けたが、今日、橘は店にいないらしい。
『ツキナギ』という店の情報の出所は橘だ。「泉が行きたがっているが、未だに行けていない店」として教えてくれたのだった。
たまたま月曜日に予約が取れて、運命も味方してくれたかもしれない。
後で報告しなければ…!と、蓮の心は一気に薔薇色になった。
未だかつてこんなに「よっしゃー!」と叫びたくなった経験があるだろうか?(いや無い)。
まさに我が世の春、といった気分である。
(いやいやいや、お出掛けに誘えたくらいで……落ち着け、川嶋蓮)
ニヤけた顔を手のひらで隠し、自分にツッコミを入れる。これでも百戦錬磨のホストの端くれではないか。こんなのはまだまだ想定内の展開……(のはず)だ。
しかもデートと言っても、完全に「非公認」である。公式サイド(泉水さん)にはそんなつもりは1ミリもないだろう……。まだまだ、こっそり地下で応援している「唯のファン」の域を出ない。悲しい現実だが。
それでもまぁ、1歩前進できたことの意味は大きい、と……隠しきれない喜びと共に、蓮はそう思うことにしたのだった。
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