【第二部開始】オレは視えてるだけですが⁉~訳ありバーテンダーは霊感パティシエを飼い慣らしたい

凍星

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第5章 月下の胎動

◆43 絶対に、思い出させてやる

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溢れる感情に突き動かされ、蒼真は無意識のうちに――尊に口付けていた。
そうして自分の霊力を注ぎ込む。

理性で考えてとった行動ではなかった。
ただ、反射的に。
自分のことを分からせたくて、身体が勝手に動いた。

(俺を忘れるなんて――許さない…………!)

頭に浮かんだのは、そんな、熱に浮かされたような獰猛な感情だった。

(お前に憑いているモノは、俺が祓うと約束した!だから、お前は――今は、俺のものなんだ……っ。誰にも、何にも好きにさせはしない。例え、相手がお前自身だとしても――)

喉を涸らし、呼吸を忘れ、蒼真は――自分の求める相手の名を喚んだ。

「尊!!」





―――………熱い

この熱は、何だろう……

前にも一度、感じたことがあるような……


『尊――っ……』


注ぎ込まれる熱。
包み込まれるような、懐かしい匂い。
触れる唇。
自分を喚ぶ――声……。


『尊……』


そうだ。

それが――俺の名前。

葉室尊……


尊は手を伸ばす。
昏闇から、蒼い光を求めて。
そして、目の前の身体を抱き締めた。
途端、閉じた世界に光が満ち溢れる……





「………そうま」


明るい光に包まれた、と思ったが、仰向けの態勢のままそらを見上げれば……未だ世界は昏闇の中だった。周りの木々に額縁のように切り取られた夜空が、頭上にあって。
尊は、幽かな街灯の光の下で、深い深い、奈落の底を覗くような眠りから。漸く――目を覚ました。


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