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第5章 ◇怒涛の 1st WEEK
◆13 俺とユキと初めてのお客様①
しおりを挟む7月初日のその夜は、店の前でユキを待っていてくれた4人組の女の子たちが、俺達2人の最初のお客様になった。
「では改めまして――御指名ありがとうございます。蓮夜です」
「……ユキです。ようこそ」
初めて目の前にユキ本人が現れると――
『わぁ……』
という感じの、溜息のような感嘆の声が、4人の唇から漏れた。ムリもない、と俺は思わず苦笑する。
普段から傍にいて慣れている筈の俺でさえ、今のユキには見惚れてしまうくらいなのだ。
天井から差すシャンデリアの柔らかな灯りに照らされた、カラーチェンジしたばかりのミルキーなグレージュの髪色は、眩く輝いていて。
更に、カラーコンタクトで瞳の色もシルバー系に変えているので、益々、日本人離れ……いや人間離れして見えるかも?
首元を開けたブラウスから覗く黒のチョーカーには、真紅のカーネリアンが揺れている。
そして、『オブリビオン』のクラシカルな内装の中に立つ、白い軍服風のジャケットを羽織った今夜のユキは、さながら――「異世界から来た魔法使い」みたいだった。
皆に見詰められながら席に着くのを見て、俺はひとつ気付いたことがあった。
ユキの動作はいつもゆったりとしていて優雅なので、体重を感じさせない仕種に見えるのだ。
フワリとした座り方ひとつ取ってもビジュアルと上手く合っていて、特別な美しさを際立たせる効果があるな、と思う。
こういうの、多分無意識なんだろうけど……俺みたいなのには絶対無い仕種で、もしかしたら育ちの良さが滲んでたりするのかもな……と。
「……実物の方がキレイ、ですね……っ」
「いや、ホントそれ……どうしよう、言葉が出てこない」
「語彙力を奪う美貌って、此の世に存在するんだね……」
「古典風に云うなら『傾国の美女』って感じ?ユキくんが古代中国に生まれてたら国が傾いちゃってるかも……!」
騒つく4人が思い思いにコメントする中、ユキは静かに微笑んで、宜しくお願いします、と自分の名刺を一人一人に手渡していく。
「SNSを見て、来てくれたんですか?」
「そうです!あの身支度動画、可愛かったです。朝が弱いんですね?」
「昔から低血圧で……」
「私もそうなんです~。朝ツラいの、めちゃくちゃ分かります!」
そんな日常的な会話でも、
「異世界の人」みたいなのに、低血圧で朝に弱いんだ……
という庶民的な空気が漂うと、何だか笑える感じになってしまうから不思議だ。
俺はそんなユキの個性をもっと知って欲しいと思った。
「ユキは苦手なことを敢えてやりたがる……みたいな所があるよな」
「そうなんですか?」
「そう、元々ホストなんてやるタイプに見えなかったけど、今はスゴく頑張ってるし」
「……それはまぁ、指導係が頑張ってくれたので、ひとえにそのお陰かと」
「えっ、何なに?それって珍しく俺のこと褒めてる?もっと色々言いたいことない?」
ユキからの貴重なデレに俺が喜びを露わにすると。
「いえ……やっぱり今のは無しで」
「何でだよ!」
「褒めると先輩はすぐ調子に乗っちゃうから……」
「おいこら!ちょっと、みんな今の聞いた?酷くない?」
「あはは」
「ユキくん厳しいっ」
俺たちのいつものノリに皆が笑い、場が盛り上がる。
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