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第6章 ◇問題発生⁉の 2nd WEEK
◆7 藤田Side:ホストの「ユキ」と阿久津の気持ち
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「………『オブリビオン』ってホストクラブのNo.2、か」
「そうらしいよ。SNSを見る限り、案外気さくな性格の人みたいだね」
ホストとしての自分の宣伝以外に彼がアップしていたのは――訪れたカフェや飲み屋での料理とか、その店で出会った色んな人との記念写真。グルメ系の記事が多かったけど、単なる美味しいモノ紹介というより想い出の記録っていう色合いが強い。
「そりゃあ、ホストにとってSNSなんて営業の場だし、自分をよく見せるのなんて当たり前なんじゃないか」
「まあ、そうかもだけど……お店のHPに出てる他のホストに比べると、話しかけやすそうな人、って感じはするけどね?」
特にNo.1のこの『高城皇』とか……道ですれ違ったら絶対目を逸らしたくなるタイプ。韓国ドラマの主演俳優みたいにカッコいいけど、迫力がありすぎてちょっと怖そうな雰囲気だ。
そうして阿久津は相変わらず、司滌のことだと反応がやや過剰すぎて。今も「蓮夜先輩」相手に敵意を剥き出しなのが、何となく気にかかる。
「うーん、でも食べ歩きが趣味とかで、あんまりホストっぽい営業投稿ばっかりでもなさそ……う?」
画面を操作していた僕の指が止まる。
とある写真に目が釘付けになった。まさか、これは――
「どうした?」
「…………これ、司滌……だよね……?」
写真メインのSNSに辿り着いた所で、僕たちは2人揃って言葉も出せないくらいの衝撃を受けた。
そこに写っていたのは、「ユキ」というホスト。男とは思えない美貌で、化粧をした顔がとても美しく、モデルのように洗練された姿だった。その「ユキ」が蓮夜先輩と2人で写真に収まっている。普通のツーショット写真から、お互いの頬にキスしている写真まで。
「え?? ちょっと、コレ……」
「――!!?」
"仲良すぎる“
“目の保養”
“ビジネスでもOKです”
“むしろありがとう”
とか何とか、色々なコメントが付いている。
美形同士のキス写真は女子に相当ウケているらしく、「いいね」の数は2万を超えていた。
「………?……??」
「ええっと、こういうのも仕事のうち、ってことなのかな……?」
隣りで阿久津がふるふると身体を震わせているのが分かって、なんて声を掛けたらいいのか分からない。
これは「キス写真」にショックを受けているんだよね……?
っていうことは――やっぱりそうなの?
阿久津の、司滌に対する感情は――
……恋なの??ガチな感じなの??
その辺、はっきり訊いてみたいような……訊きたくないような……もし「恋愛対象として好きだ!」と思い切り言われたら。
……正直、どういう態度を取ったらいいのか、困ってしまう。
いや!もちろん応援したい気持ちはある!
あるんだけど。でも。
ただでさえ、友達付き合いにすら腰が引けている様子の司滌。そこに阿久津が勢いよく――いや勢いだけで告白でもした日には「ムリです、ごめんなさい」と言われてしまう気がして……想像しただけで絶望感に包まれる。
バンド活動にますます支障が出そうで、思わずガッカリ……という表情が顔に出てしまいそうだ。振られる場面しか思い浮かべることが出来ない僕を許してくれ……すまない、阿久津よ。
この3人での音楽活動に、かなり張り切っている僕としては、何よりそれが心配だったのだ……
「こんなのセクハラだ!!仕事の範疇を超えてるだろ――!?」
阿久津が雄叫びを上げる。
「本人の気持ち次第、じゃない?別にムリやりとは、限らな――」
「……こうなったらもう、やっぱり俺らとしては黙って見ている訳にはいかねーな」
「えっ?」
「行くぞ!藤田」
「ええっ?まさか……本当に乗り込むの?」
「そうだ!『オブリビオン』とやらに行くぞ!!」
「えっ、あっ、うん……!?」
最初は僕の方が、店を特定して確認しなきゃ!と鼻息が荒かった……でも実際にお店や先輩の雰囲気を見たら、思ったよりきちんとしていて落ち着いたホストクラブ、という印象で、少しホッとしていた。
だから、阿久津のこの反応とはちょっとした温度差が生まれている訳なんだけど――
……興奮した様子の阿久津を止められる気はしなかった。
とにかく、やっぱり心配は心配だし、一度お店を覗いてみても良いか、と。
結局僕も、阿久津の勢いに引っ張られるカタチになった。
「そうらしいよ。SNSを見る限り、案外気さくな性格の人みたいだね」
ホストとしての自分の宣伝以外に彼がアップしていたのは――訪れたカフェや飲み屋での料理とか、その店で出会った色んな人との記念写真。グルメ系の記事が多かったけど、単なる美味しいモノ紹介というより想い出の記録っていう色合いが強い。
「そりゃあ、ホストにとってSNSなんて営業の場だし、自分をよく見せるのなんて当たり前なんじゃないか」
「まあ、そうかもだけど……お店のHPに出てる他のホストに比べると、話しかけやすそうな人、って感じはするけどね?」
特にNo.1のこの『高城皇』とか……道ですれ違ったら絶対目を逸らしたくなるタイプ。韓国ドラマの主演俳優みたいにカッコいいけど、迫力がありすぎてちょっと怖そうな雰囲気だ。
そうして阿久津は相変わらず、司滌のことだと反応がやや過剰すぎて。今も「蓮夜先輩」相手に敵意を剥き出しなのが、何となく気にかかる。
「うーん、でも食べ歩きが趣味とかで、あんまりホストっぽい営業投稿ばっかりでもなさそ……う?」
画面を操作していた僕の指が止まる。
とある写真に目が釘付けになった。まさか、これは――
「どうした?」
「…………これ、司滌……だよね……?」
写真メインのSNSに辿り着いた所で、僕たちは2人揃って言葉も出せないくらいの衝撃を受けた。
そこに写っていたのは、「ユキ」というホスト。男とは思えない美貌で、化粧をした顔がとても美しく、モデルのように洗練された姿だった。その「ユキ」が蓮夜先輩と2人で写真に収まっている。普通のツーショット写真から、お互いの頬にキスしている写真まで。
「え?? ちょっと、コレ……」
「――!!?」
"仲良すぎる“
“目の保養”
“ビジネスでもOKです”
“むしろありがとう”
とか何とか、色々なコメントが付いている。
美形同士のキス写真は女子に相当ウケているらしく、「いいね」の数は2万を超えていた。
「………?……??」
「ええっと、こういうのも仕事のうち、ってことなのかな……?」
隣りで阿久津がふるふると身体を震わせているのが分かって、なんて声を掛けたらいいのか分からない。
これは「キス写真」にショックを受けているんだよね……?
っていうことは――やっぱりそうなの?
阿久津の、司滌に対する感情は――
……恋なの??ガチな感じなの??
その辺、はっきり訊いてみたいような……訊きたくないような……もし「恋愛対象として好きだ!」と思い切り言われたら。
……正直、どういう態度を取ったらいいのか、困ってしまう。
いや!もちろん応援したい気持ちはある!
あるんだけど。でも。
ただでさえ、友達付き合いにすら腰が引けている様子の司滌。そこに阿久津が勢いよく――いや勢いだけで告白でもした日には「ムリです、ごめんなさい」と言われてしまう気がして……想像しただけで絶望感に包まれる。
バンド活動にますます支障が出そうで、思わずガッカリ……という表情が顔に出てしまいそうだ。振られる場面しか思い浮かべることが出来ない僕を許してくれ……すまない、阿久津よ。
この3人での音楽活動に、かなり張り切っている僕としては、何よりそれが心配だったのだ……
「こんなのセクハラだ!!仕事の範疇を超えてるだろ――!?」
阿久津が雄叫びを上げる。
「本人の気持ち次第、じゃない?別にムリやりとは、限らな――」
「……こうなったらもう、やっぱり俺らとしては黙って見ている訳にはいかねーな」
「えっ?」
「行くぞ!藤田」
「ええっ?まさか……本当に乗り込むの?」
「そうだ!『オブリビオン』とやらに行くぞ!!」
「えっ、あっ、うん……!?」
最初は僕の方が、店を特定して確認しなきゃ!と鼻息が荒かった……でも実際にお店や先輩の雰囲気を見たら、思ったよりきちんとしていて落ち着いたホストクラブ、という印象で、少しホッとしていた。
だから、阿久津のこの反応とはちょっとした温度差が生まれている訳なんだけど――
……興奮した様子の阿久津を止められる気はしなかった。
とにかく、やっぱり心配は心配だし、一度お店を覗いてみても良いか、と。
結局僕も、阿久津の勢いに引っ張られるカタチになった。
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