【第二部完結】恋するホストと溺れる人魚と、多分、愛の話

凍星

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第7章 溺れる人魚は夢をみる

◆8 新しい詩②

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「あの時は、司滌と会ってからまだあまり日にちが経っていなくて……正直な感想が、実は言えなかったんだけど」
「何だっけ、サビが『黒い、黒い、黒い歴史を塗りつぶせ』とか……?」
「ローリング・ストーンズへのリスペクトは、ちょっと感じられたよね」

だんだん堪えきれなくなったみたいで、2人してお腹を抱えて笑いだした。
その爆笑ぶりに、僕はちょっぴり腹が立ってきて――

「もう!そんなに笑わなくても良くない!?だって作詞とか、あれが初めてで。僕だってその前科があるから、もう書くのは止めようと思ってたんだよ?でも――活動できないとか言った手前、少しは2人の役に立ちたくて――」

僕にしては珍しく、ついムキになり声が大きくなってしまった。確かに、あれこそ本当に『黒歴史』だなと思う。

「はは、悪い悪い、笑ったりして。お前のその気持ちは、充分伝わってるって」
「……泣くほど笑いながら言われても、説得力ない」

泣き笑いで涙を拭いながら、阿久津は「ごめんって」と僕の髪をくしゃりと撫でた。
その仕種に、つい先輩の行動が重なって見えて……何だかドキリとする。

――馬鹿だな……僕は。

「大体はこのままでさ。気になるなら、皆で少しずつ手直ししたりしても良いし」

藤田も同じようにうんうんと頷く。

「ごめん、話してたら喉渇いてきた。自販機で何か買ってくるけど、2人は?」
「俺はいい」
「僕も」

じゃあ、と言って藤田が一旦席を外し、学食の方向に走っていった。
二人きりになったところで、阿久津がボソッと話しかけてくる。

「……あれには、蓮夜さんへの気持ちが入ってんのか?」
「!」

そんな言葉に、ハッとして顔を上げる。

「そういう風に取れる?」
「うん、まぁ」
「……まるっきり自分の気持ち、って訳じゃないと思う……けど。お店に通う女の人とか――色々見たり聞いたりしてたら、ふっと出てきた感じ」
「ま――色んなもの、呑み込んだままじゃ消化不良起こすよな。思い切って自分の外に出してスッキリしなくちゃな」
「前は『浄化』って言ってたのに。ちょっと下ネタっぽくなってない?」
「はは、そうだったっけ?」
「まあでも。思い切りスッキリさせてくれるんでしょ?すっげー良い曲作ってやる!って、豪語してたの忘れてないから」

阿久津に向かって――僕は。
ふっと気持ちが緩んで、自然と微笑んでいた。


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