詩「ウグイスと蛙」

有原野分

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ウグイスと蛙

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雨降る梅に
今年もウグイスの足跡
悲しくなんてない
うん
川を挟んだ山の向こう側
あの子の名前が刻まれた墓石
数億光年の隔たりが
そうだ
春の渦中に
カラカラに渇いていく
手のひらに残された幽かな青春
写し忘れた板書
サヨウナラ
悲しい手紙たちよ
お前たちはいつも朝の鳥だ
ほら
音が聞こえる
蛙は夜を歌う
嘲笑うように
どう足掻いても太陽が昇る
ああ
私は暁におぼれたい
飛び立て
飛び立て
嘘をついたあなたへの
二度と戻らない心の折り目
うん
写真を撮った
二度と会えないからと
トタン屋根に雨
濡れた髪の毛
ほら
つつと泣いた
あなたは首を振った
ビリビリに破いたのに
真夜中の公園で
そう
部屋に残された
古ぼけた写真立てに
私は未だに閉じ込められているのです。
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