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寒い年のバレンタイン
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北「西~!東からチャイもらった?」
西「もらったもらった。大盤振る舞いだよねえ、現世のチャイを配るだなんて」
長身で白い髪を束ねた北と、白く短い髪がカールしている、褐色肌の西が話している。
今年のバレンタインは、チョコレートではなくチャイのティーバッグを上層部の人間は東から配られているのだ。
現世のチャイとなると、同量の極上のウイスキーくらいの価値はある。
北「これ、飲むのもったいないよね」
西「うん。ずっと嗅いでいたい……」
そこに、背後から現れる南と東。
東「君たちには箱であげてもいいくらいだけど?」
北「ひ、東!どうやってこんな代物を、」
南「私たち、今は現世に滞在してさまよえる霊のご案内をしてるのよね。ねー、東」
東「そうだよね、南。忙しくてなかなか帰ってこられないから、そのお詫びみたいなもんだよね」
東は水筒を持ち上げて、ニカッと笑う。
東「ティータイムだよ!ささ、ホルダーに紙コップをセットして!」
南「お茶請けは私が作ったブラウニーでいいかしら?」
*
東が煮込んできた現世のチャイ(砂糖はネオンの虹糖だが)と、南が焼いたブラウニーが中庭のテーブルの上に置かれる。
中庭はしんと冷え、雪が溶けかかっていた。
西「おいしーい!」
ふわぁ、と西の髪の隙間から黒い蝶が湧いて出て、東のボブカットの髪と南のおだんごヘアーに止まる。
北「西、ちょうちょ出ちゃってるよ。僕も髪から黒い花が咲いちゃってるけど」
西「現世のシナモンだもん、飲んだらこのくらいの感動はありだよ!」
東が「そういう問題?」と笑っていた。
南「このチャイね、現世では安いのよ。それに、友達にたくさんいただいたから、おすそ分け」
北「カルダモンとシナモンの香りでくらくらするよ。麻薬みたいだ」
東「ふふ、北も気に入ったようだねえ。西、これのお返しは何だと思う?」
西「え―……?もしかして虹糖?」
東「正解。現世で魔力を補うには、虹糖が一番。綺麗な夢も見られるんだって」
西「東、虹糖なんてやっすいお砂糖でこんないいもの手に入れたの?ボロ儲けじゃん」
東「あと、その友達から、今回はネオンでは幻のコーヒーももらってきた。イルゲミシネ」
北・西「イ、イルゲミシネ?!」
イルゲミシネといえば、現世では幻想研究と料理研究をしている、とある個人商店のとてもおいしいコーヒーだ。
シナモンのようなぶっ飛んだ希少価値があるわけではないのだが、飲むとさっぱりとした元気をもらえるコーヒーで東のお気に入りなのだ。
個人商店のものなので輸入ルートがなく、ネオンでは知る人ぞ知る入手困難なコーヒーなのだ。
西「ねえ!もしかして、東が飲んでるコーヒーって、」
東「イルゲミシネだよ?」
西「うわー!もっと早く知りたかった!」
東「現世に住所があるし、ネオンの禁輸品でもないから買い放題だよ」
西「僕と北にも送ってよー!」
東「ふふ、わかったよ、西」
黒い紙コップホルダーが黒くべたついていた。シナモンのせいで死神の力が皆溢れてきてしまっているのだ。
東がそっと、ウェットティッシュをテーブルに置く。
西「ねえ南、ブラウニーっておかわりある?」
南「あら、もうなくなっちゃった?」
西「だっておいしいんだもん!」
北「西は食いしん坊だなあ」
西「……だってまだ朝ごはん食べてないし」
東「みんなで軽く食べよか。先に食堂に行くよ~」
南「待って、東」
東「みんなサンドイッチとフルーツボウルでいい?」
北「あ、持ってきてくれるんだ?」
立とうとした三人は座りなおして、チャイを一口飲んだ。甘くて香りがよい。
それに、生姜の効果で身体がぽかぽかしてくる。
吐く息は白く、空は朝焼けで黄昏時に似た色をしていた。
西「もらったもらった。大盤振る舞いだよねえ、現世のチャイを配るだなんて」
長身で白い髪を束ねた北と、白く短い髪がカールしている、褐色肌の西が話している。
今年のバレンタインは、チョコレートではなくチャイのティーバッグを上層部の人間は東から配られているのだ。
現世のチャイとなると、同量の極上のウイスキーくらいの価値はある。
北「これ、飲むのもったいないよね」
西「うん。ずっと嗅いでいたい……」
そこに、背後から現れる南と東。
東「君たちには箱であげてもいいくらいだけど?」
北「ひ、東!どうやってこんな代物を、」
南「私たち、今は現世に滞在してさまよえる霊のご案内をしてるのよね。ねー、東」
東「そうだよね、南。忙しくてなかなか帰ってこられないから、そのお詫びみたいなもんだよね」
東は水筒を持ち上げて、ニカッと笑う。
東「ティータイムだよ!ささ、ホルダーに紙コップをセットして!」
南「お茶請けは私が作ったブラウニーでいいかしら?」
*
東が煮込んできた現世のチャイ(砂糖はネオンの虹糖だが)と、南が焼いたブラウニーが中庭のテーブルの上に置かれる。
中庭はしんと冷え、雪が溶けかかっていた。
西「おいしーい!」
ふわぁ、と西の髪の隙間から黒い蝶が湧いて出て、東のボブカットの髪と南のおだんごヘアーに止まる。
北「西、ちょうちょ出ちゃってるよ。僕も髪から黒い花が咲いちゃってるけど」
西「現世のシナモンだもん、飲んだらこのくらいの感動はありだよ!」
東が「そういう問題?」と笑っていた。
南「このチャイね、現世では安いのよ。それに、友達にたくさんいただいたから、おすそ分け」
北「カルダモンとシナモンの香りでくらくらするよ。麻薬みたいだ」
東「ふふ、北も気に入ったようだねえ。西、これのお返しは何だと思う?」
西「え―……?もしかして虹糖?」
東「正解。現世で魔力を補うには、虹糖が一番。綺麗な夢も見られるんだって」
西「東、虹糖なんてやっすいお砂糖でこんないいもの手に入れたの?ボロ儲けじゃん」
東「あと、その友達から、今回はネオンでは幻のコーヒーももらってきた。イルゲミシネ」
北・西「イ、イルゲミシネ?!」
イルゲミシネといえば、現世では幻想研究と料理研究をしている、とある個人商店のとてもおいしいコーヒーだ。
シナモンのようなぶっ飛んだ希少価値があるわけではないのだが、飲むとさっぱりとした元気をもらえるコーヒーで東のお気に入りなのだ。
個人商店のものなので輸入ルートがなく、ネオンでは知る人ぞ知る入手困難なコーヒーなのだ。
西「ねえ!もしかして、東が飲んでるコーヒーって、」
東「イルゲミシネだよ?」
西「うわー!もっと早く知りたかった!」
東「現世に住所があるし、ネオンの禁輸品でもないから買い放題だよ」
西「僕と北にも送ってよー!」
東「ふふ、わかったよ、西」
黒い紙コップホルダーが黒くべたついていた。シナモンのせいで死神の力が皆溢れてきてしまっているのだ。
東がそっと、ウェットティッシュをテーブルに置く。
西「ねえ南、ブラウニーっておかわりある?」
南「あら、もうなくなっちゃった?」
西「だっておいしいんだもん!」
北「西は食いしん坊だなあ」
西「……だってまだ朝ごはん食べてないし」
東「みんなで軽く食べよか。先に食堂に行くよ~」
南「待って、東」
東「みんなサンドイッチとフルーツボウルでいい?」
北「あ、持ってきてくれるんだ?」
立とうとした三人は座りなおして、チャイを一口飲んだ。甘くて香りがよい。
それに、生姜の効果で身体がぽかぽかしてくる。
吐く息は白く、空は朝焼けで黄昏時に似た色をしていた。
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