ホラー小話

改悪・鶴の恩返し

むかーしむかーしむかーしむかーし、気の遠くなるほどむかーしの話。


二郎丸は罠に掛かった鶴を哀れに思い、
罠から外して逃がしてやった。
だが、この行為はどうなのだろうか？
罠を仕掛けた狩人（猟師）の立場になって考えてみるとたまったものではない。

たしかに二郎丸は鶴の命を助けた、その事に拠って自己満足を得る事が出来た。
だが、一方では狩人の仕事の妨害を行っている。
即ち、同種族である人間に対する裏切り行為だ、そう非難する事も出来るでしょう。

まぁ、そんな話はどうでもいいんです。
思い付いただけですから。



夜になり、二郎丸の家に陽気な青年がやって来た。
青年は鶴の化身であったが、二郎丸とは肌の色、髪の色、瞳の色が違い、
なにより言語が違っていた。
この青年が昼間に助けた鶴だと二郎丸が気付くのは無理である。

「ハロー、サンキュー、アイムサンキュー。
　レッツ、ユアープレゼント」

二郎丸は訳の分からないまま、器を受け取った。
優勝トロフィーの様な大きな器である。

「プレゼント、オリーブオイル。
　ユー　セイ　ストップ　イコール　オリーブオイル　ストップ」

青年は魔法のランプから、オリーブオイルを器に向けて、垂らし始めた。
二郎丸には、青年の言葉は何ひとつ伝わっていない。
拠って『ストップ』の意味も理解していないし、
そもそも『ストップ』という単語は二郎丸の脳内に常備されていない。




つづく。