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第十四 チェス 競技開始直前

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二番の番号札を受け取り、移動。

ホテルの一室っぽい場所が、競技会場となるようだ。

部屋の中央の机上にチェスがセットされている。

机上には三十センチ程のロボットが五体待機している。

対戦相手は三十歳位の男性。

握手を求められたが、デスゲームをする相手と握手する気にはなれない。

アナウンス「ルールを説明する。
      二十分後にチェスで勝負して貰う。
      勝者一名が勝ち抜けとする。
      引き分け時は別会場で別な相手と再試合。
      持ち時間は互いに二時間。
      時間切れで脱落とする。
      時間の管理はこちらで行う。
      一番が先手で白を担当」

つまり、俺が後手で黒を担当する訳だ。

アナウンス「室内の物は全て使用可能。
      対戦者への直接的な暴力は禁止。
      チェスへのインチキは厳しく監視している。
      インチキが判明した時点で脱落」

じゃあ、チェスの本を読みながらでもいいのか。

直接的な暴力は禁止か、当たり前か。

なんかの役に立つ物があるかも知れないから、一応室内を探してみよう。

持ち込んだ本は机の上に置いた。

一番「一応伝えておこう、俺はチェス強いよ。君は?」

嘘を吐いても対戦すればばれるからな、ハッタリは無意味だ。

「ふっふっふっふっふっふっふっふ」

意味深に笑っておいた。

後は勝手に向こうが深読みしてくれるだろう。

クローゼットには金庫、掃除機、伸縮式物干し竿が置かれていた。

小机の引き出しには文房具が入っている。

瞬間接着剤で駒を貼り付けたら、どうだろう?

インチキがばれたら、脱落か。

競技開始前に、相手のキングを貼り付けておいたら、どうだ?

インチキ扱いされるよな。

頭とは裏腹に、手はポケットに瞬間接着剤をしまっていた。

お風呂とトイレは別か。

トイレへの扉は丈夫な金属で作られている。

トイレへの扉の横には箪笥が置かれている。

本棚には大量の本が置かれている。

今更、チェㇲの本を探してもな。

重たい図鑑で直接殴るのは反則だし。

チェスじゃ勝てそうにないし。

どすりゃ、いいんだ?

痛たたたたた、考え過ぎて胃が痛い。

胃をおさえた。

やばい、トイレに行こう。
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