毒/同級生×同級生/オメガバース(α×β)

ハタセ

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囚われたのは

#5 終わり

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琥珀と身体を繋げてから数週間が経過した。
あれから事あるごとに琥珀から強引に繋がりを求められるようになった。

真野の携帯は真野に返したと言うが、真相は分からない。
一度真野にメッセージを送ってみたが返事はこなかった。
既読も付かない。
携帯を変えた?それとも琥珀がまだ持ってる?
どちらにせよ、返ってこない返事を待っても仕方ない。
真野がどうなったのか、琥珀に聞いても

「樹が心配することじゃないよ」

と言われるだけで何も教えてくれない。

俺が未だに琥珀と身体を繋げてるのは脅迫されているせいだ。
もう最初の頃のように首輪や鎖を付けられることは無かった。
だったら逃げ出せるはずだと思うだろう?
でも、ダメなんだ。
あの最初の時に、ビデオを取られていたんだ。
公表するなんてことは言ってこないけど
俺が逃げたり、別の誰かを選んだ場合、多分それを使う事だけは明確に分かっていた。

琥珀に抱かれるたびに
真野の顔がちらついて仕方ない。
その度に心の中で懺悔を繰り返した。
謝っても謝っても誰にも許されない行為。

俺がΩになれば変わるのか?
αの誘導変異で俺がΩになれば…。
そう考える時も多くなっていった。
琥珀が俺を抱く回数に比例して
βからΩに近づいていくような感覚がして俺は怖くなる。

βのままでいたい。
でもこのままだと許されない。
もう誰に許してほしいのかさえ曖昧になっていた。

「お前、最近大丈夫?」

そう声をかけてきたのは佐々木だった。

「…何が?」

「んー?何つーか…やつれた?」

「あー…そうかもね。ダイエットしてるし」

「は?似合わねー!てか元から太ってねーじゃん?……てか、本当にマジでどうした?…吾妻屋と何かあった?」

相変わらず察しがいいなこいつ。

「別に、何にもねーよ」

「そ?ならいいけどよ。あ、最近と言えば気になってたんだけど、お前、その首輪なに?いや、細いチョーカーか?」

「ああこれ?そうチョーカー。…気に入ってさ、お洒落だろ?」

「いや似合ってねーからやめたら?」

「直球で似合ってないとかよく本人の前で言えますね」

「俺とお前の仲だもの?」

どんな仲だよと笑い合ったが、内心冷や汗をかいていた。

これは首元を隠すために俺が付けているものだ。
なぜって?
俺の首の後ろには無数の噛み痕があるからだ。
セックスの時、琥珀が俺の項を噛む。
俺がΩじゃないと分かっているのに、射精時に必ずと言っていいほど俺の項を噛んでくる。
血が出るほどじゃないけど、それなりに痛い。
だからこのチョーカーを付けたってのもある。
噛まれるのは痛い。
琥珀は子供は要らないと言っていた。
だけど噛んでくる。
それは、俺と番になろうとするからじゃないのか?と思った俺はその考えに背筋が冷えた。
もし、自分でも気づいていない内に俺の身体が変化して
Ωに変わっていたとしたら
その時に、項を噛まれてしまったら…。

それから俺はこの皮の厚いチョーカーを付けざる負えなくなってしまった。
Ωになんかなりたくない。それよりも琥珀の番になりたくない。

そんなあからさまな俺の様子を見て琥珀は

「チョーカー買ったんだ?可愛い」

とだけ言っていた。

セックスの時も一応は噛む素振りを見せはするけど、前みたいに直接ではなくなっただけマシだろう。
俺はそこだけでも安堵していた。
死んでも琥珀の番にだけはならないように。



「馬鹿な樹。チョーカーなんか付けて…。項を噛まないでくださいってアピールしてるΩみたいだって気づいてる?
気付いてないか。うん。でもいいよ。それでいい。これでやっと俺のモノになった。
βに番が居るなんて誰も思わないけど、でもその首輪のお陰で樹には番がいるんだってみんなが気づくだろ?
俺だけの番。俺だけのβ。誰にも渡すものか。俺だけの樹。愛してるよ。ずっと、ずーっと、ね?」


END
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