タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)

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59話 信じるならば

 その一方、俺とリーゼさんは、屋敷の外――万が一アイリスが暗殺に失敗した場合の脱出予定口の近くに身を潜めていた。
 屋敷の中で何か異変を感じたら、すぐに窓を突き破って中へ侵入出来るようにだ。

「リーゼさん、アイリスは?」

 俺がそう声を掛けた先には、魔法陣を小さく展開したリーゼさん。

「……今のところ、動きらしい動きは無いね。少し移動したくらい」

 彼女は今、何の魔術を行使しているのかと言えば、探知系の魔術だ。
 詳しい仕組みなどは俺にはサッパリだが……アイリスの持つ魔力の固有周波を読み取ることで、短距離ながら現在地を知ることが出来るらしい。
 つまり、アイリスの魔力固有周波が突然走り出すようなことがあれば、それは逃走――暗殺失敗が確定したと言うことだ。
 今のところは、何か問題が起きたような動きは見えないらしい。

「そうですか……」

「アイリスさんが心配?」

 魔法陣を展開しながら、リーゼさんが俺の顔を覗き込んできた。

「そりゃまぁ、心配ですよ」

 信用していないわけではないが、やはり心配なものは心配だ。

「うふふ、アイリスさんはリオくんに大事にされてるね」

「なんかそれ、恋人同士みたいな関係みたいですね」

 確かにまぁ、アイリスのことは異性として見てはいるが、恋人同士のような関係になりたいかと言われれば、答えは「?」だろう。
 これまでの人生から、身近な女と言えばヒルダしかいなかったが、育ちが育ちだったせいか、そう言う目で見たことは無かったし。

 ……まぁ、スラム上がりの冒険者と、元とは言え公爵令嬢とじゃ、釣り合いもへったくれもあったもんじゃないが。
 
「……じゃぁさ、もしも刺客になっていたのがアイリスさんじゃなくて、私だったとしても、心配してくれる?」

 ふと、リーゼさんがそんなことを訊いてきた。

「んー?多分、"こう言うこと“に関してならアイリスよりアテに出来ますけど、それでも何が起こるか分かりませんし、心配すると思います」

 と言うかこの人なら、その気になれば遠くから魔術攻撃で、足跡の無い殺人現場をでっち上げるくらいは出来そうだ。

「そっかそっか……ふふっ♪」

 思ったことを正直に言ったら、リーゼさんは何故か悪戯っぽく微笑んだ。
 この人も結構な美人だから、間近でそう微笑まれると照れるものがあるんだが……

「あれれ、リオくんどうしたの?何だか顔が赤いよ?」

「き、気のせいです」

「もしかして……エルフの美人お姉さんに、見惚れちゃった?」

 図星ですとは言えずに固まってしまったら、それはもう肯定と取られるしかない。

「ほらほらぁ、正直に白状しちゃいなさいな」

 このこの、と俺の脇を小突いてくる。やめてください。

「そ、それより、見張りに集中しますよ」

「あー、逃げた。男らしくないぞー?」

「リーゼさんの探知が頼りなんですから、頼みますよ」

「はいはい、仕方ないなぁ」

 仕方ないなと言いつつも何だか嬉しそうなリーゼさん。
 すっかりこの人の玩具にされてるな、俺……別に嫌ってわけじゃないんだが。



 所戻って、シャルルの客室。

 アイリスの話――グリードの暴虐の限りを尽くすような圧政――を一通り聞いたシャルルは、思わず椅子を蹴倒し……そうになって、すとんと腰掛け直す。

「………………なんかおかしいって思ってたのよ。孤児院への寄付をするだけなら、あたしがここに滞在する必要は無いのに、何でだろうっての」

「ですが、シャルルさんとしては、寄付していただけると分かれば多少の要求には応えるべき、と言う感謝があったが故の行動。気に病むことはありません」

 シャルルの事情。

 彼女は小さな孤児院出身の天涯孤独の身で、冒険者になったのは、世話になった孤児院への恩返しのためだった。
 衣食住も満足に出来ているとは言えない環境を少しでも豊かに、とシャルルは懸命に金稼ぎをしていた。

 が、そこに"怪しげな依頼“が舞い込み、それを受けてしまったのが迂闊だった。

 依頼人――恐らくは闇ギルドの人間に金を騙し取られ、さらに密猟者として騎士団からも追われることになり――そうして逃げるように流れ着いたのがここ、歓楽街ネオライトだった。

 これまでの経歴を隠蔽しながら、単独で冒険者活動に勤しんで金を貯め直しているところに、新領主のグリードに目を付けられた。
 グリードに (一部は隠匿した上で)事情を話すと、彼は孤児院への寄付を快諾し、さらには屋敷の滞在も許可された。

 捨てる神あれば拾う神あり、とシャルルは喜んだが――屋敷の中には、複数人の美女・美少女が滞在しており、詰めているメイド達の様子もなんだかおかしい、おまけにグリードの取り巻き連中はガラの悪いチンピラのような奴らばかり。

 極めつけは孤児院への寄付をしているような素振りも見えないので、つい先程のように喰って掛かった……と言うわけだった。

 シャルルはアイリスに近付いて、小声で話し掛ける。

「それで、アイリス……だっけ?あんた、領主様を暗殺するって、マジっての?」

「そのために、私はここに来ました」

 アイリスはドレスの裾をズラして脚を見せると、右の内股にくくりつけた、毒塗りナイフを納めたホルダーを見せる。
 ついでに右のハイヒールを脱ぎ、その中に隠していた粉末状の毒薬を見せる。

「シャルルさん、私に協力してください」

「や、でも、あたしは……」

「孤児院への寄付なら私がします。約束を違える領主と、初対面の私。信じるなら?」

 詰め寄るアイリスに、シャルルは言葉を選ぶような間を置いてから、覚悟を決めて頷いた。

「…………分かった。でも、もし嘘ついたら絶対許さないっての」

「ありがとうございます。では……」

 グリードを毒殺するための、具体的な作戦を立てていく二人。 
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