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「いってらっしゃい」と「おかえりなさい」
しおりを挟む挨拶回りをしつつ、ベン村長宅に帰宅。
ベン村長の奥さんから「おかえりなさい」と出迎えられた時、俺はまたしても涙腺が垂れ流しになりかけたが、今度はぐっと堪えられた。
が、
「……ぅっ、ぐすっ……」
なんと今度はシャルが泣き出してしまったではないか。
一体何が起きたのかと奥さんが狼狽えている。
「シャル、お前まで今度はどうしたんだ?」
「ち、ちが、違うんです……っ、その、「おかえりなさい」って初めて言われて……う、嬉しくてっ……っく……」
そうか。
シャルが"シャルロット"としてギャレット家にいた時は、誰も彼女のことを見送りも出迎えも無かったのだ。
その暖かさを今初めて知って、感極まってしまったのか。
そんな嬉し泣きをするシャルを、クリスさんはそっと抱き寄せた。
「お兄さんと二人だけじゃ寂しかったのね……大丈夫よ、これからは私達がいっぱいお見送りも、お出迎えもしてあげるわ」
「ぅっ、あひがとうごじゃぃましゅぅっ……」
ちくしょうそんなお涙頂戴なシーンを見せるなよ、せっかく再構築された涙腺がまた決壊するだろうが。
涙でぐしゃぐしゃになったシャルを席につけて、ゆっくり落ち着きましょうということで紅茶をいただいていた。
クリスさんと奥さんは夕食作りにかかり、俺とシャルは紅茶を前にベン村長と三者面談だ。
「アルフさん。もし良ければですが、シャルさんは一時こちらに住まわせましょうか?」
ベン村長は、そのような提案を持ち寄せた。
「もちろん強制ではありません。ただ、私見で申し訳ないですが、シャルさんはずっと寂しい思いをされていたのではないかと。親代わりとまではいきませんが、少しでも寂しさを埋められるのなら」
確かに。
シャルの実母は、シャルロットが生まれてすぐに処刑されてしまった。
実父は俺の父上であるガルシア・ギャレットだが、あの男がシャルに対して父親らしいことをしていたとは思えない。母上も然りだ。
……かく言う俺も、"俺"がアルフレッドに憑依するまでは、兄貴らしいことなどまるでしていなかったけどな。
シャルは親の愛情と言うものを知らないのだ。
それを見て取ったベン村長は、一時的だけでもシャルをここで預かりましょうかと提案してきたのだろう。
ベン村長と奥さんだけではない、クリスさんと言う姉貴分もいるのだ。
シャルは窺うように俺とベン村長の顔を見比べている。迷っているんだろうな。
「シャル。これはお前が自分で決めるんだ。俺と一緒がいいか、ずっとでは無いがここに住むか。俺は口を挟まない。自分で決めていいんだ」
「お兄様……」
シャルは、考えを集中するために目を閉じた。
ややあって。
「……いえ、わたしはお兄様と一緒にいます」
「そうか」
それがシャルの答えなら文句は言うまい。
だが、
「で、ですけど……その、たまになら、ここにお邪魔してもいいでしょうか……?」
うん、やっぱり迷いまくってたんだな。
これは妥協案というものだろう。
基本は俺と一緒に暮らして、たまにこちらでお世話になると。
「もちろんですシャルさん。いつでも遊びに来てください」
ベン村長もシャルの妥協案を聞いて、微笑ましく頷く。
ほんと、この人達には頭が上がらないな。
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