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されど悪夢は優しく弄ぶ
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………………
…………
……
燃える炎の中に、俺は立っていた。
燃え盛り、あらゆるものを燃やし尽くしていく。
物も、人も、別け隔てなく。
ここは……ギャレット家か?
――助けて……助けて……助けて……――
不意に目の前に現れるのは、燃える炎の中に取り残される、何人もの人間。
ギャレット家に仕えていたメイド達だった。
彼女らは俺に助けを乞い、必死に手を伸ばすものの、後ろと足元からの炎に包まれて、燃えていく。
ふとまた別の方向からは、父ガルシアと母上もまた炎の中から現れる。
――この親不孝者め!育ててやった恩を仇で返すというのか!――
父上の怨嗟の声が、母上の金切り声が、俺に叩き付けられる。
――アルフ先生……――
今度は、ベン村長の声だ。
燃えるギャレット家が、いきなりサダルスウドに変わる。
家も畑も森も、お世話になった村人達も、可愛い生徒達も、炎に包まれている。
俺とシャルの家である、学問所まで。
――何故です、何故、何故……――
ベン村長は、絶望に打ちひしがれたような、信じられないような顔で俺を見ている。
その隣には、怒りと憎しみに満ちたクリスさんが。
――あなたがこの村に来なければ、こんなことにはならなかったのに!――
やめてくれ、俺が一体何をしたんだ。
俺がこんなことをするわけが、
啜り泣く声。
そこにいるのは、痩せこけて衣服も髪も乱れ放題で、死人の目をした、シャルロット。
――お兄様、助けて――
あぁそうだとも、お前のためなら俺は、
サダルスウドを燃やしたのか?
ギャレット家を燃やしたのと同じように?
――勇者様!勇者様!勇者様!――
人が苦しんで助けを求めているのに、勇者様と言う俺を称える声。
違う、やめろ、そうじゃない、待て、
……分かった、もういい。
テ メ ェ ら が シ ャ ル を 苦 し め て る ん だ な ?
いつの間にか俺は炎で出来たロングソードを抜いていた。
シャルを痛めつける奴も苛める奴も苦しめる奴も虐げる奴も嘲笑う奴も辱める奴も傷付ける奴も、
全部!やめろ!俺が!!そんなことをシャルが望むのか!!
焼やきめ払てっくてれや嫌るだ――!!!
……
…………
………………
「ああああああああああァァァァァァァァァァ!?」
いつの間にか燃える炎は暗い寝室へと姿を変えた。
「ハッ、ハ、ハァ……ぅ、……なんだ、火事?」
……いや、違うか。
今のは、夢か……?
ふと、バタバタと床を走る音が近付いてきて、
「お兄様っ!どうされたのですかっ!?」
ドアを蹴破らん勢いで、寝間着姿のシャルが俺の寝室に飛び込んできた。
「……、シャル?シャルロット?シャルだな、うん」
「そうですシャルですお兄様の義妹のシャルです間違ってもシャルですっ」
シャルは小走りで俺のベッドに近付くと、顔を覗き込む。
「急にお兄様の大声が聞こえましたから、どうしたのかと思って……大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。お前のことも、この村も……クリスさんも。みんな俺が守ってやる!」
「お兄様……?」
「…………すまんシャル、窓を開けてくれ。外が見たい」
「は、はい」
シャルはカーテンをスライドさせ、窓を開けた。
落ち着いていれば当然なのだが、村に火の手が上がっているなんてことはない、夜の帳が静かに朝を待っているだけだ。
「良かった……」
……ふぅ、いつもの村の姿を見れたおかげで、少しは落ち着けた。
「……怖い夢を、見たのですか?」
「そんなところだな。全く、夢の世界の神様もたまに余計なことするよなぁ」
はっはっはっ、と笑ってみせた俺だが。
…………なんだろうな、この、嫌な胸騒ぎは。
…………
……
燃える炎の中に、俺は立っていた。
燃え盛り、あらゆるものを燃やし尽くしていく。
物も、人も、別け隔てなく。
ここは……ギャレット家か?
――助けて……助けて……助けて……――
不意に目の前に現れるのは、燃える炎の中に取り残される、何人もの人間。
ギャレット家に仕えていたメイド達だった。
彼女らは俺に助けを乞い、必死に手を伸ばすものの、後ろと足元からの炎に包まれて、燃えていく。
ふとまた別の方向からは、父ガルシアと母上もまた炎の中から現れる。
――この親不孝者め!育ててやった恩を仇で返すというのか!――
父上の怨嗟の声が、母上の金切り声が、俺に叩き付けられる。
――アルフ先生……――
今度は、ベン村長の声だ。
燃えるギャレット家が、いきなりサダルスウドに変わる。
家も畑も森も、お世話になった村人達も、可愛い生徒達も、炎に包まれている。
俺とシャルの家である、学問所まで。
――何故です、何故、何故……――
ベン村長は、絶望に打ちひしがれたような、信じられないような顔で俺を見ている。
その隣には、怒りと憎しみに満ちたクリスさんが。
――あなたがこの村に来なければ、こんなことにはならなかったのに!――
やめてくれ、俺が一体何をしたんだ。
俺がこんなことをするわけが、
啜り泣く声。
そこにいるのは、痩せこけて衣服も髪も乱れ放題で、死人の目をした、シャルロット。
――お兄様、助けて――
あぁそうだとも、お前のためなら俺は、
サダルスウドを燃やしたのか?
ギャレット家を燃やしたのと同じように?
――勇者様!勇者様!勇者様!――
人が苦しんで助けを求めているのに、勇者様と言う俺を称える声。
違う、やめろ、そうじゃない、待て、
……分かった、もういい。
テ メ ェ ら が シ ャ ル を 苦 し め て る ん だ な ?
いつの間にか俺は炎で出来たロングソードを抜いていた。
シャルを痛めつける奴も苛める奴も苦しめる奴も虐げる奴も嘲笑う奴も辱める奴も傷付ける奴も、
全部!やめろ!俺が!!そんなことをシャルが望むのか!!
焼やきめ払てっくてれや嫌るだ――!!!
……
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………………
「ああああああああああァァァァァァァァァァ!?」
いつの間にか燃える炎は暗い寝室へと姿を変えた。
「ハッ、ハ、ハァ……ぅ、……なんだ、火事?」
……いや、違うか。
今のは、夢か……?
ふと、バタバタと床を走る音が近付いてきて、
「お兄様っ!どうされたのですかっ!?」
ドアを蹴破らん勢いで、寝間着姿のシャルが俺の寝室に飛び込んできた。
「……、シャル?シャルロット?シャルだな、うん」
「そうですシャルですお兄様の義妹のシャルです間違ってもシャルですっ」
シャルは小走りで俺のベッドに近付くと、顔を覗き込む。
「急にお兄様の大声が聞こえましたから、どうしたのかと思って……大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。お前のことも、この村も……クリスさんも。みんな俺が守ってやる!」
「お兄様……?」
「…………すまんシャル、窓を開けてくれ。外が見たい」
「は、はい」
シャルはカーテンをスライドさせ、窓を開けた。
落ち着いていれば当然なのだが、村に火の手が上がっているなんてことはない、夜の帳が静かに朝を待っているだけだ。
「良かった……」
……ふぅ、いつもの村の姿を見れたおかげで、少しは落ち着けた。
「……怖い夢を、見たのですか?」
「そんなところだな。全く、夢の世界の神様もたまに余計なことするよなぁ」
はっはっはっ、と笑ってみせた俺だが。
…………なんだろうな、この、嫌な胸騒ぎは。
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