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羽ばたきの時

111話 決闘承諾

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「えっ、勝負って……?」

「俺と戦え、一対一でな」

 唐突に申し込まれた勝負。
 一対一ということは、決闘だろう。

「お前達が、そこのNPCを仲間にした非公開のストーリーイベントを攻略しているということは知っている。そこで得られた強さを、俺に見せてみろ」

 アトラスの視線が、フェルテを一瞥する。

「ほぉ、我にではなく、アロウに勝負をしろと申すか。アトラスとやら、貴様、なかなかに見どころがありそうだ」

 何を思ったのか、フェルテは一歩前に出てアロウの隣に立つ。

「このアロウは随分な女誑しではあるが、その芯の強さと力は本物だ。我が保証しよう」

「お、女誑しって、何言ってるんだ……」

「違うのか?」

 真顔で訊き返すフェルテに、アロウは「全力で否定させてくれ!」と声を荒げる。
 アトラスは特に意を介することもなく。

「三日後に、この時間、ノヴィス平原に来い。都合が悪いならすぐに言え」

「え、えぇと……」

 しかも日程や場所まですぐに決められてしまい、アロウは少し混乱している。
 ちょっと待ってください、とアロウは一言断ってから、後ろにいるメンバー達に向き直る。

「えーっと、三日後なんだけど。俺、そこに予定が入ったんだけど、大丈夫だよな?」

 多分一緒にプレイ出来ない、とアロウは伝えると、ルナとカノラは顔を合わせて頷き、メイプルも「売られた喧嘩は買っちゃいなさい」と背中を押し、ジルダは我関せずだ。

 それを確認して、アロウは意を決してアトラスに振り返る。

「分かりました。その勝負、謹んで受けさせてもらいます!」

 承諾。
 アトラスはニヤリと口角を上げた。

「よぉし、よく言った。逃げることも忘れることも、許さんぞ」

 アロウとの勝負を託けたアトラスは、クエストカウンターに向き直ると、Aランクのクエストを受けて即座に発っていった。
 それを見送っていたフェルテは、残念そうに鼻を鳴らす。

「ふむ、出来ることなら奴も引き入れたいところだが、奴は男だ、アロウの誑し込みも恐らくは通じるまい」

「フェ~ル~テ~、そろそろ怒るぞ?」

 散々「誑し」だのなんだのと言われて、アロウはフェルテの頬を抓んで引っ張り上げる。

「むおぉっ、にゃ、にゃにをしゅるっ、んえぇぃっ、はにゃしぇっ!」

 アロウの攻撃(?)から逃れようと首を振るが、なかなか解けない。

「とりあえず、今日は予定通りイグニート火山の素材ツアーで、慣らし運転兼採集をしようか」

 フェルテの意外と柔らかく伸びる頬を引っ張りながら、イグニート火山の素材ツアーを受けるアロウ。

 アトラスとの勝負に備え、アロウはこの日は慣らし運転に集中し、連日でやり過ぎないように一日間を置いた。
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