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羽ばたきの時

124話 存在しないエリア?

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 デゼルト砂漠、マリーネ孤島の時と同じく、一転して冷ややかで暗い遺跡の中へと移動するアロウ達。
 すると、先頭に立っていたオーディンは足を止めた。

「あぁすまん、少し連絡をさせてくれ」

「連絡ですか?」

 何の連絡をするのかとアロウは訊ねる。

「ここまでのことを、カインに報告しておこうと思ってな」

 どうやらカインに通話をするらしく、オーディンはコンソールを押して、通信回線を開こうとするが、

「……ん?」

 ふと、オーディンは訝しげに目を細めた。
 何度かコンソールを指で押すものの、その都度にオーディンは顔を険しくする。

「どうかしましたか?」

 ルナは何か問題が起きたのかとオーディンに目を向ける。

「…………どういうことだ、通信が繋がらん」

 オーディンはアロウ達にコンソールを見せながら、再々度カインとの通話を繋ごうとするが、

『ERROR! 通信出来ません。電波が滞っている可能性があります。時間を置いてから再試行をお願い致します』

「やはり無理か……」

「緊急のメンテが入った、とかですか?」

 カノラは有り得そうな可能性を挙げるが、オーディンは首を横に振る。

「MAFは基本的に24時間体制の運営だ。緊急でメンテを行うにしても、最低でも24時間前にはメンテの告知が発信されるはずだ」

 けれど今回はそれが無かった。
 よほどの急を要することなのか、しかしプレイヤー達に何の事前通知も無いのはおかしい。

「そもそもメンテをしているなら、俺達はこうしてログインした状態にはならない……何か、妙だな」

 オーディンの疑念は益々深まる。
 加えて、彼の記憶の中では、以前にここでバスターガーダーを撃破した時、そのあとで、祭壇の間への道など開かれなかった。
 しかし今回は、分かりにくいどころか、部屋の奥と言う単純な場所で。

 とりあえずは通話を諦めて、コンソールのトップにマップを表示させて、

「……ん!?」

 オーディンは食入るようにマップを睨む。

「どうしたオーディンよ」

 今度は何が起きたのかと、フェルテはオーディンの様子を見やる。

「…………マップ上から、俺達の反応が消えている。加えて言えば……『今俺達がいるエリアマップに記載されていない』」

「「「えっ?」」」

 アロウ、ルナ、カノラも慌ててコンソールを開いてマップを表示させると、

「ほんとだ……反応とか何も出てない」

「なら……私達は、一体どこにいるんでしょう……?」

「そ、それって、存在しないエリアにいるってこと……?」

 どういうことだ、一体何が置きている、と狼狽えている三人だが、

「落ち着け。これまでにやってきたことと変わらん。今更何を慌てる必要があるのだ」

 平常運転なのは、フェルテだけだ。

 しかしそうだとしたら、デゼルト砂漠やマリーネ孤島の時も、自分達はマップの外に出ていたのだろうか。

 ならば、自分達は一体何と戦っていたのか。

 反応やマップ表示が奇妙なことに疑念と不安を抱きながらも、彼らは先に進む。



 祭壇の間へと続く扉の前に来て。

「あ、そうそう、返しそびれてたけど……」

 カノラはふと思い出したようにアイテムボックスを開き、虹色のオーブ――創造の神玉をフェルテに差し出す。

「はい、フェルテちゃん。最後だし、ちゃんと返しておくね」

「む、そうだったな。感謝するぞ、カノラ」

 フェルテはそれを受け取り、懐へ納めた。
 以前のマリーネ孤島の遺跡では、創造の神玉を持っていたカノラがいなかったせいで、一度門前払いをされたものだった。

 そうしてフェルテが扉の前に立つと、扉はひとりでに開く。
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