138 / 159
約束の未来へ
135話 アロウのやりたいこと
しおりを挟む
「迂闊に飛び込むわけにもいかないわけだが……どうするカイン」
オーディンはカインに目を向ける。
「対策チームを組んで調査する他あるまい。最悪、破損しても構わない捨てアカを使用することも念頭に置こう」
「やはりそうなるな……よし、ただちに運営本部に連絡だな」
二人の間で会話が完結しようと言う時、アロウは挙手した。
「あのっ。この大穴って、フェルテが何か関係しているかもしれないんですよね?」
「関係しているかもしれないが、全くの無関係の可能性もある」
「だったら、俺も対策チームに……」
対策チームに入れてほしい、と言いかけたアロウだったが、即座にオーディンが「ダメだ」と遮った。
「これは、MAFの機密情報に抵触することにもなる。一般ユーザーにおいそれと関わらせるわけにはいかん」
「でも、フェルテのことが絡んでいるなら、俺だって無関係じゃないはずです!」
食い下がろうとするアロウだが、そこへカインも口を挟んだ。
「アロウ君、これは本当に危険だ。危ない橋を渡るどころの話ではすまない」
考えてもみろ、と続ける。
「今、我々がこうしてMAFという仮想空間でいられるのは、厳重かつ99%安全なセキュリティがあってこそのことだ。データの破損に触れるというのは、その安全なセキュリティすら壊す恐れがある。……下手をすれば、人体に悪影響を及ぼしかねない」
「っ……」
命の危険も有り得るのだと、アロウは理解してしまう。
「危険を承知で協力しようとする、その厚意と勇気だけでありがたい。危険な面倒ごとは、大人に任せてくれればいい」
そのために我々がいるのだから、とカインは大きく頷く。
「今日のところは、下がってくれ」
「分かり、ました……」
アロウは肩を落としながら、コンソールを開いて、ログアウトしていった。
理解は出来るが、納得はいかない。
アロウ――徹矢は、MAFのヘッドギアを所定の位置に戻し、スマートフォンを回収すると、ゲームセンターを後にしていった。
その帰り道。
フェルテの存在が、本当に異世界から召喚された、創造神の神子かもしれない。
もしそうだとしたら、フェルテが危険な目に遭っているかもしれない。
けれど、カインやオーディンの言うように、フェルテには何の関係も無い可能性もある。
しかし、だが、でも……
「(ダメだ、考えが纏まらない……)」
フェルテの安否が、徹矢の心を乱す。
ふとその時、
「……織原くん?」
「えっ?」
気が付けば、目の前に私服姿の菜々花がいた。
「あ、水城さん……どうしたんだ?」
「わたしはコンビニにアイスを買いに行くとこだけど……織原くん、なんか顔が怖いよ?大丈夫?」
「そ、そんな顔してたのか……?」
そこまで思い詰めていたのかと、徹矢は自分の顔に手を触れる。
「何か、悩み事かな?」
打算や掛け値なしに案じてくれる菜々花に、徹矢は。
「実は、さ……」
ありがとうございましたー、という店員の気の抜けた挨拶を聞き流しながら、二人はコンビニを出る。
「……そう、なんだ」
徹矢からあらましを聞いた菜々花は、言葉を詰まらせた。
「フェルテが言う創造神の神子って言うのが、本当なのかもしれないし、でもそれを確かめたくても、危険なことだってカインさん達に止められて……俺、このまま果報を寝て待つだけでいいのかって」
何をすればいいのか、どうすればいいのか、何もわからない。
「その、ね。偉そうなこと言うかもだけど……織原くんは、どうしたいの?」
「え?」
「だから、ダメとか危険とかは一旦置いといて、織原くんがやりたいことは、なに?」
自分がやりたいこと、と言われて、徹矢は瞬きを繰り返す。
「わたしは、織原くんが何をするって言ったって、それを応援するし、出来ることなら協力したいって思う」
「水城さん……」
菜々花の言葉を受けて、徹矢は自分の中で乱れていたものが少しずつ整っていくのを感じる。
「俺の、やりたいこと……」
オーディンはカインに目を向ける。
「対策チームを組んで調査する他あるまい。最悪、破損しても構わない捨てアカを使用することも念頭に置こう」
「やはりそうなるな……よし、ただちに運営本部に連絡だな」
二人の間で会話が完結しようと言う時、アロウは挙手した。
「あのっ。この大穴って、フェルテが何か関係しているかもしれないんですよね?」
「関係しているかもしれないが、全くの無関係の可能性もある」
「だったら、俺も対策チームに……」
対策チームに入れてほしい、と言いかけたアロウだったが、即座にオーディンが「ダメだ」と遮った。
「これは、MAFの機密情報に抵触することにもなる。一般ユーザーにおいそれと関わらせるわけにはいかん」
「でも、フェルテのことが絡んでいるなら、俺だって無関係じゃないはずです!」
食い下がろうとするアロウだが、そこへカインも口を挟んだ。
「アロウ君、これは本当に危険だ。危ない橋を渡るどころの話ではすまない」
考えてもみろ、と続ける。
「今、我々がこうしてMAFという仮想空間でいられるのは、厳重かつ99%安全なセキュリティがあってこそのことだ。データの破損に触れるというのは、その安全なセキュリティすら壊す恐れがある。……下手をすれば、人体に悪影響を及ぼしかねない」
「っ……」
命の危険も有り得るのだと、アロウは理解してしまう。
「危険を承知で協力しようとする、その厚意と勇気だけでありがたい。危険な面倒ごとは、大人に任せてくれればいい」
そのために我々がいるのだから、とカインは大きく頷く。
「今日のところは、下がってくれ」
「分かり、ました……」
アロウは肩を落としながら、コンソールを開いて、ログアウトしていった。
理解は出来るが、納得はいかない。
アロウ――徹矢は、MAFのヘッドギアを所定の位置に戻し、スマートフォンを回収すると、ゲームセンターを後にしていった。
その帰り道。
フェルテの存在が、本当に異世界から召喚された、創造神の神子かもしれない。
もしそうだとしたら、フェルテが危険な目に遭っているかもしれない。
けれど、カインやオーディンの言うように、フェルテには何の関係も無い可能性もある。
しかし、だが、でも……
「(ダメだ、考えが纏まらない……)」
フェルテの安否が、徹矢の心を乱す。
ふとその時、
「……織原くん?」
「えっ?」
気が付けば、目の前に私服姿の菜々花がいた。
「あ、水城さん……どうしたんだ?」
「わたしはコンビニにアイスを買いに行くとこだけど……織原くん、なんか顔が怖いよ?大丈夫?」
「そ、そんな顔してたのか……?」
そこまで思い詰めていたのかと、徹矢は自分の顔に手を触れる。
「何か、悩み事かな?」
打算や掛け値なしに案じてくれる菜々花に、徹矢は。
「実は、さ……」
ありがとうございましたー、という店員の気の抜けた挨拶を聞き流しながら、二人はコンビニを出る。
「……そう、なんだ」
徹矢からあらましを聞いた菜々花は、言葉を詰まらせた。
「フェルテが言う創造神の神子って言うのが、本当なのかもしれないし、でもそれを確かめたくても、危険なことだってカインさん達に止められて……俺、このまま果報を寝て待つだけでいいのかって」
何をすればいいのか、どうすればいいのか、何もわからない。
「その、ね。偉そうなこと言うかもだけど……織原くんは、どうしたいの?」
「え?」
「だから、ダメとか危険とかは一旦置いといて、織原くんがやりたいことは、なに?」
自分がやりたいこと、と言われて、徹矢は瞬きを繰り返す。
「わたしは、織原くんが何をするって言ったって、それを応援するし、出来ることなら協力したいって思う」
「水城さん……」
菜々花の言葉を受けて、徹矢は自分の中で乱れていたものが少しずつ整っていくのを感じる。
「俺の、やりたいこと……」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
19
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる