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第四十八話
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セナは冒険者として受付を済ませてから、ある程度説明と注意喚起を受けて鉱山に入った。
セナが手を大きく振り回しても手が当たらないくらいには大きな穴で進んでいた。
緩やかな傾斜の穴で左巻きのカーブを、もうかれこれ数百メートルは歩いている。
ベルモットとユゥリは別行動中。
耳を澄ませてもほとんど音は聞こえないが、鉱山内について事前に聞いている一つのうわさがあった。
それは、行方不明者の話。
今年に入ってから急激に増えた行方不明者数。正確な数はわからないが、明らかにこの鉱山内で消えた人が多いらしい。
それは、受付での注意にも含まれていた。
内部に凶悪な魔物が発生している可能性や、不審者の可能性について説明され、もし出会った場合は交戦せずに逃げることを推奨され、もし原因を突き止めたら報酬まで出るらしい。
となれば、セナはそれも考慮して探索するわけだが。
「この道長いな。誰にも会わないし。」
そう呟く声も反響し、奥から自分の声が聞こえる。
少しずつ息が苦しくなっている気もする。
そして、そのあたりで変なことに気づく。
「横穴が無い?」
ここまでずっと直進してきた。
もっと横に向かって穴を掘っている分岐路や、そもそも掘ったものを運び出すトロッコも線路もいつの間にか無くなっている。
「もしかして」
セナは今になってやっと、自分が行方不明に巻き込まれたのではないかと気づいた。
◇◆◇
歩き続けて一時間が経過した。
息の苦しさは増しているが、セナは全然平気だ。
そして、まだまだ道は続いている。
◇◆◇
更に一時間経過。
もう人間の生存できる酸素濃度ではないのにも関わらず、セナは問題なく歩き続ける。
◇◆◇
更に追加で二時間が経過。
セナはもう無呼吸という域なのに、まるで問題ないかのように歩き続けている。
「がはぁっ!!なんで気絶しねぇんだよ!!クソがぁ!!」
静寂を破るようにそんな声がした。
セナが振り返ると、そこには一匹のモグラのようなものが地面から顔を出してセナを見ていた。
「くっ、仕方ねぇ、今ここで始末してやる!」
そう言いながらモグラは体を地面から出して、セナに向かって突進してくる。
未だ酸素はほぼゼロの状態。
しかし、セナにとってそれは問題ではない。
相手は魔物ではなさそうだが、亜人でもなさそうな雰囲気だ。
この終わらない坑道も、こいつが展開していると考えるなら、殺しておくのが手っ取り早いが、それでも行方不明の犯人がこいつなら、情報を聞き出すのも重要。
「【結界】」
一度、結界での捕獲を試みる。
「んだコイツ、同じタイプの魔法使いか?クソゥ、ボンド!!」
モグラが何かの名前を呼んだと同時に、坑道の内装に変化が起きる。
明らかに坑道らしくない広さに空間が広がり、何人か倒れている人を発見した。
大きなドーム状になった空間。
見る限りでは、説明にあった中継地点。
長い坑道の休憩地点的スポット。
「何故あんな息のできない空間内で活動できたのでしょうか。不明」
「知るかクソ!俺達の仕事が無駄に増えちまったじゃねぇかコンチキショー!」
モグラの隣に現れたのは、変な見た目の鳥。
全身が灰色の羽毛で覆われていて、クチバシが顔と同じくらいの大きさの、足が長い鳥。
ボンドと呼ばれたらしいその鳥は、そのクチバシで【結界】の中に入ったモグラを
ごくり
と飲み込んでしまった。
「……え?」
「我々の目的は失敗。非戦闘員の我々では冒険者には勝てません。撤退。」
「……ちょ、待て!」
「残念ながら、ワタシは足、いえ、翼が速いのです。失敬。」
そう言いながら、本当に超高速で坑道の出口に飛んでいく鳥。
セナは周囲の人間の安否を確認したいのと鳥の追跡の二つの選択肢で一瞬悩む。
「【結界】で位置は特定できない。距離が離れれば強制的に消える。かといって意識不明の奴らをここに放置。それはダメだろう。くそっ」
自分会議は五秒で終了。
セナはその場に残り、倒れている人を一か所に集めて治療する。
幸い死人はいなかったが、飢餓や脱水で瀕死の状態の人が多すぎる。
「【四季スライム】強制帰還。再召喚。」
ベルモットとユゥリの護衛につけているスライムをセナのもとに呼び戻す。
そして、四体に分裂させて重症者を運ぶ準備をする。
「ん……んん。」
軽症者の1人が目を覚ます。
少しの間ボーッとしていたが、セナが目の前で手を振ってみせたり、声をかけると、次第に意識をはっきりと取り戻していった。
「こ、ここは?アレックス?マーシャ?」
最初に目覚めた女は、近くで気絶していた男と女に近づいて肩を揺さぶる。
その声に呼応するように、何人かの軽症者は目を覚ました。
目を覚ました全員に魔法で出した水を飲ませ、歩ける人は自分で、元気そうな男手には、まだ気絶から目覚めていない人を運んでもらった。
その日、セナは冒険者ギルドの人間から詳しい話を聞かれて、夜になるまで宿に戻れなかった。
セナが手を大きく振り回しても手が当たらないくらいには大きな穴で進んでいた。
緩やかな傾斜の穴で左巻きのカーブを、もうかれこれ数百メートルは歩いている。
ベルモットとユゥリは別行動中。
耳を澄ませてもほとんど音は聞こえないが、鉱山内について事前に聞いている一つのうわさがあった。
それは、行方不明者の話。
今年に入ってから急激に増えた行方不明者数。正確な数はわからないが、明らかにこの鉱山内で消えた人が多いらしい。
それは、受付での注意にも含まれていた。
内部に凶悪な魔物が発生している可能性や、不審者の可能性について説明され、もし出会った場合は交戦せずに逃げることを推奨され、もし原因を突き止めたら報酬まで出るらしい。
となれば、セナはそれも考慮して探索するわけだが。
「この道長いな。誰にも会わないし。」
そう呟く声も反響し、奥から自分の声が聞こえる。
少しずつ息が苦しくなっている気もする。
そして、そのあたりで変なことに気づく。
「横穴が無い?」
ここまでずっと直進してきた。
もっと横に向かって穴を掘っている分岐路や、そもそも掘ったものを運び出すトロッコも線路もいつの間にか無くなっている。
「もしかして」
セナは今になってやっと、自分が行方不明に巻き込まれたのではないかと気づいた。
◇◆◇
歩き続けて一時間が経過した。
息の苦しさは増しているが、セナは全然平気だ。
そして、まだまだ道は続いている。
◇◆◇
更に一時間経過。
もう人間の生存できる酸素濃度ではないのにも関わらず、セナは問題なく歩き続ける。
◇◆◇
更に追加で二時間が経過。
セナはもう無呼吸という域なのに、まるで問題ないかのように歩き続けている。
「がはぁっ!!なんで気絶しねぇんだよ!!クソがぁ!!」
静寂を破るようにそんな声がした。
セナが振り返ると、そこには一匹のモグラのようなものが地面から顔を出してセナを見ていた。
「くっ、仕方ねぇ、今ここで始末してやる!」
そう言いながらモグラは体を地面から出して、セナに向かって突進してくる。
未だ酸素はほぼゼロの状態。
しかし、セナにとってそれは問題ではない。
相手は魔物ではなさそうだが、亜人でもなさそうな雰囲気だ。
この終わらない坑道も、こいつが展開していると考えるなら、殺しておくのが手っ取り早いが、それでも行方不明の犯人がこいつなら、情報を聞き出すのも重要。
「【結界】」
一度、結界での捕獲を試みる。
「んだコイツ、同じタイプの魔法使いか?クソゥ、ボンド!!」
モグラが何かの名前を呼んだと同時に、坑道の内装に変化が起きる。
明らかに坑道らしくない広さに空間が広がり、何人か倒れている人を発見した。
大きなドーム状になった空間。
見る限りでは、説明にあった中継地点。
長い坑道の休憩地点的スポット。
「何故あんな息のできない空間内で活動できたのでしょうか。不明」
「知るかクソ!俺達の仕事が無駄に増えちまったじゃねぇかコンチキショー!」
モグラの隣に現れたのは、変な見た目の鳥。
全身が灰色の羽毛で覆われていて、クチバシが顔と同じくらいの大きさの、足が長い鳥。
ボンドと呼ばれたらしいその鳥は、そのクチバシで【結界】の中に入ったモグラを
ごくり
と飲み込んでしまった。
「……え?」
「我々の目的は失敗。非戦闘員の我々では冒険者には勝てません。撤退。」
「……ちょ、待て!」
「残念ながら、ワタシは足、いえ、翼が速いのです。失敬。」
そう言いながら、本当に超高速で坑道の出口に飛んでいく鳥。
セナは周囲の人間の安否を確認したいのと鳥の追跡の二つの選択肢で一瞬悩む。
「【結界】で位置は特定できない。距離が離れれば強制的に消える。かといって意識不明の奴らをここに放置。それはダメだろう。くそっ」
自分会議は五秒で終了。
セナはその場に残り、倒れている人を一か所に集めて治療する。
幸い死人はいなかったが、飢餓や脱水で瀕死の状態の人が多すぎる。
「【四季スライム】強制帰還。再召喚。」
ベルモットとユゥリの護衛につけているスライムをセナのもとに呼び戻す。
そして、四体に分裂させて重症者を運ぶ準備をする。
「ん……んん。」
軽症者の1人が目を覚ます。
少しの間ボーッとしていたが、セナが目の前で手を振ってみせたり、声をかけると、次第に意識をはっきりと取り戻していった。
「こ、ここは?アレックス?マーシャ?」
最初に目覚めた女は、近くで気絶していた男と女に近づいて肩を揺さぶる。
その声に呼応するように、何人かの軽症者は目を覚ました。
目を覚ました全員に魔法で出した水を飲ませ、歩ける人は自分で、元気そうな男手には、まだ気絶から目覚めていない人を運んでもらった。
その日、セナは冒険者ギルドの人間から詳しい話を聞かれて、夜になるまで宿に戻れなかった。
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