星の王〜能力覚醒で無双開始。もう遅いなんて事ないから首を洗って待ってろよ殺してやるからな。

草間保浩

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第七十九話

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 絶対鉄壁の防御を張ったグランと、回避不可能の攻撃を展開してくるアクア。
その二人を相手にしたセナは、二人の攻略のために一度距離を取ることにした。

 一足で10メートル。鞭の有効射程から逃れるのに四歩は必要。

「【風蓮開】」

 【風】属性で鞭の嵐を防御しつつ、どうにか距離を開ける。

 グランは予想通りに動かない。あの防御形態の弱点は移動。
絶対的なガードを固める反面、身動きが取れなくなるんだろう。
 
「【千乱閃】」
 
 グランを視界に収めた状態で、アクアの鞭と斬り合う。
 鞭というだけあって、硬度自体は大したことが無い。
先端の方が早くしなっているが、それもセナの動体視力で十分補える程度。
 風で減速させて斬る。
 集中力のいる作業だが、抵抗の手段はこれしかない。

「無駄だ!我の鞭は魔法の産物。魔力の限り増やせるんだ!」
「【千乱閃・嵐】」

 アクアの侮蔑を含んだ声も無視して、セナはとにかく斬り続ける。
斬って切って切り続け、とにかく切り伏せ続けた。

「無駄無駄ぁ!!はっはっはは!!」

 水の鞭には際限が無い。それは観察して理解している。
しかし、再生に限りが無く、斬っても増えるというだけで、最大数には限りがある。

 鞭はアクアの体から発生している武器。
そのため、その武器はアクアが操作できる本数しか出現しない。

 その数、六本。

 しかも、再生の癖なのか、そういう仕様なのか、鞭の発生には誤差があり、向かって右よりも左の方が遅い。

 そして、何よりも好機であると思えるのは、鉄壁を張っているグランを巻き込んで攻撃しているせいで、グランはその防御を解除したらアクアの攻撃をモロに食らうことになる。
 
 このアクアの間抜けさは、セナにとっての最大のチャンス。

「【千極乱閃】」

 ギアをもう一つ上げ、斬り込みの速度を高める。
突け入る隙を見つけたなら、即勝負。

 千本の太刀筋でできた、セナを守り斬るための結界。
それを展開しつつ、取った距離を縮めていく。
 
 その動きにアクアが気づいていないということも無く、近づいてきたことに警戒しつつも、鞭の動きに乱れはない。

「ちぃっ!いい加減にしろぉ!【水天・背水乱舞】」

 アクアも一段とギアを上げる。最早目では終えず、風のバリアも削られる一方。殺気と肌感だけで迎撃する。

「グランッ!お前も何か……!?」

 自分の射程範囲にグランを巻き込んでいるということにようやく気付いたらしい。
 アクアの攻撃が一瞬緩み、止まる。

「【十字・一閃】」

 見逃さなかった二筋の剣戟が、アクアの胸に刻まれる。
苦悶の声すら上げられず、深々と斬り込まれた傷口は、どこからどう見ても致命傷。
 間抜けな理由で受けた傷によって、アクアは二度目の死を迎えることに

「甘ェんだよクソガキがぁああ!!!」

 倒れる寸前。アクアの目がセナを睨む。

「【水天・自水爆・極】!!」

 アクアの手が変形し、セナに絡みつく。
 それと同時に、アクアの中の魔力が高まるのを感じる。

「まず―――」
「道連れだぁあああ!!!!」

 目の前のアクアと共に、セナの視界は一瞬で真っ白に―――

◇◆◇

 セナが【異空箱】で飛んだ直後のユゥリ達。

「さて、じゃあ行きましょうか。」
「どぅえっ!!?」
「なによ。」
「いやいや、セナを信じて送り出すって話じゃっ」

 当然のようにセナの気持ちを無視するつもりのユゥリに、ラングが物申す。

「じゃあ、僕は先に行っておくネ!!」
「ええ、期待はしていないけど、アンタも死なないようにね。」
「ありがとウ!!」

 空気を読めないのか、読む気が無いのか、Gは当然のように【異空箱】に入っていった。

「セナは私達に危険が及ぶのを嫌がっただけ。でもそれは私達も同じハズよ。正直、口約束程度を守るつもりなんて無いわ。」
「なんてこったい。セナが不憫に思えてきたよ。ベルはどうなんだい?」
「え?ユゥリ様と同じ意見ですよ。」
「マジか……」

 目元を覆って天を仰ぐラング。
良心枠だと思っていたベルモットすら、ユゥリと同じく約束反故派らしい。

「別にアンタは一緒に来る必要無いわよ。ステータスも大きく落ちたわけではないし、今から聖国方面に戻れば普通に生活できるはずよ。」
「……」
「我々はセナ様のお供をしたいだけですから、人に強制まではしません。」
「……わぁったよ。後で恨むんじゃないよ。」

 そう言うと、ラングはユゥリの元に近づいて、黙って腕を組んだ。

「?どうしたの?」
「私も行くって言ってんだ!」
「……そう、じゃあ、開けるわよ。」

 三人の気合も十分。
 覚悟も決まったところで、ユゥリは自分が持っている【異空箱】を開けようとした。

 そんなところで

―――メグシャァッッ

 【異空箱】が踏みつぶされた空き缶よりも軽やかな音を立てて潰れてしまった。

「「「ッッ!!?」」」

 突然のことに驚愕する三人。
三人の行動を予想したセナが、向こうから箱を壊したのか。
 そう考えた次に、もう一つの予想。

「この行動が予想されていて、セナが箱ごと潰された……?」
「ま、まさか、そんなこと」
「だが、昨日の四天王ってやつの攻撃はこの頑丈な箱を潰せるくらいの威力があったぞ。」

「そう、四天王であれば、そんな特殊な効果だけの箱なんぞ、簡単に壊してしまおうぞ。」

 突然の知らない声。
ベル、ユゥリ、一拍遅れてラングが反応し、距離を取る。

「ほほぅ。ワシにお鉢が回ったからどんな相手かと思えば、意外と大したことはなさそうじゃの。」

 老人のような口調でそう呟いて来るのは、炎を纏ったような和服を着た少女。
 見たことも無く、ベルの持つ強い冒険者の情報にも合致する者はいない。

「ワシは魔王四天王が一人、【炎天】のフレイム。お主らの捕獲を命じられておる。できれば抵抗はしないでもらいたいんじゃが」
「ババァに指図される筋合いはないわ。出直して来て頂戴。」
「どうやら元気が有り余っておるらしい。後悔させようぞ。クソガキ。」

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