星の王〜能力覚醒で無双開始。もう遅いなんて事ないから首を洗って待ってろよ殺してやるからな。

草間保浩

文字の大きさ
82 / 87

第八十話

しおりを挟む
「なんと、大したことが無いではないか。」

 魔王四天王の一人、【炎天】のフレイムの襲来によって、ユゥリ、ベル、ラングの三人は窮地に立たされていた。
 セナは魔王軍の本拠地に単身で乗り込んでいるし、Gはそれを追って【異空箱】に入った途端、【異空箱】がつぶれてしまい生死不明。
 三人はセナにステータスやスキルを分けた影響で今までよりも弱く、戦いにくい状態になっていた。

「まともに戦えているのはおぬしら二人だけ。そこの者は同じような能力なのに弱すぎる。」
「ちくしょうぅ……!!」
「ラング……耳を貸さなくていいわ」
「そうです。あなたは自分のやるべきことをやってください。」

 ボロボロになりながらも、ベルもユゥリも諦めていない。
 彼我の差を理解していないわけではない。
 相手に一矢報いることすら容易ではない。
 そんな状態でありながら、二人の目はギラギラと光って曇らない。

「自信をなくすのぅ。ワシの力を見てもそんなに折れんとは。殺すつもりはないと言っておるのだが。」
「どうせセナへの人質にしようとしてるんでしょ?死んでも嫌よ。」
「……ふむ。ならば手足の二、三本は覚悟してもらうぞ。」

 フレイムの目が、品定めをする上位者の目から、狩りをする獣の目になる。
 魔力の質、威圧感。それら全てが数秒前とは別次元に高まっていくのを感じる。

「【炎天・焔陽青龍】」

 セナが召喚する鉄鋼龍よりサイズは劣るが、その全身から放たれる熱気、体そのものが青く猛る炎で作られ、それでいて生命にも見えるドラゴン。
 受ける手段も、受けた後の手段も持ち合わせていないユゥリたちにとっては、それはオーバーキル必至な一撃。

 それでも、

「手足なんてどうでもいいわ。セナならどんな姿になろうと私を愛してくれるんだから。」

 目をそらしているわけでも、その魔法がどれほどの威力か理解していないわけでもなく。
 ユゥリの目はその龍を直視していながら、依然折れる気配がない。

「そうか、では試してやろう。」

 くいッと指をユゥリに向けるだけで、その炎龍はユゥリに大きな牙を向け、とてつもない速度で襲い掛かる。

「諦めない。どんなにあんたが強くても。」

 全てを焼き尽くす牙が触れる直前、ユゥリの体が淡く光る。

「私は、鬼神悠理オニガミユゥリ。セナのパートナーとして、あんたなんかに負けられない。」

 光はユゥリの手に集まり、一つの欠片と成る。

「【■化】」

 まだ完全な物ではないからか、よく聞こえなかったその言葉をかき消すように、ユゥリの手はその姿を変えていた。

 手だけではない。手の先から肩。足の先からふとももの付け根。そして胴体の一部。
 混沌を想起させるような形容しがたい鎧を、不完全ながらも纏っていた。

「【シ■・空想■斬】」

 歪に整った爪は一撫でで龍を両断し、五枚に卸してみせる。
 魔力の中核ごと両断するその一撃で、炎龍は断末魔すら上げられずに霧散し、後には驚いた顔をしているフレイムと、同じように驚いているベルがいた。

「ユゥリ様、それはいったい……」
「さあ?私にもわからないわ。でも、これならあいつを叩きのめせる。」

「ほう、小マシな装備一つでよく吠える。」

 ユゥリの覚醒に水を差すように、フレイムは魔力を練り上げる。
 しかし、フレイム自身はその変化に、ユゥリ本人よりも敏感に反応していた。

「【炎天・猛艶絶炎】」

 全身に炎を纏い、インファイトに切り替える。
 フレイムが何より得意な戦法。しかし、それはつまり本気を出すということ。
 
 今の覚醒はマズい。今、ユゥリは明らかにフレイムを超えた何かを得た。

「【炎天・虹炎滅拳】」

 纏った炎は七色に光り、フレイムの体を巡る。
 圧力が数段増し、ユゥリの後ろで事の趨勢を見守っていたベルは、固唾を飲む。
 しかし、それでもユゥリの表情に変わりはない。

「【シ■・仮想千■】」

 両の手、そこに携えた爪が十本。それを交差させるように、胸の前で空を切る。
 
「ぐぅううおおおおおおッッ!!?」

 それだけで、フレイムを切り裂くほどの斬撃が飛んでくる。
 真空波どころの話ではない。最高硬度と巡る魔力による鎧武器。
 それが、たった一度の手の振り払いで掻き消された。

 防御は砕かれ、余った勢いでフレイムの両腕は千切れ飛ぶ。
 それでも殺しきれなかった勢いで、首から腹部にかけて、賽の目状の斬撃跡ができ、噴水のように血を流す。

「ごっ、このワシをっ、流石じゃのぅ。しかし、もう、手遅れじゃな……ぶふっ」

 どうにか膝をつかないようにこらえるが、見ての通りの致命傷。
 フレイム本人の意思にかかわらず、体は十数秒で限界を迎える。

「今から追って、がはっ、間に合えば、良いのぅ……」

 そう言い残し、フレイムは自分の流した血の海に倒れ伏す。

 ユゥリは何も答えない。

 その目は覚悟に煌めき、どこか遠くを見つめていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

処理中です...