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第八十話
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「なんと、大したことが無いではないか。」
魔王四天王の一人、【炎天】のフレイムの襲来によって、ユゥリ、ベル、ラングの三人は窮地に立たされていた。
セナは魔王軍の本拠地に単身で乗り込んでいるし、Gはそれを追って【異空箱】に入った途端、【異空箱】がつぶれてしまい生死不明。
三人はセナにステータスやスキルを分けた影響で今までよりも弱く、戦いにくい状態になっていた。
「まともに戦えているのはおぬしら二人だけ。そこの者は同じような能力なのに弱すぎる。」
「ちくしょうぅ……!!」
「ラング……耳を貸さなくていいわ」
「そうです。あなたは自分のやるべきことをやってください。」
ボロボロになりながらも、ベルもユゥリも諦めていない。
彼我の差を理解していないわけではない。
相手に一矢報いることすら容易ではない。
そんな状態でありながら、二人の目はギラギラと光って曇らない。
「自信をなくすのぅ。ワシの力を見てもそんなに折れんとは。殺すつもりはないと言っておるのだが。」
「どうせセナへの人質にしようとしてるんでしょ?死んでも嫌よ。」
「……ふむ。ならば手足の二、三本は覚悟してもらうぞ。」
フレイムの目が、品定めをする上位者の目から、狩りをする獣の目になる。
魔力の質、威圧感。それら全てが数秒前とは別次元に高まっていくのを感じる。
「【炎天・焔陽青龍】」
セナが召喚する鉄鋼龍よりサイズは劣るが、その全身から放たれる熱気、体そのものが青く猛る炎で作られ、それでいて生命にも見えるドラゴン。
受ける手段も、受けた後の手段も持ち合わせていないユゥリたちにとっては、それはオーバーキル必至な一撃。
それでも、
「手足なんてどうでもいいわ。セナならどんな姿になろうと私を愛してくれるんだから。」
目をそらしているわけでも、その魔法がどれほどの威力か理解していないわけでもなく。
ユゥリの目はその龍を直視していながら、依然折れる気配がない。
「そうか、では試してやろう。」
くいッと指をユゥリに向けるだけで、その炎龍はユゥリに大きな牙を向け、とてつもない速度で襲い掛かる。
「諦めない。どんなにあんたが強くても。」
全てを焼き尽くす牙が触れる直前、ユゥリの体が淡く光る。
「私は、鬼神悠理。セナのパートナーとして、あんたなんかに負けられない。」
光はユゥリの手に集まり、一つの欠片と成る。
「【■化】」
まだ完全な物ではないからか、よく聞こえなかったその言葉をかき消すように、ユゥリの手はその姿を変えていた。
手だけではない。手の先から肩。足の先からふとももの付け根。そして胴体の一部。
混沌を想起させるような形容しがたい鎧を、不完全ながらも纏っていた。
「【シ■・空想■斬】」
歪に整った爪は一撫でで龍を両断し、五枚に卸してみせる。
魔力の中核ごと両断するその一撃で、炎龍は断末魔すら上げられずに霧散し、後には驚いた顔をしているフレイムと、同じように驚いているベルがいた。
「ユゥリ様、それはいったい……」
「さあ?私にもわからないわ。でも、これならあいつを叩きのめせる。」
「ほう、小マシな装備一つでよく吠える。」
ユゥリの覚醒に水を差すように、フレイムは魔力を練り上げる。
しかし、フレイム自身はその変化に、ユゥリ本人よりも敏感に反応していた。
「【炎天・猛艶絶炎】」
全身に炎を纏い、インファイトに切り替える。
フレイムが何より得意な戦法。しかし、それはつまり本気を出すということ。
今の覚醒はマズい。今、ユゥリは明らかにフレイムを超えた何かを得た。
「【炎天・虹炎滅拳】」
纏った炎は七色に光り、フレイムの体を巡る。
圧力が数段増し、ユゥリの後ろで事の趨勢を見守っていたベルは、固唾を飲む。
しかし、それでもユゥリの表情に変わりはない。
「【シ■・仮想千■】」
両の手、そこに携えた爪が十本。それを交差させるように、胸の前で空を切る。
「ぐぅううおおおおおおッッ!!?」
それだけで、フレイムを切り裂くほどの斬撃が飛んでくる。
真空波どころの話ではない。最高硬度と巡る魔力による鎧武器。
それが、たった一度の手の振り払いで掻き消された。
防御は砕かれ、余った勢いでフレイムの両腕は千切れ飛ぶ。
それでも殺しきれなかった勢いで、首から腹部にかけて、賽の目状の斬撃跡ができ、噴水のように血を流す。
「ごっ、このワシをっ、流石じゃのぅ。しかし、もう、手遅れじゃな……ぶふっ」
どうにか膝をつかないようにこらえるが、見ての通りの致命傷。
フレイム本人の意思にかかわらず、体は十数秒で限界を迎える。
「今から追って、がはっ、間に合えば、良いのぅ……」
そう言い残し、フレイムは自分の流した血の海に倒れ伏す。
ユゥリは何も答えない。
その目は覚悟に煌めき、どこか遠くを見つめていた。
魔王四天王の一人、【炎天】のフレイムの襲来によって、ユゥリ、ベル、ラングの三人は窮地に立たされていた。
セナは魔王軍の本拠地に単身で乗り込んでいるし、Gはそれを追って【異空箱】に入った途端、【異空箱】がつぶれてしまい生死不明。
三人はセナにステータスやスキルを分けた影響で今までよりも弱く、戦いにくい状態になっていた。
「まともに戦えているのはおぬしら二人だけ。そこの者は同じような能力なのに弱すぎる。」
「ちくしょうぅ……!!」
「ラング……耳を貸さなくていいわ」
「そうです。あなたは自分のやるべきことをやってください。」
ボロボロになりながらも、ベルもユゥリも諦めていない。
彼我の差を理解していないわけではない。
相手に一矢報いることすら容易ではない。
そんな状態でありながら、二人の目はギラギラと光って曇らない。
「自信をなくすのぅ。ワシの力を見てもそんなに折れんとは。殺すつもりはないと言っておるのだが。」
「どうせセナへの人質にしようとしてるんでしょ?死んでも嫌よ。」
「……ふむ。ならば手足の二、三本は覚悟してもらうぞ。」
フレイムの目が、品定めをする上位者の目から、狩りをする獣の目になる。
魔力の質、威圧感。それら全てが数秒前とは別次元に高まっていくのを感じる。
「【炎天・焔陽青龍】」
セナが召喚する鉄鋼龍よりサイズは劣るが、その全身から放たれる熱気、体そのものが青く猛る炎で作られ、それでいて生命にも見えるドラゴン。
受ける手段も、受けた後の手段も持ち合わせていないユゥリたちにとっては、それはオーバーキル必至な一撃。
それでも、
「手足なんてどうでもいいわ。セナならどんな姿になろうと私を愛してくれるんだから。」
目をそらしているわけでも、その魔法がどれほどの威力か理解していないわけでもなく。
ユゥリの目はその龍を直視していながら、依然折れる気配がない。
「そうか、では試してやろう。」
くいッと指をユゥリに向けるだけで、その炎龍はユゥリに大きな牙を向け、とてつもない速度で襲い掛かる。
「諦めない。どんなにあんたが強くても。」
全てを焼き尽くす牙が触れる直前、ユゥリの体が淡く光る。
「私は、鬼神悠理。セナのパートナーとして、あんたなんかに負けられない。」
光はユゥリの手に集まり、一つの欠片と成る。
「【■化】」
まだ完全な物ではないからか、よく聞こえなかったその言葉をかき消すように、ユゥリの手はその姿を変えていた。
手だけではない。手の先から肩。足の先からふとももの付け根。そして胴体の一部。
混沌を想起させるような形容しがたい鎧を、不完全ながらも纏っていた。
「【シ■・空想■斬】」
歪に整った爪は一撫でで龍を両断し、五枚に卸してみせる。
魔力の中核ごと両断するその一撃で、炎龍は断末魔すら上げられずに霧散し、後には驚いた顔をしているフレイムと、同じように驚いているベルがいた。
「ユゥリ様、それはいったい……」
「さあ?私にもわからないわ。でも、これならあいつを叩きのめせる。」
「ほう、小マシな装備一つでよく吠える。」
ユゥリの覚醒に水を差すように、フレイムは魔力を練り上げる。
しかし、フレイム自身はその変化に、ユゥリ本人よりも敏感に反応していた。
「【炎天・猛艶絶炎】」
全身に炎を纏い、インファイトに切り替える。
フレイムが何より得意な戦法。しかし、それはつまり本気を出すということ。
今の覚醒はマズい。今、ユゥリは明らかにフレイムを超えた何かを得た。
「【炎天・虹炎滅拳】」
纏った炎は七色に光り、フレイムの体を巡る。
圧力が数段増し、ユゥリの後ろで事の趨勢を見守っていたベルは、固唾を飲む。
しかし、それでもユゥリの表情に変わりはない。
「【シ■・仮想千■】」
両の手、そこに携えた爪が十本。それを交差させるように、胸の前で空を切る。
「ぐぅううおおおおおおッッ!!?」
それだけで、フレイムを切り裂くほどの斬撃が飛んでくる。
真空波どころの話ではない。最高硬度と巡る魔力による鎧武器。
それが、たった一度の手の振り払いで掻き消された。
防御は砕かれ、余った勢いでフレイムの両腕は千切れ飛ぶ。
それでも殺しきれなかった勢いで、首から腹部にかけて、賽の目状の斬撃跡ができ、噴水のように血を流す。
「ごっ、このワシをっ、流石じゃのぅ。しかし、もう、手遅れじゃな……ぶふっ」
どうにか膝をつかないようにこらえるが、見ての通りの致命傷。
フレイム本人の意思にかかわらず、体は十数秒で限界を迎える。
「今から追って、がはっ、間に合えば、良いのぅ……」
そう言い残し、フレイムは自分の流した血の海に倒れ伏す。
ユゥリは何も答えない。
その目は覚悟に煌めき、どこか遠くを見つめていた。
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