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第1話 唐突だけどボーイミーツガール
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「間宮君、お願い! 私と、付き合って!」
この日、俺は同じクラスの女の子から唐突にこんな事を言われた。
入学式当日の、今から帰ろうとして校舎を出た矢先の出来事である。
だが、どうして俺なのかはさっぱり見当がつかない。
彼女はたしか、ホームルーム後すぐに色んな人と話していた活発な子のはず。
対して俺は小学生の頃から一人も友達がいない、特徴も皆無の地味な奴。
当然ながら互いに初対面だし、他に接点なんて無いと思うんだけど。
で、でも、もしかしたら本当に――
「あっ! 言い間違えちゃった、ごめぇーん!」
――だよね。
いきなりの事で気が動転しそうになったけど、彼女の弁解のおかげですぐに気を取り直す事ができた。
ま、初手告白なんてうまい話ある訳ないよな……。
とはいえ一瞬期待してしまったのでなんだか悔しい。
「まぁあたしと付き合って欲しいのは本当かな!」
「だから、それを言うなら『私、に、付き合って』じゃない?」
「そうだった! ごめんねー、あたしバカだからさー、あはは!」
「じ、自分に正直なんだね」
「もっちろん! これがあたしの、持ち味ー! にひっ!」
でも悔しさを忘れさせてくれるくらいに笑顔が眩しいから、不思議と憎めない。
こう勢いで押し通そうとする所はとてもあこがれる。
俺にないものを持っているといった感じで。
きっと何事にも物怖じしない大胆な性格なんだろうな。
「それでね、あたしに協力してほしいんだ! どうかなどうかな!?」
「協力……?」
「そう! 幸薄そうな間宮君ならきっと気に入ると思って!」
「さりげなく人の心をグサグサ刺してくるね、君」
ただ本当に思慮に欠けているというかなんというか。
バカだと自負する理由もなんとなくわかる気がする。
普通、初見でこんな事言われて協力してくれる奴なんていないんじゃないか?
――とはいえ、協力して欲しいというのはあながち嘘じゃないのかもしれないな。
「はぁー、ふぅー、ち、ちと息整えるの待って!」
「お、おう……」
なにせ彼女はこう息切れしていて、地声も大きいからとうとう前のめり状態に。
さっきもずっと走り回っていたし、俺を呼び止めた時も必死そうだった。
それでもがんばって顔を上げ、ショートのぱっつんヘアから覗くまんまるな瞳で俺を見上げているのだ。信じたくもなる。
まぁ俺としては、その下に見える大きな膨らみが視線を惹いてならないけども。
目のやり場に困るなぁ、このアングル……。
「あ! あたし虹岡つくし! 同じクラスの!」
「うん、知ってる」
「さっすがー! じゃあ行こっ!」
「え、ちょっ!?」
そしてその勢いも本物だ。
いきなり虹岡さんが俺の手を掴み、ぐいっと引っ張ってきた。
握ってきた手が、とても暖かくて柔らかい。
「ど、どこに行くんだよ!?」
「着いてからのお楽しみーっ!」
女子に手を握られたのは人生で初めてだ。
だから扱いに困って、つい握り返してしまった。
すると虹岡さんも気にするどころかギュッと引っ張って校舎へ引き返す。
それで下履きに履き替えず、互いに素足のままで廊下へ。
当然、靴をしまう暇なんて与えてはくれない。
それだけ彼女の勢いがすごいのだ。
だけど不思議とそれでも嫌じゃない。
そうも思える一生懸命さが、温もりとして掌から伝わって来る気がするから。
なんだかこの勢いに乗り続けたい――そう思えるほどに。
この日、俺は同じクラスの女の子から唐突にこんな事を言われた。
入学式当日の、今から帰ろうとして校舎を出た矢先の出来事である。
だが、どうして俺なのかはさっぱり見当がつかない。
彼女はたしか、ホームルーム後すぐに色んな人と話していた活発な子のはず。
対して俺は小学生の頃から一人も友達がいない、特徴も皆無の地味な奴。
当然ながら互いに初対面だし、他に接点なんて無いと思うんだけど。
で、でも、もしかしたら本当に――
「あっ! 言い間違えちゃった、ごめぇーん!」
――だよね。
いきなりの事で気が動転しそうになったけど、彼女の弁解のおかげですぐに気を取り直す事ができた。
ま、初手告白なんてうまい話ある訳ないよな……。
とはいえ一瞬期待してしまったのでなんだか悔しい。
「まぁあたしと付き合って欲しいのは本当かな!」
「だから、それを言うなら『私、に、付き合って』じゃない?」
「そうだった! ごめんねー、あたしバカだからさー、あはは!」
「じ、自分に正直なんだね」
「もっちろん! これがあたしの、持ち味ー! にひっ!」
でも悔しさを忘れさせてくれるくらいに笑顔が眩しいから、不思議と憎めない。
こう勢いで押し通そうとする所はとてもあこがれる。
俺にないものを持っているといった感じで。
きっと何事にも物怖じしない大胆な性格なんだろうな。
「それでね、あたしに協力してほしいんだ! どうかなどうかな!?」
「協力……?」
「そう! 幸薄そうな間宮君ならきっと気に入ると思って!」
「さりげなく人の心をグサグサ刺してくるね、君」
ただ本当に思慮に欠けているというかなんというか。
バカだと自負する理由もなんとなくわかる気がする。
普通、初見でこんな事言われて協力してくれる奴なんていないんじゃないか?
――とはいえ、協力して欲しいというのはあながち嘘じゃないのかもしれないな。
「はぁー、ふぅー、ち、ちと息整えるの待って!」
「お、おう……」
なにせ彼女はこう息切れしていて、地声も大きいからとうとう前のめり状態に。
さっきもずっと走り回っていたし、俺を呼び止めた時も必死そうだった。
それでもがんばって顔を上げ、ショートのぱっつんヘアから覗くまんまるな瞳で俺を見上げているのだ。信じたくもなる。
まぁ俺としては、その下に見える大きな膨らみが視線を惹いてならないけども。
目のやり場に困るなぁ、このアングル……。
「あ! あたし虹岡つくし! 同じクラスの!」
「うん、知ってる」
「さっすがー! じゃあ行こっ!」
「え、ちょっ!?」
そしてその勢いも本物だ。
いきなり虹岡さんが俺の手を掴み、ぐいっと引っ張ってきた。
握ってきた手が、とても暖かくて柔らかい。
「ど、どこに行くんだよ!?」
「着いてからのお楽しみーっ!」
女子に手を握られたのは人生で初めてだ。
だから扱いに困って、つい握り返してしまった。
すると虹岡さんも気にするどころかギュッと引っ張って校舎へ引き返す。
それで下履きに履き替えず、互いに素足のままで廊下へ。
当然、靴をしまう暇なんて与えてはくれない。
それだけ彼女の勢いがすごいのだ。
だけど不思議とそれでも嫌じゃない。
そうも思える一生懸命さが、温もりとして掌から伝わって来る気がするから。
なんだかこの勢いに乗り続けたい――そう思えるほどに。
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