実家が先行実装ダンジョンだった俺、同級生の女子に誘われたので今度は正式実装版で無双をやってみた。え、配信された攻略動画がバズってるって!?

日奈 うさぎ

文字の大きさ
63 / 126

第63話 迷路ダンジョン攻略の秘訣は、振り子?

しおりを挟む
 遥の機転で参戦問題に関しては何とか解決できた。
 だけど真の問題はこれからだ。

 今回のダンジョンは今までとは違う。
 全員が頭を使わなければまず間違いなく攻略不可能なのだから。

 だから俺達は今、ダンジョン入口前で作戦会議中。
 プレイヤー全員を集めて攻略手段を策定している所だ。
 一位から十位まで揃い踏みだから百人近い人数になっている。

「今回ばかりは全員で声を合わせて入った方がいいと思う。また無策で入るのはいくらなんでも無謀が過ぎると思うんだ」
「その事にはこっちも賛成や」
「ああ、こっちもだ。力押しでどうにかなるようなダンジョンじゃないしな」

 よかった、これにはみんな了承してくれるみたいだ。ありがたい。

「それで作戦としてはどうする? チームごとに分かれて進むのはいいとして」
「それだと結局は先日と同じ結果にならないか?」
「たしか昨日の攻略組は、分かれ道が訪れる度に分かれていった結果、散り散りになったんだったな」
「しかもその後も分かれ道に遭遇していたわね」
「枝分かれの数がキリないんだよな」
「しかも末端が別の道と繋がってたりするし」

 騒いでいるようにも見えるけど、ちゃんと話しあってはいる。
 さすがトップスだけあって攻略に対しては真面目に対応してくれているんだな。
 参戦したばかりの俺達の声にもしっかりと耳を傾けてくれているし。

 しかし答えがなかなか出ない。
 みんな色々と考えてきてくれているみたいなんだが。

「でしたらわたくしに提案がありますわ」

 えっ、遥が手を挙げた?
 まさか何か策を考えて来たのか?

「なんや遥、言ってみい」
「わたくしは〝2 on 2の振り子式進行作戦〟が良いと思いますわ」
「ど、どういう意味だ?」
「まず二人二組の仮チームを立て、メイン班とサブ班を決めます。そしてチームが散り散りになったらメインを主軸にして進み、分かれ道に遭遇したらサブが別の方を進む。しかしサブは一定進行したのち引き返し、すぐメインと合流するのです」
「なるほど、一本で進み続けるのではなく、二本同時に手を出して調査領域も広げる、か」
「そうする事で万が一の挟撃も防げるでしょう。つど印なども付ければ進んだ道もわかりますし、何か気付く事もあるかもしれません」

 割と具体的な作戦だ。最適かどうかは別として。
 少なくとも、分かれた先で合流した場合にも気付きやすい。
 それに、一本で進み続けるよりはダンジョンのギミックにも気付きやすくなるかもしれないし。

 このダンジョンは普通とは違うように感じるからな。
 少しでも何かに気付ければ、それが糸口になるかもしれない。

「他に提案はあるか?」
「いや、こっちにはない」「こっちもだ」
「ならこれ以上話し合っても仕方ないし、遥の提案を採用する事にしよう。じゃあチームを再編成だ。あぶれた人員は混成チームにするのと、あと何かあった時のヒーラーを一人くらいは入口に配置したいかな」
「「「了解だ」」」

 そうと決まるとみんな納得するのが早い。
 思った以上に統制が取れている気がする。
 初めて入った時とはまるで大違いだ。

 こんな物わかりの早い人達ばかりなら通常攻略ももっと楽になるだろうに。

「さて、俺達もメインとサブで分けようか」
「そうですわね。でしたらわたくしは――」

 ん、なんだ?
 遥の視線がこっちに向いている。
 何かまた提案でもあるのだろうか?

「ダメーッ! 遥は彼方と一緒はダメーッ!」 
「なっ!? いきなりなんだよつくし!?」

 今度はつくしがなんだ!?
 いきなり間に割って入ってきたぞ!?

「当然ですわ。わたくしと彼方が一緒になる事はありえません」
「え!?」
「共に前衛ですし、それに後衛だけで組ませるのは危険でしょう?」
「そ、そだよね! 当然だよねーあはは!」

 だな、遥の言う通りだ。
 だったら俺がつくしと組んで――

「でしたらメインを彼方と母桃さんが。サブをわたくしとつくしにするのが良いかと」
「ええっ!?」
「その理由は?」
「わたくしは母桃さんの能力を把握しておりませんし、彼方であれば彼女の力をより利用できると聞き及んでおりますので」
「だ、誰に聞いたんだそれ」
「ええと、く、くぅ……くずもちとかそんな感じの名前の冴えない男ですわ。あなた達との対決前にかの男から情報リークがありましたの。四人だけでダンジョン攻略をしたとかいうよくわからない眉唾話も含めて」

 葛餅? くずもち……あー、くすのき!
 楠の奴め、俺達の情報を流していたのか。相変わらず小賢しいままか。

 そもそもがその情報、口外禁止だったはずなのになぁ。
 あとでそれとなく新北関東プロチームに問い合わせてみよっと。

「それに実力ならあなたの方が上でしょう? でしたらヒーラーであるつくしをわたくしと組ませるのが得策かと」
「なるほど、それなら納得かな」
「むむむ、そういう事なら仕方ないなー」
「ンッフフ……あらつくし、そう言ってなんだか不服そうだけど?」
「そ、そんな事ないよー!?」

 まぁつくしの様子がなんだかちょっと変なのは気になるけど、これでいいか。
 今の遥ならつくしの事を任せても平気だろうし。

 こうやりとりしている間に、他のチームももう再編成が済んだみたいだ。
 数えてみると二三チームに余り二人……結構な数になった。

「余り二人は要望通りヒーラーだ」
「了解。各班は何かあったら無理せず戻って欲しい。なおメインはM、サブはSの文字を分かれ道毎に刻んでくれ。それじゃあ行こう」

 そんな大人数でダンジョンへと突入を開始。
 まずは武器庫で装備調達しなければ。今回は小斧でいいかな。

 ――なんて思っていたのだが。

「なんか武器庫小さくない?」
「待って、いつもより武器のレパートリーが少ない」
「うわぁ私のいつも使ってる武器無いんだけど? レベル1スタートじゃん……」

 さっそく想定外の出来事が待っていたとは。
 もう周囲から不満の声が上がってきたぞ。
 小斧も見当たらないし、ちょっとショックなんだが?

「こんな話、昨日の情報にあった?」
「いや、知らんな」
「ダンジョンの構造そのものが変わってるのかもしれない」

 聞くと、ダンジョン内部はプレイヤーが全員出たらリセットされるらしい。
 ただ構造自体はほぼ維持されるという事だからちょっと変な話だ。
 新しいタイプだから仕様もちょっと違うのかも。

「班分けに支障が出るチームある?」
「……いや、ひとまずは無さそうだ」
「だったらこのまま行くとしよう。レベル1の人は無理しないようにしてくれ」

 幸いなのは敵がほとんどいないし、いても弱い事か。
 だからレベル1で進む事もそれほど抵抗は無い。

「よし進もう。チーム数が多い内はどっちに進んでも構わないから判断は任せるよ」

 しかしまさか誰も無職レベル21に率いられるとは思ってもなかっただろうな。
 武器が無い不運な人を除くと、俺が今一番低いんだよね……。

 それにしても、俺は一体いつになったら変身できるのだろうか。
 個人ランキングトップになってもまだできてないって、ホント奇妙な話だよなぁ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?

くまの香
ファンタジー
 いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

処理中です...