実家が先行実装ダンジョンだった俺、同級生の女子に誘われたので今度は正式実装版で無双をやってみた。え、配信された攻略動画がバズってるって!?

日奈 うさぎ

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第92話 このカエル野郎、とんでもない奴だった

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 高難易度ダンジョンのボス、謎のカエル野郎。
 奴の策略に見事ハマり、俺達の戦力は一気に半減してしまった。

 無事なプレイヤーの人数はおよそ三〇名ほど。
 揃って高レベルプレイヤーではあるけれど、いずれも動揺は否めない。

「ゴゲ、ゴゲゲッ!」
「奴はおそらく魔術士タイプだ! 水・氷魔法を使うだろうから油断するなっ!」
「あのナリで獣人タイプって事かいな!」
「クソがァ! 最後の最後で厄介な奴が来やがったァ!」

 しかし幸いにも職業構成に支障はない。
 やれない事は無いぞ!

「陣形ッ! それとつくしはみんなの回復に専念してくれ!」
「うんっ!」

 まずつくしを筆頭にしたヒーラーが負傷者の回復に専念させる。
 しかし彼女達に指一本触れさせてはならない!

 ゆえに匠美さん筆頭の盾三人がさっそうと防御布陣を敷いた。
 カエルに魔法を使われる前に防御を固めたのだ。

「くっ! よくも仲間達をぉ!!」
「舐めた真似してくれちゃってさあ!!」

 するとその時、先行していた来栖川君と東雲さんがカエルへ一直線に走り込んでいく。

 二人とも軽装前衛だから動きが速い!
 もう斬り掛かろうとしている!

「ゴォゲ!」

 だがカエルは咄嗟に目前で両手をくるりと回し、水を操り始めた。
 するとたちどころにして自身の身丈よりも長い何かを形成する。

「なッ!? あれは……水でできた棍棒だとっ!?」
「なん、やてぇ!?」

 そう、水でできた武器である。

 しかもカエルは事もあろうか二人の斬撃をたった一本の棍棒で受け止める。
 さらには強引に押し返し、なんと跳ね上げた。
 小さい体にもかかわらずなんて力強さなんだ!

「「うあああっ!?」」
「ゴゲェ……!」

 なにっ!? それだけじゃないだと!?
 弾かれた二人よりもさらに速く跳んで、棍棒で強引に押し上げただって!?
 なんて事だ、揃ってあっという間に天井へ叩きつけられてしまった!

「ぐあああ!!?」「がふっ!??」

 馬鹿な、あの二人が瞬殺!?
 遥が抜けた後とはいえ、日本トップクラスの実力には変わりないんだぞ!?

 なのにカエルはと言えば、地面へ棍棒を突き刺してその上で舌なめずりしている。
 まるで二人を雑魚だと嘲笑するかのように。

「野郎のなんやあのスピードォ! とんでもないでぇ!!」
「来るぞおっ!」

 そんなカエルが棍棒を振り回しながら一歩を踏み出す。
 ゆっくり、だが加速しながらと。

 これが魔術士だと!?
 いや違う、これは明らかに優れた棍術使いの動きだ!

 つまり奴は近接・魔法をどちらも扱える魔法戦士なんだ……!

「速さなら負けませんわッ!」
「こっちだってさぁぁぁ!!」

 だ、だけどあの二人なら!
 軒下魔宮で鍛えた澪奈部長と遥なら捉えるのは容易なはず!

 ――そう思った瞬間、俺は信じられもしない光景を目の当たりにした。

 なんとあの二人が一瞬でかわされていたのだ。
 それも斬撃を躱され、蹴りまで見舞われ、棍棒で弾かれるという。

 まるで稲妻のような動きだった。
 それほどに鋭く跳ね、鋭角に飛び、それでいて動きに一切無駄がない。

「しゃらあああーーーっっ!!!!!」

 しかしそのカエル目掛けて、匠美さんのシールドチャージが迫る。
 鈍重だが相対速度とその大きさ的にかわすのは困難だぞ!?

「ゲッコォ……!」
「んっなあ!?」

 だが奴はそれでもかわしていた。
 匠美さんの頭上を、まるで棒高跳びのように体をひねって。

「〝枝突一閃しとついっせん〟ッ!!」「〝上級雷光線サンダーレイ〟!」
「ゲッ!?」

 でもそんなカエルへと、モモ先輩と凜さんがすでに狙いを定めていた。
 光線魔法と鋭く速い一矢を撃ち放っていたのだ。

 それなのに……!

「ゴッゲェ!」
「冗談でしょう!?」

 その二撃さえカエルはかわしていたという。
 長い舌を器用に使い、匠美さんを足場にして跳ねる事によって。

 しかし奴にもう余裕はない!
 表情から十分なほどに読み取れたぞ!

 だからこそここで、俺が行く!

 ゆえに俺は走りながら拳を溜め構えた。
 それも奴の着地の瞬間を狙って。

 タイミングはバッチリだ!
 もう逃がすものか! ここで仕留めきってやるぞ!

「ッゲェ!!!」
「ッ!?」

 ……そう思っていたのに。
 確実に狙えていたはずなのに。

 今、奴は俺が辿り着くよりも速く着地を果たしていた。
 その小さな足をありえないほどに大きく膨らませて。

 しかも、だ!

「そ、そんな馬鹿なッ!? 俺よりも速い、だってえええッ!!?」

 奴は今、その巨大な脚で後ろに跳ねていたのである。
 俺が飛び出すよりもずっと速く、あっという間に部屋の奥へと辿り着くほどの速度で。

 冗談だろ……!?
 俺の踏み出し速度は軒下レベル600台のものなんだぞ!?

「う、嘘ぉ、彼方が攻撃をかわされた……?」
「ヒ……なんなのあの速さ!?」

 奴の膨らんだ足はもう戻っている。
 だけどあの異常な脚力は明らかに何かがおかしい!
 あんなの、現状のプレイヤーが反応できる訳もないだろうが!!

 どうしてだ、どうしてこんな――

「あ……」

 でも俺はここで、奴の強さの秘密に気付いてしまった。
 それのみならず、ここ最近の敵の強さが例年よりもずっと上がっていた理由も。

 そしてこのダンジョンがトップスさえ苦戦必至となった原因さえも。

「も、もしかして奴が強いのは……俺のせい、なのか……?」

 もっと早く気付くべきだったのだ。
 このダンジョンもまた軒下と同じく、プレイヤー能力補正がある事に。

 俺が参加してしまったからこそ、敵もまた尋常ではなく強くなってしまったのだと。
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