実家が先行実装ダンジョンだった俺、同級生の女子に誘われたので今度は正式実装版で無双をやってみた。え、配信された攻略動画がバズってるって!?

日奈 うさぎ

文字の大きさ
93 / 126

第93話 カエルの強さは彼方向けに補正されているらしい

しおりを挟む
「こんのぉぉぉ! カエル野郎があああ!!! うおおっ!?」
「すばしっこくて当たらないってぇ! きゃあ!」
「あっちだ、追えええっ!! うわっ、水弾吐きやがった!?」

 衝撃の事実に気付いた俺は立ち尽くすしかなかった。
 仲間達が続いて戦い続けている中ででも。

 攻撃をかわされた事なんて別にどうでもよかったんだ。
 軒下ならそんな事しょっちゅうだし、このカエルくらいの強さの相手ならいくらでも戦ってきたから。

 だけど、この強さの相手がダンジョンで出現したとなれば話は別だ。

「クソが! あの野郎、とてもじゃねぇがまったく当てられる気がしねぇ!」
「間宮さん、なんとかならないんですか!?」
「え!? あ、ああ、今対応を考えているよ……」

 ……ごめん、嘘だ。
 今の俺にそこまでの思考リソースは無い。
 こんな苦戦を呼び込んでしまった原因が俺かもしれないとわかってしまったから。

 責任と重圧でいっぱいいっぱいで……クソッ!

「だが幸い、奴の攻撃力はそれほどやないで!」
「そうですわ! 攻め続ければいつかは倒せるはず!」
「やるよぉ! モモっち援護お願い!」

 それでも仲間達は俺に頼り切らずに戦ってくれている。
 今はダメでも、いつか打開策を導き出せると信じて。
 俺を信じて、戦ってくれているんだ。

 でもさ、それじゃダメなんだよ。
 俺がいない時でもアイツを倒せなきゃ意味がないんだから。

 でないと、結局今まで通りじゃないか。
 トップオブトップスに頼るだけの、犠牲が出るだけの戦いっていう。

「彼方」
「えっ?」

 ――そう悩んでいた俺の背中いっぱいに、突然柔らかな感触が伝わる。
 すると今度は腹部に腕が回されて、そのままギュっと抱き込まれた。

「つ、つくし?」
「大丈夫だよ。みんなに頼っても平気だから」
「何を言って……」
「一人で背負い込む必要なんて、ないんだってコト」
「あ……」

 つくしの吐息が、囁きが首元から伝い、俺の心にまで響く。
 背筋に鳥肌が立つくらいの心地良さとなって。

 でも、そのおかげで俺の頭から突如として悩みが吹き飛んでしまった。
 つくしの事ばかりが脳裏によぎった事によって。

「ほら見て、みんなの気合いだって負けていないよ?」

 それでふと言われた通りに周りを見れば、仲間達の戦う姿が見えた。
 諦めずにカエルをひたすら追いかける様子がしっかりと。

 決して俺に頼ろうとする訳でもなく。
 
「魔物は強くなったけどさ、それでもきっと勝てるよ。だってみんな、すっごい負けず嫌いだもん」
「つくし……」

 ……ああそうか、俺は思い違いをしていたんだな。
 頼られている、任されているって思い込み過ぎて。
 その責任と、敵を強くさせてしまったという強迫概念に囚われてしまっていた。

 そうだよな、俺だってまだまだ子どもなんだよ。
 プレイヤーみんなを馬鹿にできるような立場なんかじゃない。
 なのにみんなよりちょっと優れているからって、有頂天になり過ぎていた。

 それで一回失敗しただけでこのていたらくだ! 馬鹿か俺は!

 ああちくしょう、情けないなぁもう!
 このまま負けたらそれこそ厚顔無恥じゃないか!

 こうなったらもう何が何でも勝たなきゃ、誰にも顔見せなんかできないぞ!

「――そうだよな。俺も、負けたくない!」
「うん、あたしも! だからさ、勝って帰ろう?」
「ああ、そうだ。みんなで帰るんだ……!」
「だったらね、ケガする事、ケガされる事を恐れないで。あたしが全部、支えるから」
「……わかった。ありがとうな、つくし」

 そうか、つくしは俺の悩みに気付いてくれていたんだな。
 それで俺を勇気づけようとしてくれて。

 そう応えるかのように、つくしの手が俺の胸をそっと優しく撫でてくれた。
 なまじ装備が無いから、触れた感覚が裸で触れ合った時ととても似ている。
 彼女の優しさが伝わる、とても心地良い感触だ。

 ああ、この感触をまた味わいたい。
 またつくしと愛し合いたい。

 そのためにも、俺は――

「だから行ってくるよ。あいつを倒すために」
「うんっ! 彼方がんば!」
「おう!」

 つくしの手が胸から解かれる。
 そうされる中で一歩を踏み出し、素早く暴れるカエルを見定めた。

 俺が持つ力の一端を思い出しつつ、強く拳を握り締めながら。

「そうさ、やるしかないんだ。俺の可能性を、このダンジョンででもすべて引き出さなきゃ、戦い続けられる訳がない!」

 後ろで待ってくれているつくしを、仲間のみんなを守るためにも。

「もう恐れるな俺! ビビって出し惜しみしている場合なんかじゃないぞッ!!」
 
 ゆえに深く踏み込み、拳を肘を肩を引き込み力を溜める。
 そして狙いをも定めるのだ。

 狙うは奴の舐めきったその顔。
 あの憎たらしい緑顔を木っ端みじんに打ち砕いてやろう。



 ――その想いを拳に込め、俺はただ無心で飛び出していた。
 そしてたったその一瞬で、飛び上がっていた奴の顔をグシャリと殴り付けてやったのである。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

魔力ゼロの俺だけが、呪いの装備を『代償なし』で使い放題 ~命を削る魔剣も、俺が持てば『ただのよく切れる剣』~

仙道
ファンタジー
現代日本で天才研究者だった相模登(さがみ のぼる)は、ある日突然、異世界へ転移した。  そこは『スキル』と『魔力』が全てを決める世界。   しかし登には、ステータス画面もなければ、魔力も、スキルも一切存在しなかった。   ただの一般人として迷宮に放り出された彼は、瀕死の女騎士と出会う。彼女の前には、使う者の命を瞬時に吸い尽くす『呪いの魔剣』が落ちていた。   武器はそれしかない。女騎士は絶望していたが、登は平然と魔剣を握りしめる。 「なぜ……生きていられるの?」  登には、剣が対価として要求する魔力は存在しない。故に、魔剣はデメリットなしの『ただのよく切れる剣』として機能した。   これは、世界で唯一「対価」を支払う必要がない登が、呪われた武具を次々と使いこなし、その副作用に苦しむ女騎士やエルフ、聖女を救い出し、無自覚に溺愛されていく物語。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

大国に囲まれた小国の「魔素無し第四王子」戦記(最強部隊を率いて新王国樹立へ)

たぬころまんじゅう
ファンタジー
 小国の第四王子アルス。魔素による身体強化が当たり前の時代に、王族で唯一魔素が無い王子として生まれた彼は、蔑まれる毎日だった。  しかしある日、ひょんなことから無限に湧き出る魔素を身体に取り込んでしまった。その日を境に彼の人生は劇的に変わっていく。  士官学校に入り「戦略」「戦術」「武術」を学び、仲間を集めたアルスは隊を結成。アルス隊が功績を挙げ、軍の中で大きな存在になっていくと様々なことに巻き込まれていく。  領地経営、隣国との戦争、反乱、策略、ガーネット教や3大ギルドによる陰謀にちらつく大国の影。様々な経験を経て「最強部隊」と呼ばれたアルス隊は遂に新王国樹立へ。 異能バトル×神算鬼謀の戦略・戦術バトル! 圧倒的不利な状況を武と知略で切り抜ける! ☆史実に基づいた戦史、宗教史、過去から現代の政治や思想、経済を取り入れて書いた大河ドラマをお楽しみください☆

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

処理中です...