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第101話 脇役だからって舐めたらアカン

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「あ、あ、あああ! 駄肉! 堕肉! ムダ肉があああ!!!」

 突如現れた三人を前に、遥が再び金切り音の叫びを上げる。
 俺と戦う時と違って、容赦ない殺意が溢れ出てくるかのようだ!

 だけど澪奈部長もモモ先輩も匠美さんもひるまない。
 さすが場数を踏んでいるだけあって気乗り違う!

 なら俺も――

「待って、彼方は座ってあたしと回復! お腹を壊さないようにゆっくり治すから!」
「だ、だが俺はそこまで消耗しては――」
「ううん、それだけじゃない。勝つために話し合わなきゃダメなの!」
「話し合う……?」
「そう、そのための秘策は考えてきたよ。それと、もしかしたら遥も助けられるかもしれないから」
「なんだって!? そんな方法があるのか!?」
「ううん、知らない」
「んなっ……き、期待させるなよぉ……」
「それを彼方が見つけるの! そういうのが一番得意なのが彼方でしょ!」
「あ……」
「そのためにみんな、時間稼ぎをしてくれるって。精一杯の準備もしてきた。だから彼方、考えて! 遥を助ける方法を!」

 そうか、そういう事か。
 つくし達はあくまで時間稼ぎと、最終手段のために来てくれたんだ。
 もし遥を倒さざるを得なくなった時にどうにかするために。

 つまりは保険。
 俺が遥を救う手段を見つけるまでの繋ぎ役。

 それを自ら望んで俺達を守ってくれようとしてくれているんだな。
 いつだかの楠のように見捨てて囮にするんじゃなくて。

 これが、本当の友達……親友か。

「……わかった。なら回復を頼む。俺はその間に遥の状態を探ってみるから」
「おっけ!」
「つくし」
「ん?」
「みんなを連れて来てくれて、ありがとう!」
「うん! といっても、みんな勝手に来てくれたんだけどね!」

 なら俺はその親友を守るために全力を尽くそう。
 何でもいい、遥から何かヒントを得るんだ。
 元の姿に戻すなんらかの手段を構築するためにも……!

 ――そう話し込んでいる間に戦いが始まっていた。

 基本の攻めはやはり澪奈部長か。
 細かく跳ねて近寄り、斬撃に合わせて反撃を見舞う。
 確実性は薄いけど、基本に忠実なカウンター戦法だ。

 この戦い方は遥も知らないだろう。
 軒下で成長した後の澪奈部長は目立つ事を優先にしていたからな。

 だからか今は遥が劣勢だ。
 部長の急な戦法の変化に戸惑いを隠せていない。

 ゆえに大振りの切り払い。
 面倒臭いと感じたな。

 だがそこが澪奈部長の付け入る隙になるぞ!

「ざんねぇん!」
「ギィッ!?」

 途端、澪奈部長が目にも止まらぬ速さで空へと向けて突き抜けた。
 しかも遥の一本の縦ロールをバッツリと断ち切りながら。

「地味~なのはわかってっけどさぁ、舐めちゃだめなんよねぇ~!」
「な、なんですってェェェ!?」

 なんたって澪奈部長の強みはあの突撃力。
 あの人が持つ特有スキル〝突貫一杭ストレーター〟は物理法則に囚われない一方向への超速突撃を可能にする。
 その瞬間加速度だけなら俺や遥をも凌駕するんだ。

 そしてなにより、この人の強みはその先にある。

「うっぎぃ!?」

 澪奈部長に誘われて振り向いた遥。
 だがそんなアイツの後頭部が弾け、爆炎が燃え盛る。
 きっと振り向く事を知ってて撃ったんだろうな、抜け目がない。

「クフフ、よそ見したら闇に呑まれるわよ……!」

 さすがモモ先輩、澪奈部長の動きを完全に利用しているぞ。
 二人のコンビネーションは相変わらず息が合い過ぎている!
 もしかして二人ってそういう関係なのかって思えるくらいに!

「こンのクソ肉共があああーーーーーーッッ!!!」
「ひいっ!?」
「モモっちィ!!」
 
 ただ弱点は足が極端に遅い事!
 遥の突貫力を前にすれば距離なんて有って無いようなものだ!

 だがその時こそあの人が活きる!

「そう簡単にやらせるかいなあっ!!」
「ちぃ!? 邪魔ですワ、この堕肉風情があああ!」

 いつも俺達を守ってくれていたあの盾は伊達じゃない。
 モモ先輩を姿ごと覆い隠さんばかりに前進し、遥の突進を防いだ!

「死ね死ねくたばれミンチになァれェェェ!!!!!」
「んなあッ!? なんちゅう圧力やああ!!?」

 くっ、でもやはりレベルが低い!
 両腕の剣と縦ロールの連続攻撃が一瞬にして盾をゴリゴリ削ぎ取っていく!?

「ア、アホンダラァァァ!! 日本最高峰の盾が速攻で屑鉄やんかあああ!!?」
「屑鉄に屑肉ゥゥゥ! さっさとくたばれこンのクソ虫があああ!!」
「こりゃたまらんでぇーーー!!」

 あ、逃げた。
 さすがに盾無しじゃどうしようもないか。

 でもその間にモモ先輩も逃げきる事ができている。充分だ。
 澪奈部長もすでに次の攻撃に備えているぞ!

「けぇどォォォ!」
「ちょ、まッ!?」
「あなた達の動きはもォ見慣れましたわぁ!」

 だが澪奈部長が斬り掛かろうとした瞬間、遥が斬撃で防いだ。
 攻撃のタイミングをもう読まれた!? たった一回見ただけでか!?

 くっ、思っていた以上に順応性が高い。
 その隙に放たれた炎弾も斬り落とされて無為になってしまった。

 しかももう盾はいない!
 つまりそれは、モモ先輩がフリーになってしまったという事だ!

「あっはぁ! 今度こそモモせんぱぁイ! ディナー行きまっしぐらですワァァァ!」
「あっ……」

 遥が高速でモモ先輩との距離を詰めていく。
 それも自慢の縦ロールを向け構えながらに。

 もうダメだ、止められない!

「アカンで遥ァ、ワシの事忘れんでなぁ?」
「ッ!?」

 しかしその途端、跳ね飛んでいた遥が突如として跳ね飛ばされた。
 三メートル近い巨体が「ゴズンッ!」という激音と共に。

 そんな遥がいた場所には匠美さんが立っていた。
 それも壊れたはずの盾に新品のごとき輝きを纏わせながら。

「なっはっはーっ! ワシ、ふっかぁーつっ!」
「なン、でずっでぇぇぇ!?」

 あ、いや、違う。あれはまぎれもなく新品だ!
 あらかじめ持ってきていた替えの盾に交換したんだ!
 だってすぐ近くに屑鉄と化した盾が落ちているし!

 そして匠美さんのスキル〝激震轟進グランドダッシャー〟はシールドチャージを強化するもの。
 その威力と、その瞬間の盾強度を一時的に上げるんだ。

 それなら遥相手だろうとああして吹き飛ばす事も可能なのか!

「あんま肉肉肉って舐めんほうがええよ。ワシら、これでもお前並みにはがんばって来とるさかい、油断するとまぁ死ぬで?」
「そぉそぉ、あーしらも長年雑魚やってっから知らないかもだけどさぁ?」
「フフフ、人生の先輩の意地ってものを見せてあげるわ、闇堕ちするほどにね……!」
「グッギィィィィ!! ごンのォォォただ熟しただけのォ腐肉の分際でェェェ!!!」

 すごい、すごいぞ。
 あの三人、すでに息ピッタリじゃないか!
 しっかりと遥を留めきれている……!

 これなら充分に時間を稼いでくれそうだ。
 よし、これならきっと……!
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