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第109話 今まで本当にありがとう
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『まったく……あなた達はホント、どこまでいっても仲良しですわね』
こんな声が聞こえてからが始まりだった。
それでふと気付いて見上げれば遥の姿があって。
『これでは本当に付け入る隙なんてとてもありませんわ。なのにどうしてあなたなんて好きになってしまったのかしら』
「遥……」
隣にはなぜかつくしもいた。
ただなんだろう、俺達のいる場所がまるで現実じゃないみたいだ。
ぼんやりと虚ろで、でも間違いなく俺達の放った光の中にいる事はわかる。
そんな中で遥は「フフッ」と笑い、俺達に恨み節をぶつけてくる。
なんだか俺達が恥ずかしくなってしまうような事を平気で。
『でも後悔はありませんわ。だってわたくし、あなた達とお友達になれたんですもの。ずっとずっと願っていた、心を許せるお友達……』
「そうだね、遥はもう親友だよ! だから――」
『そう。だからわたくしの願いはもう叶いましたの』
「何を言っているんだお前は? 叶ったならそれで終わりみたいな言い方をするなよ! だってこれからだろ!?」
でも俺達のこの言葉に対し、遥は首を横に振っていた。
『……そうですわね、これからなのでしょう。ですから次こそその続きを歩みたい、そう願わずにはいられません』
遥が何を言いたいのかはわからない。
微笑んでくれているのに、目は笑っているようには見えないんだ。
まるで悲しんでいるかのようにまぶたが震えていて。
「だったら行こう! 帰るんだ、みんなと一緒に!」
「そうだよ、みんな待ってる! ドブはるさんを待ってるんだよ!」
それを見かねたから俺もつくしもただひたすら訴えた。
遥の復活を心から祈って、願って!
……それなのに、あいつの不思議な微笑みは消えなかった。
『ええ、そうですわね。帰りましょう。あるべき形で』
「あるべき、形……?」
『つくし、あなたには本当に感謝してもしきれない。一緒にお風呂に入ってくれた事、わたくしとっても嬉しかった!』
「遥……!?」
『彼方、ごめんなさい。幼い頃にあなたに出会っていたのに忘れてしまって。酷い事を言ってしまって』
「馬鹿野郎! こんな時に何言ってんだお前っ!!」
『だけど、あなた達と会えて本当に良かった。わたくしを普通の人にしてくれて、本当に本当に嬉しかったの!』
声が詰まる。
止めたくても声が出せない。
遥が涙を流していても、指一本さえ差し出せない!
『だから、今まで本当に、ありがとう……!』
そして遥のこの一言を最後に、周囲の光が花びらのように散っていく。
俺達だけを置いて、遥の微笑む姿ごと。
――そうして俺達は、膝を着いて座っていた。
気付けば、目の前で魔物遥だった何かが地面に沈んでいる。
まるで水銀のようにドロリと溶け、もはや原型など残ってはいない。
つくしももう人間にまで戻っていた。
元に戻す事に悩んでいたのがバカバカしくなるくらいにあっけなく。
とはいえつくし自身もなぜ戻っているのかわからないようだが。
「あ、彼方、遥は……?」
「そ、そうだ、あいつはまだ、死んだって決まった訳じゃない!」
しかしもうそんな事なんてどうでもいい。
俺達のやった事が間違っていないのなら、遥はきっと助かっているはずなんだ!
今の光景がたとえ幻想でも現実でも知った事じゃない!
だから俺達は即座に魔物遥の死骸に手を突っ込み、一心不乱に掻き分ける。
もしかしたらこの中にまだ埋まっているかもしれないと踏んで。
「っ!? これは!?」
「いたの!?」
それで腰部の塊の中を探ってみたら、それはたしかにあった。
淡く輝く球体のような何かがしっかりと。
それなので俺達はすぐに腰部を掻き分け、ぬぐい、その球体を持ち上げる。
それなりに大きい。両腕でやっと持ち上げられる大きさだ。
それでいて中に液体のようなものが入っている。
そして、その中には見覚えのある少女の姿も。
「これって……女の子?」
「ああ。それにこの容姿は見覚えがあるよ。この子は……遥だ」
「えっ!?」
ただし小学生くらいの小さな子だ。
俺の記憶にあるよりも少しだけ成長しているが、雰囲気は当時とそっくり。
ブロンドの細い髪に小顔という白人の母親の特徴はそのままで。
するといきなりそんな球体の表皮が破れ、溶けて中の水が流れ出す。
それで少女の遥が俺の腕の中へ収まる事に。
「……えほっ!! げほっごほっ!!」
「い、生きてる! 生きてるよこの子!」
「あ、ああ……」
「う、ううん……ここ、どこ?」
少女遥自体はなんの問題もなさそうだ。
ちゃんと意識もあるし、次第に目も見開き始めてきた。
「……!? あなただれですか!」
「えっ?」
「は、離して! 助けてお父さま! お母さまーっ!」
「お、おい!?」
なんだ、俺の事を覚えていない?
しかも暴れて、このままじゃ手が付けられないぞ!?
まるで昔のままじゃないか!?
――だったら。
「待って、待ってくれ! 俺達は君を助けに来たんだ!」
「……え?」
「君は寝ている間に悪い奴にさらわれてしまって。それで今やっと助ける事ができたんだ。ほ、本当の事だよ」
「まぁ、本当ですの!?」
「う、うん」
嘘は言っていない。
色々と紆余曲折はあるけれど、これは嘘じゃないんだ。
そう、これは彼女にとっての、悪い夢だったんだよ。
「でしたらあなたはわたくしのナイト様!?」
「え!? あ、いや、そういう訳ではないかなーあははは……」
「あたし達が助けにきたんだよー!」
「そう、ここにいるみんながナイトさ」
「あらそうですの。白馬の王子様が助けに来てくれたのかと思いましたわ。残念」
まったく、この性格は相変わらずだな。
……いや、これが普通なんだ。今までがおかしかっただけで。
そう、ドブ川遥なんて者は最初から存在しないんだ。
あれは魔物とダンジョンが造り出した虚像なのだから。
俺達の友達だった遥は、もう……。
こんな声が聞こえてからが始まりだった。
それでふと気付いて見上げれば遥の姿があって。
『これでは本当に付け入る隙なんてとてもありませんわ。なのにどうしてあなたなんて好きになってしまったのかしら』
「遥……」
隣にはなぜかつくしもいた。
ただなんだろう、俺達のいる場所がまるで現実じゃないみたいだ。
ぼんやりと虚ろで、でも間違いなく俺達の放った光の中にいる事はわかる。
そんな中で遥は「フフッ」と笑い、俺達に恨み節をぶつけてくる。
なんだか俺達が恥ずかしくなってしまうような事を平気で。
『でも後悔はありませんわ。だってわたくし、あなた達とお友達になれたんですもの。ずっとずっと願っていた、心を許せるお友達……』
「そうだね、遥はもう親友だよ! だから――」
『そう。だからわたくしの願いはもう叶いましたの』
「何を言っているんだお前は? 叶ったならそれで終わりみたいな言い方をするなよ! だってこれからだろ!?」
でも俺達のこの言葉に対し、遥は首を横に振っていた。
『……そうですわね、これからなのでしょう。ですから次こそその続きを歩みたい、そう願わずにはいられません』
遥が何を言いたいのかはわからない。
微笑んでくれているのに、目は笑っているようには見えないんだ。
まるで悲しんでいるかのようにまぶたが震えていて。
「だったら行こう! 帰るんだ、みんなと一緒に!」
「そうだよ、みんな待ってる! ドブはるさんを待ってるんだよ!」
それを見かねたから俺もつくしもただひたすら訴えた。
遥の復活を心から祈って、願って!
……それなのに、あいつの不思議な微笑みは消えなかった。
『ええ、そうですわね。帰りましょう。あるべき形で』
「あるべき、形……?」
『つくし、あなたには本当に感謝してもしきれない。一緒にお風呂に入ってくれた事、わたくしとっても嬉しかった!』
「遥……!?」
『彼方、ごめんなさい。幼い頃にあなたに出会っていたのに忘れてしまって。酷い事を言ってしまって』
「馬鹿野郎! こんな時に何言ってんだお前っ!!」
『だけど、あなた達と会えて本当に良かった。わたくしを普通の人にしてくれて、本当に本当に嬉しかったの!』
声が詰まる。
止めたくても声が出せない。
遥が涙を流していても、指一本さえ差し出せない!
『だから、今まで本当に、ありがとう……!』
そして遥のこの一言を最後に、周囲の光が花びらのように散っていく。
俺達だけを置いて、遥の微笑む姿ごと。
――そうして俺達は、膝を着いて座っていた。
気付けば、目の前で魔物遥だった何かが地面に沈んでいる。
まるで水銀のようにドロリと溶け、もはや原型など残ってはいない。
つくしももう人間にまで戻っていた。
元に戻す事に悩んでいたのがバカバカしくなるくらいにあっけなく。
とはいえつくし自身もなぜ戻っているのかわからないようだが。
「あ、彼方、遥は……?」
「そ、そうだ、あいつはまだ、死んだって決まった訳じゃない!」
しかしもうそんな事なんてどうでもいい。
俺達のやった事が間違っていないのなら、遥はきっと助かっているはずなんだ!
今の光景がたとえ幻想でも現実でも知った事じゃない!
だから俺達は即座に魔物遥の死骸に手を突っ込み、一心不乱に掻き分ける。
もしかしたらこの中にまだ埋まっているかもしれないと踏んで。
「っ!? これは!?」
「いたの!?」
それで腰部の塊の中を探ってみたら、それはたしかにあった。
淡く輝く球体のような何かがしっかりと。
それなので俺達はすぐに腰部を掻き分け、ぬぐい、その球体を持ち上げる。
それなりに大きい。両腕でやっと持ち上げられる大きさだ。
それでいて中に液体のようなものが入っている。
そして、その中には見覚えのある少女の姿も。
「これって……女の子?」
「ああ。それにこの容姿は見覚えがあるよ。この子は……遥だ」
「えっ!?」
ただし小学生くらいの小さな子だ。
俺の記憶にあるよりも少しだけ成長しているが、雰囲気は当時とそっくり。
ブロンドの細い髪に小顔という白人の母親の特徴はそのままで。
するといきなりそんな球体の表皮が破れ、溶けて中の水が流れ出す。
それで少女の遥が俺の腕の中へ収まる事に。
「……えほっ!! げほっごほっ!!」
「い、生きてる! 生きてるよこの子!」
「あ、ああ……」
「う、ううん……ここ、どこ?」
少女遥自体はなんの問題もなさそうだ。
ちゃんと意識もあるし、次第に目も見開き始めてきた。
「……!? あなただれですか!」
「えっ?」
「は、離して! 助けてお父さま! お母さまーっ!」
「お、おい!?」
なんだ、俺の事を覚えていない?
しかも暴れて、このままじゃ手が付けられないぞ!?
まるで昔のままじゃないか!?
――だったら。
「待って、待ってくれ! 俺達は君を助けに来たんだ!」
「……え?」
「君は寝ている間に悪い奴にさらわれてしまって。それで今やっと助ける事ができたんだ。ほ、本当の事だよ」
「まぁ、本当ですの!?」
「う、うん」
嘘は言っていない。
色々と紆余曲折はあるけれど、これは嘘じゃないんだ。
そう、これは彼女にとっての、悪い夢だったんだよ。
「でしたらあなたはわたくしのナイト様!?」
「え!? あ、いや、そういう訳ではないかなーあははは……」
「あたし達が助けにきたんだよー!」
「そう、ここにいるみんながナイトさ」
「あらそうですの。白馬の王子様が助けに来てくれたのかと思いましたわ。残念」
まったく、この性格は相変わらずだな。
……いや、これが普通なんだ。今までがおかしかっただけで。
そう、ドブ川遥なんて者は最初から存在しないんだ。
あれは魔物とダンジョンが造り出した虚像なのだから。
俺達の友達だった遥は、もう……。
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