実家が先行実装ダンジョンだった俺、同級生の女子に誘われたので今度は正式実装版で無双をやってみた。え、配信された攻略動画がバズってるって!?

日奈 うさぎ

文字の大きさ
110 / 126

第110話 心と体が満身創痍での帰還

しおりを挟む
 きっと遥は、自分が自分でない事に薄々気付いていたのかもしれない。
 そしてすべてを元通りにするためにと、俺達に託したんだ。

「わたくしはもう小学四年生ですの! こどもあつかいはこまりますわ!」
「そ、そぉ~! ごめんねぇ~……!」
「ったく、雰囲気がほんま会った時のままやな。小生意気な遥復活やで」
「でも変な話よね、あの時の記憶も無いなんて」

 それで帰って来たのは小さな遥。
 ダンジョンに入る前当時の、戦う事さえ知らない無垢な少女だった。

 どうしてそんな遥が出てきたのかはわからない。
 もしかしたらダンジョンの仕組みが何か働いたのかもしれないが。

 ……でも、これで良かったんだ。
 遥はもうダンジョンとは関係なくなったのだから。
 もうダンジョンなんてものは知らなくていいんだよ。

 これから普通の女の子として育てば、ただそれだけで。

「そういえばさーダンジョンコアはー?」
「わからん。魔物遥と一緒に潰れたんやろ。ならあのブッ叩きの時に崩壊の合図が出たのかもしらん」
「なら~とっとと出た方がいいかもねぇ?」
「フフフ、賛成だわ。こんな所もう早く出たい」
「そうですね、僕も緊張が解けたせいでもう足がガクガクで……」

 それに悠長にもしていられなさそうだ。
 起きたばかりの遥にかまけてて時間も無駄に使ってしまったし。

 それなので、俺達はすぐさま急いでダンジョンを出た。
 遥もその間はしっかり黙って掴まってくれていたから、面倒がなくて助かったな。

 なのだけど。

「あっ、プレイヤー達が戻って来たぞ!」
「間宮さん! 司条遥さんに一体何があったんですか!?」
「今回の一件はどういう事か説明してもらえませんか!?」

 一方のダンジョンの外はといえば大騒ぎの真っただ中だ。
 俺達が出ようとすればマスコミやビューチューバーがこぞって集まってきた。
 なんだか侵入時よりも増えている気がするんだが!?

 ……まぁそれも仕方ないか。
 今回の一件がかなりの難易度である上に、遥があんなことになったから。
 視聴率や再生数を求めて周辺地域からも集まってきていたんだろう。

 でも、それにしたって節操がない。
 こっちは全裸の少女を抱えているんだぞ!?

「みなさん下がって! 下がってぇ!」

 しかしすかさず自衛隊員達が押しのけ、道を作ってくれた。
 あまりにギャラリーの人数が多いから全員死に物狂いだが助かった。

 それでやっと俺達もダンジョンから脱出でき、作られた道を進む。

 するとその途端、今度は正面先で異常が起きた。
 なんと二人ほどの男が自衛隊の包囲を突破していたのだ。

 しかもそんな二人の手にはどちらにもカメラが。
 あの服装に雰囲気はおそらく一般ビューチューバーだろう。
 そんな奴らが俺達めがけて走り込んでくる!?

 ――が、その二人は匠美さんと凜さんによって即座に組み伏せられる事に。

「おうおう美少女ポルノでも撮ろうってなら容赦せんぞオラァ!」
「少しは常識ってものをわきまえなさい!」
「「いでででで!!!!!」」

 さらにはいつの間にかモモ先輩が二人のカメラを取り上げていて。

「ククク、迷惑系には存分な裁きが必要よね。闇に墜ちればいいわ」

 そんなカメラをポイっと放り投げれば、つくしがどこからともなく持ってきていた棒でめった打ちである。容赦ない。

「あぉおおおおおーーーーーー!!!!!」
「「「でたーーーっ! つくしちゃんの生鬼叩きィィィ!!!!!」」」
「「「モラルの無い奴に天誅ゥゥゥーーーーーー!!!!!」」」

 ギャラリーの中にはつくしのファンクラブ軍団もいたらしい。
 ただし彼らは少し離れた所の高台から見下ろすようにして応援してくれている。

 ……と、超大盛り上がりの中で制裁が下されたので、二人の迷惑系チューバーがガクリと意気消沈する。自業自得だな。

 ついでにそんな騒ぎの中で自衛隊員の一人が迷彩服を渡してくれた。
 おかげで遥の体を隠す事ができたぞ。ありがとうございます!

 それでギャラリーを抜けると、遠くにバスが見えた。
 委員会のおっさんも指差しているし、「ひとまずあれに乗って」という事かな。
 用意してくれたのは嬉しいけど、「それでいいのか」と複雑な心境だ。

 まぁ仕方ないよな。
 遥は勘当された身で、もう身寄りが無い。
 だったら俺達が連れて帰って面倒を見るしかないんだから。

 ――しかしそう思いふけっていた時、ふと場に響き始めた音に気付く。
 それで思わず見上げてみれば、頭上はるか先にヘリコプターが飛んでいた。

 でも待て、よく見ればこっちに向かって降りてきているぞ!?
 それも俺達とバスの間にある空地へと向けて!

 うっ、あの機体に書かれているのは……司条グループだって!?
 じゃあまさか、あれに遥の関係者が乗っているのか!?
 なら一体誰が――

「あっ!」
「え?」
「お父さまだ! お父さまーっ!」

 でも機体が降り立って中から人が出てきた時、遥がこう声を上げる。

 そうすることでやっと気付いたのだ。
 俺達の元へと歩み寄って来る人物が司条遥の父親なのだと。
 
 そして日本の誇る大財閥の統括者が直々にやってきたのだと。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

処理中です...