実家が先行実装ダンジョンだった俺、同級生の女子に誘われたので今度は正式実装版で無双をやってみた。え、配信された攻略動画がバズってるって!?

日奈 うさぎ

文字の大きさ
126 / 126

第126話 大切な事に気付けた俺はこれからも戦い続けられる

しおりを挟む
 やってきたのは宝春学園の近くにあるショッピングモール。
 生徒達もよく利用する近場で一番大規模な場所だ。
 俺も昔に一度だけ親に連れて行ってもらった事があるくらいの。

 あの時は少しビクビクしながらだったから記憶は薄い。
 だけど今度は何もやましい事がないから堂々と行ける……と思う。

 とはいえ今日は遥の服を買うというしっかりした目的もある。
 ならばたとえ何があろうと遂行せねばならないのだ。

「遥の服ってさーやっぱベビー服売り場とかに行った方がいいのかなー?」
「そうかもしれな――あ、でも待てよ、この構図って……」

 でも俺はモール構内へと入って初めて気付く。
 俺とつくし、そして遥を連れた今の状況でベビー用品店へと赴く危険性に。

 俺もつくしも私服で、おまけに遥はデフォルメ姿だからぱっと見が幼児だ。
 しかもここまで二人で遥をぶら下げながら手を繋いで歩いてきた。

 だとするとこれ、もう見た目が恋人じゃなくて親子なのでは……?

 しかもそこでベビー用品店にでも行ってみろ。
 周りから「あの二人、もう子どもがいるわ!」なんて言われたら最悪だ!
 世間の信頼がまたガクリと落ちて大炎上待ったなしじゃないかぁぁぁ!!!!!

「あ、見て! あれって間宮彼方君じゃない?」
「ほんとだ、つくしちゃんも一緒じゃない~!」

 ――しまった! 見つかった!?
 まずいぞ、このままでは俺達はスキャンダルに飲み込まれて……

「いつも見てるわよ! 応援してるから! あ、攻略もプライベートも!」
「お似合いねーお二人ともぉ!」
「だからって学校卒業までハメ外し過ぎるなよ~!?」

 あれ? でもみんな応援してくれている?
 それも俺達の事に気付いた人達がこぞって。

「この間の外での戦いすごかった! 感動しちゃった!」
「次のダンジョンの動画、楽しみにしてるからなー!」
「その調子で全部のダンジョンぶっ壊してくれーっ!」

 誰しも罵倒なんてする事もなく、二人でいても関係無く。
 まるで祝福してくれているかのようにみんな笑顔で。

 予想外だった。
 気付かなかった。

 俺をとりまく環境が、想像以上にずっとずっと優しかったんだって事に。

「みんな~あっりがとねぇ~~~! あたし達もっと頑張っちゃうから~~~!」
「「「おおーっ!」」」

 そんな優しさに触れられたからか、つくしのテンションがすごく高い。
 遥をビュンビュンと振り回すほどに元気よくみんなに応えている。

「デデッデデスワァァァァァァーーーーーーッ!!!」
「あー……遥が飛んでいっちゃったよ」

 おまけに遥がつくしの手からすっぽ抜け、モール構内の宙を舞う事に。
 そんな遥を、まだ幼稚園児くらいの女の子がポスンとキャッチだ。

 女の子、突然のサプライズになんだかとっても嬉しそう。
 ぶわわって感じで笑みを込み上げさせていた。

「マ、ママーっ! この子ほしいー!」
「え、ええ!?」
「デ、デスワーッ!?」

 遥も慌てすぎてキノコ遥としての地が出てしまっている。
 それでもってギュッと抱きしめられてすごく苦し――嬉しそうだ!

 そう思う事にした。

「デデェェェーーーーーー!?!?」
「み、みよちゃん、その子はあの人達のもので……」
「あ、いいよいいよー! キノはるさんしばらく貸してあげるから遊んでおいでー!」
「おいおい、いいのかよ……」

 しかもつくしがこんな事言っちゃったので、女の子も大喜びだ。
 周りの人達が笑いを上げる中、他の子ども達と共に奥へと歩いていってしまった。

 ……まぁいいか。
 遥でもその気になればつくしの家までなら歩いて帰れるだろうし。
 いくら小さいとはいえ、精神は高校生のままだからな!

「あーでもでも、あたし達の目的なくなっちゃったねぇ」
「じゃあ二人だけで適当になんか見繕うとか?」
「えーそれってもっとヤバいってぇ~!」
「あ~やっぱりつくしもそう思ってた?」
「当然だよぉー! さすがにそれは変に思われるからダメー!」
「あははっ!」

 ――そうだよな、俺達はまだ高校生なんだ。
 まだまだ発展途上で、知らない事だっていっぱいある。

 それなのに何も知ろうとしないで俺は恐れてしまっていた。
 昔の思い出に引っ張られて、そればかり信じてしまって。

 でも怖がることなんて無かったんだよな。
 だって俺達の事を見てこうやって応援してくれる人はいっぱいいるんだから。
 それはきっと俺が活躍していようがいまいが関係ないんだと思う。

 今やっとそう思い知らされた気がする。
 今まではずっと狭い世界を見続けていただけなんだって。

 つくしと出会った事で、俺の見える世界は一気に広まったんだってさ。

「じゃあさ、あたし達が欲しいモノでも探しにいこっか?」
「うん、そうだね。せっかくだから記念に何か持って帰ろう」
「ええ~なんの記念?」
「んー……つくしとの出会いの大切さに気付いた記念、かな?」
「もぉーーーなにそれぇ~~~! いっひひひっ!」

 そう互いにわかり合えたから、俺達はこうして手を握り合える。

 そしてきっとこれからも一緒に歩んでいくのだろう。
 買い物だけじゃなく高校生活も、ダンジョンも、先の人生も。

 そうしていきたいと思えるくらいに、彼女の事が好きだから。



 だから俺は、理不尽を跳ねのけて自分らしさをまかり通して行こうと思う。




―――――――――――――――――――
 この物語はここで一旦の幕引きとさせていただきます。
 120余話のお付き合い、どうもありがとうございました!

 しかしご縁がありましたら続く事もあり得ます。
 その際は変わらぬご愛顧をよろしくお願いいたしますね!

 作者より
しおりを挟む
感想 3

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

いづみやしゃ

縦ロールさん1000万一ヶ月で使い切るとは……恐ろしい子ッ
続きが楽しみです〜

2023.08.09 日奈 うさぎ

楽しみいただきました°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°ありがとうございます!

いくら大富豪の司条家でも生活費で一人頭1000万はいかないそうです。
父親が割と倹約家ですので、想像するような上流階級の食事はあまりとらないとか。
でも遥さんにはそれが高級料理に思えていたのでしょうね……(°ω°)その勘違いの末の過ちでした

すなわち、アホの子なのですッ!(真理

解除
るば
2023.07.25 るば

投稿お疲れ様です<(_ _)>
小斧装備から防具姿連想すると上半身裸の戦士が出てくるのは自分だけか…

2023.07.25 日奈 うさぎ

応援ありがとうございます(๑•̀ㅂ•́)و✧
その連想はきっと間違っていませんね、他にも赤い鎧とか色々想像の幅が大きそう!(°ω°)

解除
huck
2023.07.22 huck

第4話 息子が書類に判子欲しい、っていうと二つ返事で「血判でいいかしら」っていう母親、かなりぶっとんでていいねえ😃

2023.07.22 日奈 うさぎ

ええ、普通とどこか違うって感じがにじみ出ていますよね!(°ω°)b

解除

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。