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第125話 友達としてショッピングに行こう!

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 楠との戦いを乗り越え、俺達の生活にいったんの平和が訪れた。
 あれからも厳しいダンジョンも現れておらず、トップス案件もきていない。

 とはいえ立て続きの魔物化事件のせいで、世間のダンジョンに対する目がより一層厳しくなったのは確か。
 その余波はプレイヤー界にも著しい影響を与える事になる。

 まず、匠美さんと凜さんの引退が決定した。
 その理由はハタチに近いのと、チーム維持が厳しくなったから。
 どうやら魔物化問題の波及でメンバーがごっそり引退を決めたそうな。
 それなので二人も合わせて引退を決意したという話だ。

 また他にも麗聖学院などトップスの半数もが解散を決定。
 おかげで現トップオブトップスは俺達を含めてたった四チームとなってしまった。
 もちろん下位が繰り上がる訳だが、引退ラッシュが相次いでいるから安定するのはまだまだ先だろうな。

 ただ、なにも悪い事ばかりではない。

 なんと魔物化因子が若返りの可能性を見せた事で、医学界に大きな衝撃を与えたのだ。
 もしかしたら今後の研究次第では、魔物化因子を利用して若返りの薬が作れるかもしれない。
 そうなれば人類の発展に大きな影響を及ぼす事になるだろう。
 そういう意味でダンジョンが資源として再注目されたという訳だ。

 あとはダンジョン攻略報酬が少しだけど引き上げられた事か。
 ダンジョン攻略委員会の役員がごっそり変わったおかげで。

 それというのもあの委員会役員のおっさん、裏では運営資金のピンハネを随分とやらかしていたらしいとのこと。
 それを杉浦三佐達が調査させ、ついに悪事が明るみになったそうだ。
 おかげさまで政治問題にも発展、おっさんは見事に責任を取らされていた。
 後任はしっかりした人らしいし、今度は信じたい所だな。

 ……とまぁそんな記事を読み、世間を勉強中。
 あまりに夢中になってしまったのでトイレにまで新聞を持ち込んでしまった。

 くくく、うちはトイレだけはしっかり洋式なのだ……!
 だから座りながら新聞を読む事など造作もないぞ!
 改装工事は父さんがやった訳だけど。

「いつまでトイレに籠っているのです? 尻が裂けても文句言えませんわよ」
「ちょ、遥!? いきなり入って来ないで!?」

 ただおちおち落ち着いてもいられない事もある。
 遥がうちに住み始めた事で随分と騒がしくなったから。

「安心なさい、今はもうあなたのキノコになんてなんの感情も沸きませんわ」
「そういうものなの!? 俺は嫌だけど!?」
「ふふっ、それはきっとわたくしもキノコ類になったから、という事なのでしょうね」
「あのそれ、自分も卑猥物だって言っているのと同じなんだけど気付いてる?」

 遥の図々しさは小さくなっても相変わらずだ。
 こうして平気でトイレに乗り込んできては扉を開けたまま話し込んでくるし。
 
「むしろこの魔物の体になった事でコン様のお言葉が聞こえますの! ですのでわたくし、あの方に夢中なのですわ!」
「意外だよその組み合わせ」
『ボクは嫌だ! 嫌な匂いはなくなったけどしつこくて胸がアイロン台でキノコな女なんてまったく好みじゃないよ!』
「まぁお照れになってぇ! 待ってくださいませーっ!」
『う、うわ! こっち来るなーーーっ!!』
「こらぁー! コン、遥! ふすまに穴を開けちゃダメでしょおーーーーーーっ!!!!」
「……頭が痛い」

 にぎやかなのはいいけど常々なのは勘弁してほしい。
 これならいっそつくしの家に避難した方がまだいいかもしんないな。

 そういえばもうすぐ冬休み前の期末テストもあるし、勉強しないと。
 
 ならいっそ復習も兼ねてつくしの家に遊びに行こうかな。
 どうせまた勉強に付き合ってあげないとサボってばかりいそうだし。

「さて、と……」

 そう思い立ったのだし、今日は俺の方からつくしの家に遊びに行くとしよう。

 それなのでトイレを済ませ、軽く準備を済ませる。
 それでさっそくと軒下を越えようとしたのだけど。

 俺の気配に気付いたのか、いつの間にか遥が玄関に立ち塞がっていた。

「わたくしも行きますわ。どうせつくしの所に行くのでしょう?」
「バレたか……ま、どうせお前も勉強が必要だし、構わないよ」

 まぁ別に隠すような事じゃない。
 それに勉強を一緒に教えるなら一石二鳥というものだ。
 本当はつくしと二人きりの方がいいんだが、今はそこにこだわっていないし。

 彼女とは望んだ時に二人きりとなれるだろうから。

 そんな訳で遥を連れてつくしの家へと赴く事に。
 今日は土曜日だし、今日はたしかバイトもしていなかったはずだからいるはず。

 そう信じて軒下に突入したのだが。

「……おかしい、魔物がいない?」
「妙ですわね。お父さまかお母さまでもお通りになられている?」

 途中まで行っても魔物にまったく出会わない。
 誰かが攻略中だと途中参戦になるから珍しい事ではないけれど。

 ……やはりだ。途中から魔物の死骸が転がっている。
 消滅する前に辿り着けたという事は誰かが進行中らしい。

 しかしよく見たらこの潰れ痕……まさかな。
 そう疑念を持ちながらとうとう中ボスエリアへと辿り着いたのだが。

「あ、彼方だ! 彼方ーっ!」
「おぉまさかお前から来るとは思わなかったぞ間宮彼方よ、フハハハ!」

 いたのはやっぱりつくしだった。
 しかもなんか死の魔王ダルグスと一緒に正座してお茶をすすってるんだけど!?

「何やってのつくし!? なにダルグスとお茶してんの!?」
「いやーダルグスさん意外と話が分かる人でさー」
「ヌハハハ! そうだぞ、ワシは物わかりが良いのだ!」

 つかダルグス、お茶なんか飲めるのかよ!? 骨だけのくせに!?

「いやわかるよ!? 実際、日本語教えたの俺達だし!? でも即死させられるよ!?」
「へー! だからダルグスさんって会話できるんだー」
「うむ。かつて彼方がまだ幼き頃ひらがなの本を落として行ったのがきっかけであったのう!」
「やめて! 俺の幼少期の話を勝手に語らないで!?」
「わたくしもそれには興味がありますわね」

 くそっ、このままじゃダルグスに俺のすべてを語られてしまう!
 唯一話のわかる相手だからと出会うたびに色々と話したけど、それがアダとなったか!

 なので奴の頭蓋を即座に破壊してやった。

「ぐああああ!!!」
「「あーっ!」」
「おのれ間宮彼方! 次会う時こそは貴様の赤裸々な事実を語ってやるぅ……」
「わかった! また来るねダルグスさん!」
「待ってるぞぉつくしちゃぁん……」
「ほんとやめて?」

 せめて個人情報くらいは自分から語らせてほしい。

 という訳で中ボスエリアも平和になったので改めてつくしと対面だ。
 彼女もどうやら俺が来るとは思ってなかったらしく、嬉しそうに手を振ってくれている。

「いやー奇遇ですなーあたしも彼方に会いに行こうかなって思って!」
「なぜすでに俺がつくしに会いに行こうとしていると気付いているのか」
「愛かな?」
「これが女の勘ってやつなのか……まぁいっか」

 どうやらつくしも俺の家に向かっていたようだ。
 一方的な以心伝心で説明の手間が省けて良かったとは思う。

「どうせ勉強していないだろうと思って行こうと思っていたんだよ」
「えー休みの日くらいは休みたいー!」
「ロクにテストの点が取れてない奴がよく言うよ」
「あたしはねー彼方と買い物行こうかなって思って来たんだ!」

 ……話を逸らしたな。まぁいいや。

「せっかくだかんねー、三人で買い物でも行こうかなって! ショッピングショッピングゥー!」
「まぁ! 友達とのショッピングは初めてですわ!」
「でしょお!? 遥もずっと裸(?)のままなんだし、せっかくだから行こう行こう!」

 しかしつくしがまさかこんな企画を考えていたなんてな。

 それにこう言われてみれば、たしかに遥はずっと会ったままの姿だ。
 様相は宝春学園の制服姿っぽくはあるけど、よく見ると染色されただけの状態なんだよね、これ。
 なので服上からでも撫でるとキノコらしいかさついた触感が体感できるのだ。

 ちなみにスカートの中はキノコの笠になっています。
 一度うっかり見てしまってちょっとドン引きしました。

 ……そんな正体を隠すためにも服はあってもいいよな。
 なら俺も買い物には賛成したい。



 ――と、そんな訳で俺達はこのあと買い物へと出かける事になった。
 つくしとのショッピングは久しぶりだから、そういう意味でも楽しみだ。
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