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第八節「心の色 人の形 力の先」
~炎の弾丸、暗き丘を朱に染めて~
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四国地方、徳島県。
四国島の東端半分を絞める日本自治体の一つである。
関西と陸路で繋がっており、その役目を担う大鳴門橋の壮観さは目を見張るものがある。
かの鳴門の渦潮もここで見る事ができ、観光スポットの一つとしても有名だ。
都市部もその橋を基礎に賑わっていて、その発展度は他都市にも負けない。
ただし街を外れて中腹部へと赴けば、丘や山の連なる高地地帯がその姿を現す事となる。
季節柄、斜面一面が緑に覆われていて。
丘部にも畑や田が目立ち、都市部とのギャップが実に激しい。
【オンズ族】の拠点はその山林部に小さく存在している。
畑に囲まれた緩い傾斜と舗装道路を抜けていけば、彼等の住む林がすぐにお目見えだ。
転移範囲がそこまで大きく無かったのだろう。
パッと見では変化した事がわからない程である。
もしかしたら『あちら側』では林じゃなかったのかもしれない。
ただその人数規模は油断出来ない程に多く、その数おおよそ一〇〇人前後。
どうやら密集していた所で転移に巻き込まれたらしい。
しかしここで敢えて一つの疑問をぶつけてみるとしよう。
そんな人数を相手に、自衛隊は何故突破を許してしまったのだろうか。
その答えはこうだ。
相手の活動時間は夜間。
人間が監視しきれない暗闇の中を、【オンズ族】は自由自在に走り回る事が出来る。
おまけに山林部の木々がセンサーなども阻害、その動向を捉える事は困難を極める一方だ。
例え罠を設置しようとも、戦闘のプロである彼等がそんな人為的な物を見抜けない訳が無い。
その為、彼等の流出はどうしても防げず。
しかも流出する度に防衛範囲を見直し、捜索を余儀なくされる。
つまり人員は戦闘ではなく、周辺地域の防御に全力を注がなければならないのだ。
故に、今回は自衛隊のサポートが一切受けられない。
勇とちゃなは二人だけで戦わなければならないのである。
とはいえ、そのお陰で敵勢力の半数が拠点から離れている。
本隊と斥候部隊の間を縫う様に攻めれば、ザサブの時の様な乱戦になる事は無い。
だからこそ狙い目は今。
二人がそこを狙ってひた走り行く。
彼等を率いる王を止める為に。
一方その頃、【オンズ族】が侵攻した農村部では。
「お、こいつ見ろよ。 なかなか面白そうな物見つけたぞ!」
無人となった一軒屋で、物品を物色する彼等の兵士達の姿が。
土足で踏み躙る辺り、そういう文化も礼節も、それらを向ける気概さえ無いのだろう。
しかしそんな彼等も現代物品には興味津々だ。
何せ今まで狩りをするくらいの原始的に近い生活が続いていて。
彼等にとってしてみれば、色褪せていた背景が途端にカラフルになった様なもの。
色とりどりの備品や家具、装置を見れば好奇心をくすぐられるのも無理は無い。
一人の兵士はプラスチックの小物入れを抱えて興奮気味で。
もう一人はと言えば、何故か段ボールを被ってとても嬉しそう。
「探せば探すだけどえらいモンがあんなぁ。 人間、いつの間にこんなん作ってたんだ?」
更にもう一人はティッシュ箱を片手に悩ましい顔を浮かべていて。
テレビなどの機器には目も暮れず、その手に取るのは普遍的な小物ばかり。
いずれも向けるのは好奇の眼で。
これだけで見れば微笑ましいものなのだが。
「んなの関係ね。 おもろいもん持って帰って、王に気に入られりゃ俺達だって出世間違いなしよ」
「んだ。 そうなったらオラ、里けぇれた時に嫁さ貰うべ。 きっとモテモテじゃあ」
ティッシュ箱一つで出世出来る世界であればどれほど優しいか。
こう思える彼等の価値観は現代人が見るよりもずっと偏っているのかもしれない。
「それよか、こんなトコで怠けてんバレたら首が飛びかねねーべ」
「これは怠けではない、れっきとした調査だ。 見ろ、こいつも面白そうだ」
そんな彼等の上官らしい者もこの調子である。
外では軽トラックの運転席で遊んでいる者もいて。
【オンズ族】というのは身なりに合わず気楽な種族なのだろうか。
「全く、人間ってのは何でこんなおもしろ―――」
だがその瞬間、彼等の世界は一瞬にして真っ白となる。
何一つ考える事も叶わなかった。
何が起きたのかも理解する事は無かった。
その一瞬で、彼等の存在そのものがこの世から消し飛んだのだから。
ッドッギャォォォーーーーーーンッッッ!!!!!
たちまちその一軒屋が凄まじい業火に包まれた。
家屋そのものを消し飛ばす程の激しい爆風と共に。
鋼鉄製の軽トラックすら溶解する程の超豪熱を伴って。
周囲に居た魔者さえも吹き飛ばし、立ち上る炎が空さえ真っ赤に染め上げる。
一体何が起きたのか。
魔者達がそれを理解するには余りにも非現実過ぎて。
ただ、それを遠くで目撃していた一人の兵士だけはハッキリと知る事となる。
その爆発の正体を。
その驚異の能力を。
ドヒュンッ!!!
その時、空に描かれしは一筋の閃光。
それも並みの速度ではない。
その速度はまるで砲弾。
紅い塊が瞬時にして彼方へと真っ直ぐに飛んでいくのだ。
そして彼方で再びの―――大爆発。
瞬時にして爆炎が周囲を照らし。
音よりもずっと速く空を焼く。
その後訪れるのは地響きたる爆音と、熱風を伴った衝撃波。
彼方で起きた出来事を身近と思わせるまでの。
それも一発二発ではない。
何度も続くのだ。
左右に向けて、絶え間なく。
その間隔こそ長いが、威力を寸分衰えさせる事さえ無い。
魔者はその破壊力を前に戦慄する事となる。
彼等でさえもこんな砲撃など見た事は無いのだ。
そもそも、こんな攻撃を実現させる程までの兵器も技術もありはしない。
「な、何なんだあれは……!?」
周囲を焼き尽くし、爆破し、吹き飛ばす。
容赦無き破壊の奔流はなお続き、次第にその規模を大きくさせていく。
そう、この魔者へと近づいているのだ。
閃光筋の根元が、徐々に、徐々に。
「う、うう……!?」
こうして彼はすぐに知る。
なまじ夜目だからこそ、気付けてしまうのだ。
その砲弾が誰から発射されているのかを。
その脅威の砲撃を成す者―――ちゃなの存在に。
「魔剣使いだとォ……!? 遠距離攻撃型であれ程の威力をあんなに……あ、あり得ん!!」
ちゃなは彼等『あちら側』の者にとって常識を遥かに超えた存在だ。
加えて彼女が成す砲撃の威力は同胞を一瞬で焼き尽くすまでの威力。
驚愕しない訳が無い。
でもその驚愕はほんの少し方向性が異なる。
彼は決して、その存在に驚いたのではない。
次にちゃなの魔剣を向けた先が、自分だったからである。
「ヒ、ヒィアアアーーー!?」
怖がらないはずがない。
慄かないはずがない。
即死案件を突き付けられて、逃げないはずがない。
けれど、きっともう遅かったのだろう。
炎が見えた時から逃げていればこうならなかったのに。
人間に敵意を見せなければこうならなかったのに。
だからその兵士もまた、次の瞬間には爆風に包まれる事となる。
近くに佇む家屋と共に。
断末魔一つ上げる事も叶わないまま。
間も無く家屋の破片が降り注ぎ、舗装道路を盛大に掻き鳴らす。
そのいずれも炎を伴っていて、夜景に小さな明かりを幾つももたらしていた。
そんな中に姿を晒したのは当然―――勇達。
「相変わらず凄いなぁ」
しかしその足取りはと言えば、ゆったりで。
まるで散歩の様な足並みだ。
それというのも、このペースがちゃなの砲撃に最も適していたから。
ちゃなが抱えるのは魔剣【ドゥルムエーヴェ】一本のみ。
両手で構えて砲撃するという、いつもながらのスタイルである。
ではこれ程の砲撃の何が今までと違うのか。
弾そのものが全く違う。
今までは炎の塊をただ撃ち出していただけに過ぎない。
命力によって燃焼された熱エネルギーをぶつけ、敵を焼いていたのだ。
その熱エネルギーを出来る限り圧縮して撃ち出したのが、初めて放った【ぼん】という大型炎弾。
圧縮せずに小型化し、連続で撃てる様にしたのが【小さいぼん】という連射型炎弾。
いずれも必殺技級の威力ではあるが基本攻撃でしかない。
単純に力を飛ばしただけとも言える、名状し難い低級砲撃なのである。
だが、今撃ち出していた物は決して低級などではない。
魔剣砲撃は知識と知恵でいくらでも形を変えられる。
想像に容易い炎弾は元より、ザサブが打ち放った雷もそう。
物理現象を利用した攻撃方法は、その仕組みを理解する事で大きく進化できるのだ。
だからちゃなはこの日までに多くを学んだ。
かのザサブ戦でも悩むところは多かったから。
ただの炎弾では遠くの敵に当てるのは非常に難しい。
空気抵抗が邪魔をして、弾が真っ直ぐ飛ばないからだ。
速度も落ちるので避けられる要因にもなりかねない。
また、遠方に行けば行くほど弾の威力も落ちる。
大気放熱によって熱力が持たず、破壊力が拡散してしまうから。
ではその問題を解決するにはどうすれば良いのか。
その条件下でちゃなが導き出した答えは―――
空気弾の中に熱エネルギーを閉じ込めてしまえばいい、という結論である。
それもただの空気弾ではない。
円錐状となった空気膜に幾重もの螺旋溝を刻み込み、弾そのものに揚力を与えたのだ。
こうする事で撃ち出された弾は途端に高回転、驚異的な貫通力を得られる事に。
しかもこれによって空気抵抗が激減し、射撃精度も格段に向上。
従来の砲撃とは段違いの射程距離と威力、正確性を一挙に獲得したのである。
これはすなわち、銃の弾丸と同じ原理。
そう、ちゃなは今まさしく炎の弾丸を撃ち出している。
それも人知を超えた威力を誇る、超爆撃砲弾を。
これを名付けるならば―――【複合熱榴弾】。
この爆砲を前に逃げられる者は居ない。
炎に晒されて燃え尽きない者は居ない。
圧倒的な破壊砲撃はもはや抵抗すら許さないだろう。
勇達の逆襲はまだ始まったばかり。
潜んでいる敵はまだ数知れない。
だからこそ、今は得られた力をこうして徹底的に奮うだけだ。
四国島の東端半分を絞める日本自治体の一つである。
関西と陸路で繋がっており、その役目を担う大鳴門橋の壮観さは目を見張るものがある。
かの鳴門の渦潮もここで見る事ができ、観光スポットの一つとしても有名だ。
都市部もその橋を基礎に賑わっていて、その発展度は他都市にも負けない。
ただし街を外れて中腹部へと赴けば、丘や山の連なる高地地帯がその姿を現す事となる。
季節柄、斜面一面が緑に覆われていて。
丘部にも畑や田が目立ち、都市部とのギャップが実に激しい。
【オンズ族】の拠点はその山林部に小さく存在している。
畑に囲まれた緩い傾斜と舗装道路を抜けていけば、彼等の住む林がすぐにお目見えだ。
転移範囲がそこまで大きく無かったのだろう。
パッと見では変化した事がわからない程である。
もしかしたら『あちら側』では林じゃなかったのかもしれない。
ただその人数規模は油断出来ない程に多く、その数おおよそ一〇〇人前後。
どうやら密集していた所で転移に巻き込まれたらしい。
しかしここで敢えて一つの疑問をぶつけてみるとしよう。
そんな人数を相手に、自衛隊は何故突破を許してしまったのだろうか。
その答えはこうだ。
相手の活動時間は夜間。
人間が監視しきれない暗闇の中を、【オンズ族】は自由自在に走り回る事が出来る。
おまけに山林部の木々がセンサーなども阻害、その動向を捉える事は困難を極める一方だ。
例え罠を設置しようとも、戦闘のプロである彼等がそんな人為的な物を見抜けない訳が無い。
その為、彼等の流出はどうしても防げず。
しかも流出する度に防衛範囲を見直し、捜索を余儀なくされる。
つまり人員は戦闘ではなく、周辺地域の防御に全力を注がなければならないのだ。
故に、今回は自衛隊のサポートが一切受けられない。
勇とちゃなは二人だけで戦わなければならないのである。
とはいえ、そのお陰で敵勢力の半数が拠点から離れている。
本隊と斥候部隊の間を縫う様に攻めれば、ザサブの時の様な乱戦になる事は無い。
だからこそ狙い目は今。
二人がそこを狙ってひた走り行く。
彼等を率いる王を止める為に。
一方その頃、【オンズ族】が侵攻した農村部では。
「お、こいつ見ろよ。 なかなか面白そうな物見つけたぞ!」
無人となった一軒屋で、物品を物色する彼等の兵士達の姿が。
土足で踏み躙る辺り、そういう文化も礼節も、それらを向ける気概さえ無いのだろう。
しかしそんな彼等も現代物品には興味津々だ。
何せ今まで狩りをするくらいの原始的に近い生活が続いていて。
彼等にとってしてみれば、色褪せていた背景が途端にカラフルになった様なもの。
色とりどりの備品や家具、装置を見れば好奇心をくすぐられるのも無理は無い。
一人の兵士はプラスチックの小物入れを抱えて興奮気味で。
もう一人はと言えば、何故か段ボールを被ってとても嬉しそう。
「探せば探すだけどえらいモンがあんなぁ。 人間、いつの間にこんなん作ってたんだ?」
更にもう一人はティッシュ箱を片手に悩ましい顔を浮かべていて。
テレビなどの機器には目も暮れず、その手に取るのは普遍的な小物ばかり。
いずれも向けるのは好奇の眼で。
これだけで見れば微笑ましいものなのだが。
「んなの関係ね。 おもろいもん持って帰って、王に気に入られりゃ俺達だって出世間違いなしよ」
「んだ。 そうなったらオラ、里けぇれた時に嫁さ貰うべ。 きっとモテモテじゃあ」
ティッシュ箱一つで出世出来る世界であればどれほど優しいか。
こう思える彼等の価値観は現代人が見るよりもずっと偏っているのかもしれない。
「それよか、こんなトコで怠けてんバレたら首が飛びかねねーべ」
「これは怠けではない、れっきとした調査だ。 見ろ、こいつも面白そうだ」
そんな彼等の上官らしい者もこの調子である。
外では軽トラックの運転席で遊んでいる者もいて。
【オンズ族】というのは身なりに合わず気楽な種族なのだろうか。
「全く、人間ってのは何でこんなおもしろ―――」
だがその瞬間、彼等の世界は一瞬にして真っ白となる。
何一つ考える事も叶わなかった。
何が起きたのかも理解する事は無かった。
その一瞬で、彼等の存在そのものがこの世から消し飛んだのだから。
ッドッギャォォォーーーーーーンッッッ!!!!!
たちまちその一軒屋が凄まじい業火に包まれた。
家屋そのものを消し飛ばす程の激しい爆風と共に。
鋼鉄製の軽トラックすら溶解する程の超豪熱を伴って。
周囲に居た魔者さえも吹き飛ばし、立ち上る炎が空さえ真っ赤に染め上げる。
一体何が起きたのか。
魔者達がそれを理解するには余りにも非現実過ぎて。
ただ、それを遠くで目撃していた一人の兵士だけはハッキリと知る事となる。
その爆発の正体を。
その驚異の能力を。
ドヒュンッ!!!
その時、空に描かれしは一筋の閃光。
それも並みの速度ではない。
その速度はまるで砲弾。
紅い塊が瞬時にして彼方へと真っ直ぐに飛んでいくのだ。
そして彼方で再びの―――大爆発。
瞬時にして爆炎が周囲を照らし。
音よりもずっと速く空を焼く。
その後訪れるのは地響きたる爆音と、熱風を伴った衝撃波。
彼方で起きた出来事を身近と思わせるまでの。
それも一発二発ではない。
何度も続くのだ。
左右に向けて、絶え間なく。
その間隔こそ長いが、威力を寸分衰えさせる事さえ無い。
魔者はその破壊力を前に戦慄する事となる。
彼等でさえもこんな砲撃など見た事は無いのだ。
そもそも、こんな攻撃を実現させる程までの兵器も技術もありはしない。
「な、何なんだあれは……!?」
周囲を焼き尽くし、爆破し、吹き飛ばす。
容赦無き破壊の奔流はなお続き、次第にその規模を大きくさせていく。
そう、この魔者へと近づいているのだ。
閃光筋の根元が、徐々に、徐々に。
「う、うう……!?」
こうして彼はすぐに知る。
なまじ夜目だからこそ、気付けてしまうのだ。
その砲弾が誰から発射されているのかを。
その脅威の砲撃を成す者―――ちゃなの存在に。
「魔剣使いだとォ……!? 遠距離攻撃型であれ程の威力をあんなに……あ、あり得ん!!」
ちゃなは彼等『あちら側』の者にとって常識を遥かに超えた存在だ。
加えて彼女が成す砲撃の威力は同胞を一瞬で焼き尽くすまでの威力。
驚愕しない訳が無い。
でもその驚愕はほんの少し方向性が異なる。
彼は決して、その存在に驚いたのではない。
次にちゃなの魔剣を向けた先が、自分だったからである。
「ヒ、ヒィアアアーーー!?」
怖がらないはずがない。
慄かないはずがない。
即死案件を突き付けられて、逃げないはずがない。
けれど、きっともう遅かったのだろう。
炎が見えた時から逃げていればこうならなかったのに。
人間に敵意を見せなければこうならなかったのに。
だからその兵士もまた、次の瞬間には爆風に包まれる事となる。
近くに佇む家屋と共に。
断末魔一つ上げる事も叶わないまま。
間も無く家屋の破片が降り注ぎ、舗装道路を盛大に掻き鳴らす。
そのいずれも炎を伴っていて、夜景に小さな明かりを幾つももたらしていた。
そんな中に姿を晒したのは当然―――勇達。
「相変わらず凄いなぁ」
しかしその足取りはと言えば、ゆったりで。
まるで散歩の様な足並みだ。
それというのも、このペースがちゃなの砲撃に最も適していたから。
ちゃなが抱えるのは魔剣【ドゥルムエーヴェ】一本のみ。
両手で構えて砲撃するという、いつもながらのスタイルである。
ではこれ程の砲撃の何が今までと違うのか。
弾そのものが全く違う。
今までは炎の塊をただ撃ち出していただけに過ぎない。
命力によって燃焼された熱エネルギーをぶつけ、敵を焼いていたのだ。
その熱エネルギーを出来る限り圧縮して撃ち出したのが、初めて放った【ぼん】という大型炎弾。
圧縮せずに小型化し、連続で撃てる様にしたのが【小さいぼん】という連射型炎弾。
いずれも必殺技級の威力ではあるが基本攻撃でしかない。
単純に力を飛ばしただけとも言える、名状し難い低級砲撃なのである。
だが、今撃ち出していた物は決して低級などではない。
魔剣砲撃は知識と知恵でいくらでも形を変えられる。
想像に容易い炎弾は元より、ザサブが打ち放った雷もそう。
物理現象を利用した攻撃方法は、その仕組みを理解する事で大きく進化できるのだ。
だからちゃなはこの日までに多くを学んだ。
かのザサブ戦でも悩むところは多かったから。
ただの炎弾では遠くの敵に当てるのは非常に難しい。
空気抵抗が邪魔をして、弾が真っ直ぐ飛ばないからだ。
速度も落ちるので避けられる要因にもなりかねない。
また、遠方に行けば行くほど弾の威力も落ちる。
大気放熱によって熱力が持たず、破壊力が拡散してしまうから。
ではその問題を解決するにはどうすれば良いのか。
その条件下でちゃなが導き出した答えは―――
空気弾の中に熱エネルギーを閉じ込めてしまえばいい、という結論である。
それもただの空気弾ではない。
円錐状となった空気膜に幾重もの螺旋溝を刻み込み、弾そのものに揚力を与えたのだ。
こうする事で撃ち出された弾は途端に高回転、驚異的な貫通力を得られる事に。
しかもこれによって空気抵抗が激減し、射撃精度も格段に向上。
従来の砲撃とは段違いの射程距離と威力、正確性を一挙に獲得したのである。
これはすなわち、銃の弾丸と同じ原理。
そう、ちゃなは今まさしく炎の弾丸を撃ち出している。
それも人知を超えた威力を誇る、超爆撃砲弾を。
これを名付けるならば―――【複合熱榴弾】。
この爆砲を前に逃げられる者は居ない。
炎に晒されて燃え尽きない者は居ない。
圧倒的な破壊砲撃はもはや抵抗すら許さないだろう。
勇達の逆襲はまだ始まったばかり。
潜んでいる敵はまだ数知れない。
だからこそ、今は得られた力をこうして徹底的に奮うだけだ。
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※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。
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