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第十節「狂騒鳥曲 死と願い 少女が為の青空」
~我等が主は人なりて~
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――――――
――――
――
―
それは勇達がジョゾウ達と出会った間際の事。
「なら俺に出会えればフェノーダラ王国に行かなくても済むって事なのかな?」
「あいや、そうとはならぬ故。 拙僧らは是が非にでも赴かねば」
「え?」
実はこの時、勇はこうしてしっかりと訊いていたのだ。
何故ジョゾウ達がフェノーダラ王国に拘るのかを。
それは、勇としてはあまりジョゾウ達をフェノーダラ王国へは近寄らせたくなかったから。
王様やエウリィ達を怖がらせるような事は極力避けたくて。
しかし、どうやらジョゾウ達の運んできた事実はそんな我儘など通じない程に重いらしい。
そうとは露も知らずにこう問いかけたものなのだが。
ジョゾウが回転せんばかりに首を横へ振り、勇の期待を払う事となる。
「近々、フェノーダラ王国は襲撃される事となるであろう。 拙僧らはそれを阻止せんが為にこうして馳せ参じたという訳に御座る」
事態が想像以上に深刻であったが故に。
―
――
――――
――――――
ジョゾウの言っていた事が本当かどうかは勇にはわからない。
それ以上の事は王様と会って話したいと言って聞かなかったから。
でもこんな話を聞かされて黙っている訳にはいかないだろう。
少なくとも勇は危機感を抱いた様だ。
このまま放っておけば大事に繋がる可能性も否定出来ないのだと。
そんな理由もあって、勇はこうしてジョゾウ達をフェノーダラ王国へと連れて来た。
彼等の真意がどうあれ、敵ではないと判断したから。
そして、彼等の言う〝襲撃〟を何としても阻止せんが為に。
故に今、勇が城門の前に力強く立つ。
心と外界を拒絶せし、閉まられた大門を押し開かんばかりに。
―――と言っても少しだけ開いているけども。
その境には兵士の目が見える程度に隙間が出来ているという。
なので勇もチョコチョコと詰め寄り、早速の対話を試みる。
「王が魔者は城に入れてはならぬと」
「やっぱそうなるかぁ」
しかしやはり一筋縄ではいきそうにない。
勇が訪問理由を盾に開門を願っても無駄だ。
頑なな意思が断固として魔者を拒否しているからこそ。
やはり簡単に意識改革とはいかないらしい。
けど、何かまだ方法はあるはず。
諦めを知らない勇がその想いのままに思考を巡らせる。
せめて門番だけでも何とか出来れば。
「アーゲンダッシュ一人五〇〇mℓだ。 開けてくれたら特別に調達する」
「勇殿、買収か……!? ぐぬるる、だ、だがその手には乗りませんぞ」
もはやなりふり構ってはいられない。
彼等が最近アイスにハマっているのはリサーチ済みだ。
ならばと高級嗜好品を餌に門番の買収を図る。
とても勇者の所業とは思えない作戦である。
「確か貴方、エーカンさんって言いましたよね? 貴方へ特別に、良質のプロテインと特別限定版【うさ】Tシャツを贈りますよ……!」
「うお、おお……ッ!? ああクソッ、耐えろ俺ッ!! 勇殿、もうお辞めください!!」
動物キャラ系Tシャツに目が無いのは既に周知の事だろう。
ならばとこの逸品をおまけにする事も忘れない。
彼等がこれを好む理由も今や知っているからこその垂涎セットだ。
ちなみに、彼等がキャラTシャツを好むのはこんな理由。
〝筋肉で引き延ばされたキャラが情けない魔者を連想させて気持ちいいから〟
いざ知ると実にしょうもない理由である。
しかしその威力は絶大で。
門の向こうでは余りの誘惑に打ち震える兵士の姿が。
「俺、知ってるんだ。 この門の向こうには沢山の綺麗な女の人が居るんだって。 そんな子達のありのままの姿を映した画像や動画がある事もさ」
「勇殿、貴方は魔者ですか!? 私に血涙を流せと!? もう勘弁してください!!」
だがやはり国を守る兵士の意思は固かった。
さすが屈強の戦士だけあって、そう簡単には誘惑に屈しないらしい。
趣向はともかく、その精神は褒め称えられるべきだろう。
なお門の向こうで膝をガクガクとさせていたのはここだけの話としておこう。
とはいえ結局、交渉は決裂。
勇も渋々引き下がる事に。
このままでは兵士達が余りにも不憫でしょうがなかったので。
何せ彼等、現状では生産性が無いので援助を受け続けるしかなくて。
なので基本的に補給物資には嗜好品は含まれていない。
大体は勇やちゃなが仕入れた物々で暇を凌いでいる現状なのだ。
だからか、こうして去っていく勇はこうも思う。
〝結果はともかく、後でアーゲンダッシュくらいは届けてあげよう〟と。
やはり勇者にも慈悲くらいはあった。
―――では次に、ジョゾウ達の方はどうだろうか。
力を貸してくれるだけなら、別に城内へ入る必要も無い訳で。
城に入れなくても王国を守れるのかどうか。
その為の援助も当然欠かすつもりは無い。
という訳で今度はジョゾウ達の所に戻るのだが。
「其れはならぬ。 拙僧ら、義により馳せしは主を立てとう申したくある故。 主殿より承った命はそれを以って良しとしたく候」
「んん……?」
質問して早々、返って来たのはまたよくわからない言葉の羅列で。
言葉自体は通じているのだが、硬い所為で全く頭に入ってこないという。
勇もちゃなもそんな語り草を前にまたしてもハテナが飛ぶばかりだ。
「……詰まる所、 フェノーダラ王殿が一時的にこの地で戦う為の主となって頂かねば、この力は奮うに奮えぬという話に御座る。 其れが我等一族の流儀なれば」
「な、なるほど」
しかもこうしてちゃんと要約出来る辺り、きっとわざとそう語っているのだろう。
是非とも最初から要約して語って欲しいものである。
ただ、流儀となるとこれまた曲げるのが大変そう。
事を起こすにも主立てから。
その為になら人間にさえ従うというスタンスは、逆に勇達の関心を誘わずには居られない。
これには凶暴な魔者を知っているはずの自衛隊員でさえも「ほぉ」と唸りを見せる程だ。
「じゃあどうにかして王様には会いたいって訳か」
「左様」
「でもなんでそこまでする必要があるんです? 魔者だったらフェノーダラ王国に義理も何も無いんじゃ」
そんなジョゾウ達だからこそだろう。
だから勇はふと思い付いた疑問を遠慮なくぶつけていた。
〝どうしてわざわざ魔者が人間に塩を送る様な事をするのか〟と。
「然り。 しかしこれが我が主殿の命に御座る。 して我等一族の過ちを正す為でもあろう」
「一族の過ち……?」
「うむ。 何故ならば此度の襲撃、拙僧らの元同胞によるものとする故な」
「同胞だって!?」
だがどうやらジョゾウ達には想像も付かない程に深い事情がある様だ。
あの緩い雰囲気なジョゾウが真面目と空を仰いでしまう程に。
その視線に勇達もがふと誘われて。
快晴の青空を視界に映す中、再び語りがそっと聴こえて来る。
「この地に迫りしは我が元同胞にして元主ロゴウ。 彼奴は我等が里を見限り、幾人かの同胞を引き連れ里を去ったので御座る。 その折、彼奴はこう言うて残した。 『必ずや再び舞い戻ろうぞ、相応の土産をこの手に持ってな!』と」
「相応の土産……まさかそれがフェノーダラ王国の陥落!?」
「左様。 元々フェノーダラ王国は因縁浅からぬ国であるが故、標的としてこの上ないと思ったであろうな。 己が再び王座をその手にせんが為の贄として」
彼等の言う主とはすなわち王の事。
その王だった者がジョゾウ達一族と離反し、フェノーダラ王国を襲うと宣言したという。
その語り草の如く、まさに戦国武将が起こしそうな雰囲気の事件である。
ただ勇としては心中穏やかとはなれない事ばかりだ。
ジョゾウ達一族の内輪揉めでフェノーダラ王国が割を食う事になろうなどとは。
それに、気になる事も幾つかあった。
ジョゾウ達の言う「主」の姿が見えてこないのだ。
めくるめく進む話の中でどうしてもぼやけていたから。
「王座を取り戻す……っていう事は、最近王が変わった!?」
それもそのはず。
彼等の主は現在進行形で変わっているのだから。
元主を追い出し、騒動を呼び込んだ元凶は別に居る。
しかもあろう事か―――鳩型ではない別の者の影姿を映して。
「左様。 そして新しき主は―――人間に御座る」
「な、なんだって!?」
そう、それはあろう事か人間の影姿だったのである。
まさか魔者の王が人間などとは。
とても信じられない話だが、だとすれば今までのジョゾウ達の行動には説明が付く。
人間に馴れていた事。
人間を仮主と立てようとしている事。
因縁を持つ相手と共に戦おうとしている事。
これが人間からの指示なら何ら不思議では無い。
ただし、ジョゾウ達が大人しく従っている事以外は、か。
でもその問題もこう考えれば辻褄も合うが。
その王となったのが現代人ならば、と。
なら現代のお金を持っていた事も、機器を自然に利用していた事も理解出来る。
現代人である王に教授されたなら使い方がわかってもおかしくないはずだ。
人に敵意を向けない事も、現代人でなければ考えが到底及ばないはず。
そしてこれだけの事を教える人物なら、主に奉られても違和感は無い。
それに、敵意を寄越さない分は少なくとも味方だと思っていいだろう。
ジョゾウ達を味方として送り込んだ辺り、尻拭いのつもりなのかもしれない。
だとすれば、むしろ元主のロゴウという者が反旗を翻すのも無理は無いか。
人間に立場を奪われ怒るなど、想像するに容易い事な訳で。
「あの御方が主となったのは一族慣例の儀、里の六賢人達による多数決の末によるもの。 本来ならば従うが道理なのであるが。 しかしロゴウめは決に従わず離反した、という訳に御座る。 もっとも、離れたのは彼奴のみならず、異を唱えし二賢人もであるが」
恐らく、人間の主に従わなかった者は多いに違いない。
聴く限り、勢力のほぼほぼ半分が離反したと思ってもいいだろう。
つまり、今の残る彼等の同胞は穏健派―――人間との共存を望んだ者達という事か。
不躾な事だが、勇達にとっては好都合な状況と言えよう。
「そうだったのか。 じゃあジョゾウさん達は主さんの事、どう思っているんです?」
となれば勇は気にせずにいられない。
ジョゾウ達が今の状況をどう考えているのか。
不本意で訪れたのか、それとも望んで訪れたのか、その真意を。
そしてその真意がとうとうジョゾウの口から放たれる。
今ここに居る者達の総意として。
「王は人と魔者が共存する世界を望んでおられる。 我等もまたその理念に心から従い、この命を賭す事を誓うたのだ。 其れは単に、争い無き太安の世を望むが故な」
きっと彼等も戦いの日々を辛く感じていたのだろう。
徳島で戦ったオンズ族達と同様に。
でも切り出せなくて、止められなくて。
自然の摂理と化した戦いを抜ける事は、それ自体が謀反ともなりうるから。
生きていく為には戦わなければならなかった。
けれど今は違う。
人間との敵対を願わない者が王となった今ならば。
ならば心から従い、人と共に生きよう。
これがジョゾウ達とオンズ族の決定的な違いなのである。
「ジョゾウさん達も戦いの日々が苦しいって思ってたんですね」
「うむ。 拙僧のみならず、戦いに疲れた者は他に多し。 いつまでも果てぬこの恨み辛みの世よ、いつかそれらが無くなりし日々を想いて幾星霜―――されど拙僧達は遂にこの機を得た」
ジョゾウがそう語りつつ目を細め、感慨深く想うと共に見上げて。
見果てぬと諦めかけていた夢を希望として胸に抱き今、空に馳せる。
青く澄んだ大空が応えんとばかりに輝きを一身へと注ぐ中で。
「なれば果たしとう御座る。 例えこの身に換えようとも、里の者達の明日を笑顔で迎えられようものならば」
「……わかりました。 その想い、俺が必ずフェノーダラ王に伝えてきます」
「本来ならば信用出来ぬであろう拙僧らの為にここまでして頂き、深く感謝致す」
その姿は勇にとっても眩しいの一言だった。
それだけ、ジョゾウの想いはハッキリとしていたから。
決して嘘偽り無く、正直と未来に向き合っているのだと。
そんな姿はまさしく平和の象徴に相応しいと言えよう。
偶然と一致した事だが、素養が元々あったからこその奇跡とも言えよう。
するとそんな時、ジョゾウが胸をまさぐっていて。
「感謝のしるしに御座る。 受け取ってくだされ」
「え、あ、ども……」
ささっと羽根を一本抜き取り、勇へと差し出す。
折角よく締まりそうだったのに、この妙な礼の所為で雰囲気が台無しである。
受け取った勇もなんだか複雑そうだ。
隣のちゃなはと言えば、「はわぁ」と目を輝かせているけども。
「そ、それじゃ、もう少し待っててくださいね」
そんなちゃなへとフワッフワな羽根を渡し、勇が屈み込む。
ドンッ!!
そしてそのまま大地を強く蹴り、たちまち空高くへと。
それも城壁よりも高く、それでいて城との隙間へと素早く飛び込む様にして。
ジョゾウ達の想いを無駄にしない為にも。
双方の蟠りを今こそ消し去る為にも。
今はただ、想いのままに走り抜こう。
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それは勇達がジョゾウ達と出会った間際の事。
「なら俺に出会えればフェノーダラ王国に行かなくても済むって事なのかな?」
「あいや、そうとはならぬ故。 拙僧らは是が非にでも赴かねば」
「え?」
実はこの時、勇はこうしてしっかりと訊いていたのだ。
何故ジョゾウ達がフェノーダラ王国に拘るのかを。
それは、勇としてはあまりジョゾウ達をフェノーダラ王国へは近寄らせたくなかったから。
王様やエウリィ達を怖がらせるような事は極力避けたくて。
しかし、どうやらジョゾウ達の運んできた事実はそんな我儘など通じない程に重いらしい。
そうとは露も知らずにこう問いかけたものなのだが。
ジョゾウが回転せんばかりに首を横へ振り、勇の期待を払う事となる。
「近々、フェノーダラ王国は襲撃される事となるであろう。 拙僧らはそれを阻止せんが為にこうして馳せ参じたという訳に御座る」
事態が想像以上に深刻であったが故に。
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ジョゾウの言っていた事が本当かどうかは勇にはわからない。
それ以上の事は王様と会って話したいと言って聞かなかったから。
でもこんな話を聞かされて黙っている訳にはいかないだろう。
少なくとも勇は危機感を抱いた様だ。
このまま放っておけば大事に繋がる可能性も否定出来ないのだと。
そんな理由もあって、勇はこうしてジョゾウ達をフェノーダラ王国へと連れて来た。
彼等の真意がどうあれ、敵ではないと判断したから。
そして、彼等の言う〝襲撃〟を何としても阻止せんが為に。
故に今、勇が城門の前に力強く立つ。
心と外界を拒絶せし、閉まられた大門を押し開かんばかりに。
―――と言っても少しだけ開いているけども。
その境には兵士の目が見える程度に隙間が出来ているという。
なので勇もチョコチョコと詰め寄り、早速の対話を試みる。
「王が魔者は城に入れてはならぬと」
「やっぱそうなるかぁ」
しかしやはり一筋縄ではいきそうにない。
勇が訪問理由を盾に開門を願っても無駄だ。
頑なな意思が断固として魔者を拒否しているからこそ。
やはり簡単に意識改革とはいかないらしい。
けど、何かまだ方法はあるはず。
諦めを知らない勇がその想いのままに思考を巡らせる。
せめて門番だけでも何とか出来れば。
「アーゲンダッシュ一人五〇〇mℓだ。 開けてくれたら特別に調達する」
「勇殿、買収か……!? ぐぬるる、だ、だがその手には乗りませんぞ」
もはやなりふり構ってはいられない。
彼等が最近アイスにハマっているのはリサーチ済みだ。
ならばと高級嗜好品を餌に門番の買収を図る。
とても勇者の所業とは思えない作戦である。
「確か貴方、エーカンさんって言いましたよね? 貴方へ特別に、良質のプロテインと特別限定版【うさ】Tシャツを贈りますよ……!」
「うお、おお……ッ!? ああクソッ、耐えろ俺ッ!! 勇殿、もうお辞めください!!」
動物キャラ系Tシャツに目が無いのは既に周知の事だろう。
ならばとこの逸品をおまけにする事も忘れない。
彼等がこれを好む理由も今や知っているからこその垂涎セットだ。
ちなみに、彼等がキャラTシャツを好むのはこんな理由。
〝筋肉で引き延ばされたキャラが情けない魔者を連想させて気持ちいいから〟
いざ知ると実にしょうもない理由である。
しかしその威力は絶大で。
門の向こうでは余りの誘惑に打ち震える兵士の姿が。
「俺、知ってるんだ。 この門の向こうには沢山の綺麗な女の人が居るんだって。 そんな子達のありのままの姿を映した画像や動画がある事もさ」
「勇殿、貴方は魔者ですか!? 私に血涙を流せと!? もう勘弁してください!!」
だがやはり国を守る兵士の意思は固かった。
さすが屈強の戦士だけあって、そう簡単には誘惑に屈しないらしい。
趣向はともかく、その精神は褒め称えられるべきだろう。
なお門の向こうで膝をガクガクとさせていたのはここだけの話としておこう。
とはいえ結局、交渉は決裂。
勇も渋々引き下がる事に。
このままでは兵士達が余りにも不憫でしょうがなかったので。
何せ彼等、現状では生産性が無いので援助を受け続けるしかなくて。
なので基本的に補給物資には嗜好品は含まれていない。
大体は勇やちゃなが仕入れた物々で暇を凌いでいる現状なのだ。
だからか、こうして去っていく勇はこうも思う。
〝結果はともかく、後でアーゲンダッシュくらいは届けてあげよう〟と。
やはり勇者にも慈悲くらいはあった。
―――では次に、ジョゾウ達の方はどうだろうか。
力を貸してくれるだけなら、別に城内へ入る必要も無い訳で。
城に入れなくても王国を守れるのかどうか。
その為の援助も当然欠かすつもりは無い。
という訳で今度はジョゾウ達の所に戻るのだが。
「其れはならぬ。 拙僧ら、義により馳せしは主を立てとう申したくある故。 主殿より承った命はそれを以って良しとしたく候」
「んん……?」
質問して早々、返って来たのはまたよくわからない言葉の羅列で。
言葉自体は通じているのだが、硬い所為で全く頭に入ってこないという。
勇もちゃなもそんな語り草を前にまたしてもハテナが飛ぶばかりだ。
「……詰まる所、 フェノーダラ王殿が一時的にこの地で戦う為の主となって頂かねば、この力は奮うに奮えぬという話に御座る。 其れが我等一族の流儀なれば」
「な、なるほど」
しかもこうしてちゃんと要約出来る辺り、きっとわざとそう語っているのだろう。
是非とも最初から要約して語って欲しいものである。
ただ、流儀となるとこれまた曲げるのが大変そう。
事を起こすにも主立てから。
その為になら人間にさえ従うというスタンスは、逆に勇達の関心を誘わずには居られない。
これには凶暴な魔者を知っているはずの自衛隊員でさえも「ほぉ」と唸りを見せる程だ。
「じゃあどうにかして王様には会いたいって訳か」
「左様」
「でもなんでそこまでする必要があるんです? 魔者だったらフェノーダラ王国に義理も何も無いんじゃ」
そんなジョゾウ達だからこそだろう。
だから勇はふと思い付いた疑問を遠慮なくぶつけていた。
〝どうしてわざわざ魔者が人間に塩を送る様な事をするのか〟と。
「然り。 しかしこれが我が主殿の命に御座る。 して我等一族の過ちを正す為でもあろう」
「一族の過ち……?」
「うむ。 何故ならば此度の襲撃、拙僧らの元同胞によるものとする故な」
「同胞だって!?」
だがどうやらジョゾウ達には想像も付かない程に深い事情がある様だ。
あの緩い雰囲気なジョゾウが真面目と空を仰いでしまう程に。
その視線に勇達もがふと誘われて。
快晴の青空を視界に映す中、再び語りがそっと聴こえて来る。
「この地に迫りしは我が元同胞にして元主ロゴウ。 彼奴は我等が里を見限り、幾人かの同胞を引き連れ里を去ったので御座る。 その折、彼奴はこう言うて残した。 『必ずや再び舞い戻ろうぞ、相応の土産をこの手に持ってな!』と」
「相応の土産……まさかそれがフェノーダラ王国の陥落!?」
「左様。 元々フェノーダラ王国は因縁浅からぬ国であるが故、標的としてこの上ないと思ったであろうな。 己が再び王座をその手にせんが為の贄として」
彼等の言う主とはすなわち王の事。
その王だった者がジョゾウ達一族と離反し、フェノーダラ王国を襲うと宣言したという。
その語り草の如く、まさに戦国武将が起こしそうな雰囲気の事件である。
ただ勇としては心中穏やかとはなれない事ばかりだ。
ジョゾウ達一族の内輪揉めでフェノーダラ王国が割を食う事になろうなどとは。
それに、気になる事も幾つかあった。
ジョゾウ達の言う「主」の姿が見えてこないのだ。
めくるめく進む話の中でどうしてもぼやけていたから。
「王座を取り戻す……っていう事は、最近王が変わった!?」
それもそのはず。
彼等の主は現在進行形で変わっているのだから。
元主を追い出し、騒動を呼び込んだ元凶は別に居る。
しかもあろう事か―――鳩型ではない別の者の影姿を映して。
「左様。 そして新しき主は―――人間に御座る」
「な、なんだって!?」
そう、それはあろう事か人間の影姿だったのである。
まさか魔者の王が人間などとは。
とても信じられない話だが、だとすれば今までのジョゾウ達の行動には説明が付く。
人間に馴れていた事。
人間を仮主と立てようとしている事。
因縁を持つ相手と共に戦おうとしている事。
これが人間からの指示なら何ら不思議では無い。
ただし、ジョゾウ達が大人しく従っている事以外は、か。
でもその問題もこう考えれば辻褄も合うが。
その王となったのが現代人ならば、と。
なら現代のお金を持っていた事も、機器を自然に利用していた事も理解出来る。
現代人である王に教授されたなら使い方がわかってもおかしくないはずだ。
人に敵意を向けない事も、現代人でなければ考えが到底及ばないはず。
そしてこれだけの事を教える人物なら、主に奉られても違和感は無い。
それに、敵意を寄越さない分は少なくとも味方だと思っていいだろう。
ジョゾウ達を味方として送り込んだ辺り、尻拭いのつもりなのかもしれない。
だとすれば、むしろ元主のロゴウという者が反旗を翻すのも無理は無いか。
人間に立場を奪われ怒るなど、想像するに容易い事な訳で。
「あの御方が主となったのは一族慣例の儀、里の六賢人達による多数決の末によるもの。 本来ならば従うが道理なのであるが。 しかしロゴウめは決に従わず離反した、という訳に御座る。 もっとも、離れたのは彼奴のみならず、異を唱えし二賢人もであるが」
恐らく、人間の主に従わなかった者は多いに違いない。
聴く限り、勢力のほぼほぼ半分が離反したと思ってもいいだろう。
つまり、今の残る彼等の同胞は穏健派―――人間との共存を望んだ者達という事か。
不躾な事だが、勇達にとっては好都合な状況と言えよう。
「そうだったのか。 じゃあジョゾウさん達は主さんの事、どう思っているんです?」
となれば勇は気にせずにいられない。
ジョゾウ達が今の状況をどう考えているのか。
不本意で訪れたのか、それとも望んで訪れたのか、その真意を。
そしてその真意がとうとうジョゾウの口から放たれる。
今ここに居る者達の総意として。
「王は人と魔者が共存する世界を望んでおられる。 我等もまたその理念に心から従い、この命を賭す事を誓うたのだ。 其れは単に、争い無き太安の世を望むが故な」
きっと彼等も戦いの日々を辛く感じていたのだろう。
徳島で戦ったオンズ族達と同様に。
でも切り出せなくて、止められなくて。
自然の摂理と化した戦いを抜ける事は、それ自体が謀反ともなりうるから。
生きていく為には戦わなければならなかった。
けれど今は違う。
人間との敵対を願わない者が王となった今ならば。
ならば心から従い、人と共に生きよう。
これがジョゾウ達とオンズ族の決定的な違いなのである。
「ジョゾウさん達も戦いの日々が苦しいって思ってたんですね」
「うむ。 拙僧のみならず、戦いに疲れた者は他に多し。 いつまでも果てぬこの恨み辛みの世よ、いつかそれらが無くなりし日々を想いて幾星霜―――されど拙僧達は遂にこの機を得た」
ジョゾウがそう語りつつ目を細め、感慨深く想うと共に見上げて。
見果てぬと諦めかけていた夢を希望として胸に抱き今、空に馳せる。
青く澄んだ大空が応えんとばかりに輝きを一身へと注ぐ中で。
「なれば果たしとう御座る。 例えこの身に換えようとも、里の者達の明日を笑顔で迎えられようものならば」
「……わかりました。 その想い、俺が必ずフェノーダラ王に伝えてきます」
「本来ならば信用出来ぬであろう拙僧らの為にここまでして頂き、深く感謝致す」
その姿は勇にとっても眩しいの一言だった。
それだけ、ジョゾウの想いはハッキリとしていたから。
決して嘘偽り無く、正直と未来に向き合っているのだと。
そんな姿はまさしく平和の象徴に相応しいと言えよう。
偶然と一致した事だが、素養が元々あったからこその奇跡とも言えよう。
するとそんな時、ジョゾウが胸をまさぐっていて。
「感謝のしるしに御座る。 受け取ってくだされ」
「え、あ、ども……」
ささっと羽根を一本抜き取り、勇へと差し出す。
折角よく締まりそうだったのに、この妙な礼の所為で雰囲気が台無しである。
受け取った勇もなんだか複雑そうだ。
隣のちゃなはと言えば、「はわぁ」と目を輝かせているけども。
「そ、それじゃ、もう少し待っててくださいね」
そんなちゃなへとフワッフワな羽根を渡し、勇が屈み込む。
ドンッ!!
そしてそのまま大地を強く蹴り、たちまち空高くへと。
それも城壁よりも高く、それでいて城との隙間へと素早く飛び込む様にして。
ジョゾウ達の想いを無駄にしない為にも。
双方の蟠りを今こそ消し去る為にも。
今はただ、想いのままに走り抜こう。
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魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。
そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。
しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。
過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
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【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
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貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
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【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~
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武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。
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フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。
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なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。
※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。
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