366 / 1,197
第十二節「折れた翼 友の想い 希望の片翼」
~テイク・オフ~
しおりを挟む
「俺が考えた作戦はこうだ」
心輝がちゃなを空へと打ち上げる為の作戦を皆へと提示する。
どこからともなく取り出したタブレットを駆使するままに。
その画面には勇の家周りの地図が簡単に描かれていて。
更には手馴れたタッチペン捌きでカカカッと構図が描かれていく。
「アンタこんな絵上手かったの?」
「当たり前だ。俺は将来神絵師になる男だからな」
「じゃあどんな絵描いてるのさ」
「フッ、まだ何も描いてないぜ」
「あっそう」
もちろん描きつつもこんな雑談も欠かさない。
エンターテイナーとしての才能ならとても秀でていそうだ。
「まずセリとあずーが通り前で監視する。んで、人通りを確認して腕で合図を送るんだ。人が来ない場合はマルを描いてな」
「なにそれ、私達が晒し者になるじゃん」
「馬鹿野郎! 田中ちゃんを飛ばす為には手段を選んでる場合じゃあねぇだろ……!」
更にはこんな提案で瀬玲に揺さぶりをかける。
心輝の言う事はもっともだが、ほんの少し大げさか。
これにはちゃなもほんの少し心配そう。
なお、あずーに関しては何の問題も無いらしい。
もう既に片側の道先で大きな腕マルを作っているので。
さすが何も考えない子は行動が速い。
「それに良いのか? その合図を受け取る奴はカウントダウンする必要があるんだぜ? お前に言えるのかよ……スリーツーワンってよ?」
「それ、要る?」
「要るに決まってるだろォ……! お前適当に飛ばして田中ちゃん落ちたらどうすんだよ!」
「た、確かにタイミングとかあったら集中しやすくて飛びやすいかも」
「わかった、わかったわよ。人が来なかったらマル描けばいいのね」
それでこうして瀬玲を説得すれば全ての準備は整う。
瀬玲とあずーが配置し、タイミングを見計らって。
心輝もしきりに顔を振り回し、動向を見逃さない。
なんだかんだで当人は本気なのだろう。
なら後は二人が同時にマルを描けば、それが発射チャンスの時だ。
ちゃながその時を待って魔剣に足を掛け続ける。
心輝を巻き込まない様にと距離を保って。
全ての発射タイミングを皆に預け、空を眺めたままに。
そして、遂にその時が訪れる。
瀬玲とあずーの視界から人影が消えて。
ならばと、車はこの際無視しして素早くマルを描く。
それに心輝が気付けば、途端に左腕が掲げられる事に。
「よし、今だ田中ちゃんッ!!」
「はいッ!!」
それが合図だった。
するとたちまち、その声と共に魔剣から赤い光が「バチチッ」と弾け始めて。
大気を焼き、薄白い煙がアスファルトを這う様に吹き出していく。
それと同時にとうとうカウントダウンが始まった。
「スリィー!!」
その度に、炎が噴き出す。
アスファルトを焼き、焦げ臭い香りを充満させて。
「トゥー!!」
更には魔剣が浮く。
ちゃなの体を支えながら。
「ワァンッ!!」
その末に、炎が赤々と噴出されて。
思わず心輝がたじろぎ足を引かせる。
だがここで退く訳にはいかない。
ちゃなが自ら取った距離なら、危なくない事はもうわかっているから。
ならば信じて、彼女が空へと上がる所を見送ろう。
友の下へと送り届ける為に。
「テェイクオォーーーーーーフッッ!!!」
そして渾身の叫びが木霊した時、ちゃなの姿が瞬時にして視界から消える。
そう、飛び上がったのだ。
圧倒的な加速度を以って。
その所為で周囲はたちまち煙で覆われる事に。
だけど心輝達にはしっかり見えていた。
煙の尾を引いて、ちゃなが空の遥か彼方へ飛び上がるその雄姿を。
だから見届けずにはいられない。
その煙が見えなくなるその時まで。
自分達もまたやりきる事が出来たからこそ。
「コラァ、お前何してんだァ!!」
……が、どうやら感傷に浸っている余裕は無い様だ。
今の激音は近所の住人を怒らせるには充分だった。
どうやら全部心輝のやったイタズラだと思っているらしい。
おまけに軒先は煙まみれでとても出られたものじゃない。
それに激音や振動さえ凄まじかった。
ここまでやらかしてしまえば怒るのも当然か。
「やっべ! 退避だあッ!!」
ただもちろん心輝も捕まる訳にはいかない。
確かにここまでさせたのは当人だけれども。
なので空かさず走り逃げるという。
まさに煙を撒くかの様にして。
ちゃっかりこういう事も想定していた模様。
で、残された三人はそれから無事に合流。
けれどそのまま帰るつもりはなさそうだ。
「んじゃ、俺達も行くか!」
「シンの事だし、どうせそう言うと思った。ま、いいけどね、お年玉も貰ったし」
「行こう行こう! カプロ君にもまた会いたいしー!」
まだ高校生な三人にとっては少し贅沢な旅行となるけれど。
それでも赴く理由があるから抵抗は無い。
むしろ友が居るからこそ、戦いでなければ共に行きたいとも思うものだ。
故に今、三人は小遣いを持って駅へと向かう。
もちろん、親にちゃんと本当の理由を伝えた上で。
この間のクリスマスパーティでアルライ族と会って、もう隠す必要は無いから。
お陰で今、三人の気持ちはとても清々しかった。
堂々と胸を張ってカプロ達にも会いに行けるから。
ならもう、走って行く事だって躊躇いはしない。
その一方で、ちゃなはしっかりと空を突き抜けていた。
魔剣に括り付けたスマートフォンの地図を頼りに。
「待っててくださいね、勇さんッ!!」
後はただ目的地へと向けて真っ直ぐ突き進むのみ。
道中の航空機などにも気を付けつつ。
そうして青空に一筋の飛行機雲が形成されていく。
赤い炎をチラチラと瞬かせながら。
友が繋いでくれた想いを無駄にしない為にも。
待ち焦がれているであろう勇の為にも。
今、その力を存分に奮って。
心輝がちゃなを空へと打ち上げる為の作戦を皆へと提示する。
どこからともなく取り出したタブレットを駆使するままに。
その画面には勇の家周りの地図が簡単に描かれていて。
更には手馴れたタッチペン捌きでカカカッと構図が描かれていく。
「アンタこんな絵上手かったの?」
「当たり前だ。俺は将来神絵師になる男だからな」
「じゃあどんな絵描いてるのさ」
「フッ、まだ何も描いてないぜ」
「あっそう」
もちろん描きつつもこんな雑談も欠かさない。
エンターテイナーとしての才能ならとても秀でていそうだ。
「まずセリとあずーが通り前で監視する。んで、人通りを確認して腕で合図を送るんだ。人が来ない場合はマルを描いてな」
「なにそれ、私達が晒し者になるじゃん」
「馬鹿野郎! 田中ちゃんを飛ばす為には手段を選んでる場合じゃあねぇだろ……!」
更にはこんな提案で瀬玲に揺さぶりをかける。
心輝の言う事はもっともだが、ほんの少し大げさか。
これにはちゃなもほんの少し心配そう。
なお、あずーに関しては何の問題も無いらしい。
もう既に片側の道先で大きな腕マルを作っているので。
さすが何も考えない子は行動が速い。
「それに良いのか? その合図を受け取る奴はカウントダウンする必要があるんだぜ? お前に言えるのかよ……スリーツーワンってよ?」
「それ、要る?」
「要るに決まってるだろォ……! お前適当に飛ばして田中ちゃん落ちたらどうすんだよ!」
「た、確かにタイミングとかあったら集中しやすくて飛びやすいかも」
「わかった、わかったわよ。人が来なかったらマル描けばいいのね」
それでこうして瀬玲を説得すれば全ての準備は整う。
瀬玲とあずーが配置し、タイミングを見計らって。
心輝もしきりに顔を振り回し、動向を見逃さない。
なんだかんだで当人は本気なのだろう。
なら後は二人が同時にマルを描けば、それが発射チャンスの時だ。
ちゃながその時を待って魔剣に足を掛け続ける。
心輝を巻き込まない様にと距離を保って。
全ての発射タイミングを皆に預け、空を眺めたままに。
そして、遂にその時が訪れる。
瀬玲とあずーの視界から人影が消えて。
ならばと、車はこの際無視しして素早くマルを描く。
それに心輝が気付けば、途端に左腕が掲げられる事に。
「よし、今だ田中ちゃんッ!!」
「はいッ!!」
それが合図だった。
するとたちまち、その声と共に魔剣から赤い光が「バチチッ」と弾け始めて。
大気を焼き、薄白い煙がアスファルトを這う様に吹き出していく。
それと同時にとうとうカウントダウンが始まった。
「スリィー!!」
その度に、炎が噴き出す。
アスファルトを焼き、焦げ臭い香りを充満させて。
「トゥー!!」
更には魔剣が浮く。
ちゃなの体を支えながら。
「ワァンッ!!」
その末に、炎が赤々と噴出されて。
思わず心輝がたじろぎ足を引かせる。
だがここで退く訳にはいかない。
ちゃなが自ら取った距離なら、危なくない事はもうわかっているから。
ならば信じて、彼女が空へと上がる所を見送ろう。
友の下へと送り届ける為に。
「テェイクオォーーーーーーフッッ!!!」
そして渾身の叫びが木霊した時、ちゃなの姿が瞬時にして視界から消える。
そう、飛び上がったのだ。
圧倒的な加速度を以って。
その所為で周囲はたちまち煙で覆われる事に。
だけど心輝達にはしっかり見えていた。
煙の尾を引いて、ちゃなが空の遥か彼方へ飛び上がるその雄姿を。
だから見届けずにはいられない。
その煙が見えなくなるその時まで。
自分達もまたやりきる事が出来たからこそ。
「コラァ、お前何してんだァ!!」
……が、どうやら感傷に浸っている余裕は無い様だ。
今の激音は近所の住人を怒らせるには充分だった。
どうやら全部心輝のやったイタズラだと思っているらしい。
おまけに軒先は煙まみれでとても出られたものじゃない。
それに激音や振動さえ凄まじかった。
ここまでやらかしてしまえば怒るのも当然か。
「やっべ! 退避だあッ!!」
ただもちろん心輝も捕まる訳にはいかない。
確かにここまでさせたのは当人だけれども。
なので空かさず走り逃げるという。
まさに煙を撒くかの様にして。
ちゃっかりこういう事も想定していた模様。
で、残された三人はそれから無事に合流。
けれどそのまま帰るつもりはなさそうだ。
「んじゃ、俺達も行くか!」
「シンの事だし、どうせそう言うと思った。ま、いいけどね、お年玉も貰ったし」
「行こう行こう! カプロ君にもまた会いたいしー!」
まだ高校生な三人にとっては少し贅沢な旅行となるけれど。
それでも赴く理由があるから抵抗は無い。
むしろ友が居るからこそ、戦いでなければ共に行きたいとも思うものだ。
故に今、三人は小遣いを持って駅へと向かう。
もちろん、親にちゃんと本当の理由を伝えた上で。
この間のクリスマスパーティでアルライ族と会って、もう隠す必要は無いから。
お陰で今、三人の気持ちはとても清々しかった。
堂々と胸を張ってカプロ達にも会いに行けるから。
ならもう、走って行く事だって躊躇いはしない。
その一方で、ちゃなはしっかりと空を突き抜けていた。
魔剣に括り付けたスマートフォンの地図を頼りに。
「待っててくださいね、勇さんッ!!」
後はただ目的地へと向けて真っ直ぐ突き進むのみ。
道中の航空機などにも気を付けつつ。
そうして青空に一筋の飛行機雲が形成されていく。
赤い炎をチラチラと瞬かせながら。
友が繋いでくれた想いを無駄にしない為にも。
待ち焦がれているであろう勇の為にも。
今、その力を存分に奮って。
0
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常
ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」
帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。
さて。
「とりあえず──妹と家族は救わないと」
あと金持ちになって、ニート三昧だな。
こっちは地球と環境が違いすぎるし。
やりたい事が多いな。
「さ、お別れの時間だ」
これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。
※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。
※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。
ゆっくり投稿です。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる