時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

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第十二節「折れた翼 友の想い 希望の片翼」

~やる気だけは十分~

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 アルライの里から帰った翌日。
 勇を含めてしっかり登校を果たし、現在は昼休みだ。

 そんな中、五人が階段の屋上前に集まって話し合い。
 ここでようやく先日までの話を伝える事に。

「――という訳で里に行く事になって。でカプロ達に修理してもらう事になったんだ」

「それで左足がおかしかったんだ」

「あの伝説の剣もおしゃかかぁ、もったいねーなー」

 色々と話を纏める必要もあったので、今日までかかってしまった。
 今までおざなりにしていた事をきちんと伝えたかったから。
 気遣いが足りなくて迷惑を掛けたお詫びにと。

 でもこうして話せば三人ともわかってくれる。
 お陰で今では随分と穏やかだ。

「で、三人とも魔剣はもう持ってきてるのか?」

「あるよー! 今は教室だけど」

 もっとも、三人としてはもう蟠りなど一切無いけれど。
 魔剣という力を手に入れた以上は。

「でもくれぐれも露出はしないでくれよな。専用鞄くらいは買ってもいいと思う」

「だな。その点、俺の相棒は小さいから普通の鞄で平気だぜ」

「私も何とかしないとな。今は弓道具に入れられるけど、もう使えないし」

 皆、ちゃんと勇の言いつけを守っている。
 魔剣は出来る限り肌身離さず、と。
 さすがに学校に居る時までは無理でも、普段くらいは。

 こうして平常時にも身に着けて置く事で命力は成長するから。
 出来る限りに、少しでも高めて貰わなければならない。

 いつ来るかもわからない実戦へ備える為に。

「あ、そうか。部活も辞めなきゃならないんだったな」

「おう、だから朝一番で辞めて来たぜ」

「私も」

「はえーよお前ら」

「あ、あちしまだだぁー!」

 その為にはある程度、私生活を切り捨てなければならない。
 心輝達ももう命力を使える以上、常人と比べてはいけない存在だから。
 魔剣使いになる事を選んだからにはもう拒否など出来ないのだ。

 それに、これから急いで既成事実も作らなければならないから。

「で、魔剣が造れる様になった事は福留さんに言ったの?」

「いや、まだだ。もしかしたらもう知ってるかもしれないけどね。だけどもし知らないなら、報せるタイミングはもう少し後にしたい。出来れば今週末くらいに」

「なんでですか?」

「皆が魔剣を没収されない様にする為だよ」

 そう、勇は今粛々と準備を進めている。
 福留へと正しい形で魔剣の事を伝える為に。

 もし心輝達が素人同然の時に魔剣を得た事を福留が知ったならば。
 ただでさえ子供に戦わせる事を望まない人だから、どう動くか予想出来ない。
 勇の言う通り、没収される事もあり得るだろう。

「それに、お前等が魔剣得た事知ったら、カプロの事だってわかるだろ」

「あーそっか。そういうリスクあったんだね」

 もちろん心配はそれだけには留まらない。
 同時にカプロが魔剣を造れる様になった事も知られるから、用心しなければ。
 例え福留が平気でも、村野防衛大臣いしあたま辺りが知ってしまえばどうなる事か。

 最悪、アルライの里が炎に包まれる可能性だってあるのだから。

 魔者の殺し方はもう知られている。
 なら報復を盾に魔剣の要求さえしかねない。
 なにせ相手は人間ではないのだから。
 それだけ危険な武器だからこそ、情報漏洩は可能な限り避けなければ。

 グゥがそうして自らの命を棄てようとしていたのと同じ様に。

「カプロはそう簡単に魔剣を渡さないだろうし、だとすると今の関係がこじれる事だってあり得るんだ。そしたら防衛庁が動きかねない」

「え、それヤバくね?」

「ヤバいに決まってるだろ。まぁそうなったら俺はカプロ達に付くけどな」

「私もそうします。その為だったら基地を爆破する事だって……!」

「田中さんがそう言うと現実味があり過ぎて怖いんだけど?」

 それこそ戦いになれば酷くなるだろう。
 人間 対 魔者という構図が現代でも完成だ。
 こうなるとアージやマヴォも参戦するだろうから被害は計り知れない。

 それにあの剣聖だって動きかねない問題となるかもしれないし。
 そうなってしまえば最後、『こちら側』と『あちら側』の全面戦争にもなりかねない。

「でも伝えないのはもっとダメだ。だから少しでも皆に魔剣を慣れてもらう。仕方ないと思われるくらいにな」

 そうならない為にも、この一週間――いや五日間が勝負となる。
 その為になら例え学校を休む事も厭わないくらいの気持ちで。

 でもそれもそれで怪しまれるので、あくまでも平凡に。

「という訳であと四日間だけは連日、訓練棟に入り浸る事にする。灯台下暗し、あの場所なら福留さんもあんまり寄り付かないハズだからな」

「でも、それで強くなれる確証あるの?」

「ある。まぁそこまで強くならなくても、基礎は突破出来るハズさ。俺の目論見が上手く行けばね」

 幸い、勇には考えている作戦がある。
 この短期間で福留を納得させられるくらいの実力に引き上げる算段が。

 少しだが、やらないよりはずっとマシだと。

 そんな訳で話し合いを終え、今日の夕方に備えて勉学を勤しむ。
 少しでも今の生活を維持する為にも、何事も真面目に。
 勇もちゃなも出席日数が足りていないからこそ必死になって。



 この一週間は勇達にとっての正念場となるだろう。
 そしてその結果、皆の想いの行き先が決まる事となる。

 そんな想いを無為にしない為にも、気を引き締めて特事部本部へと赴く。
 アルライの里で結び直した絆は、絶対に誰にも解かれたくないのだから。


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