時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

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第十三節「想い遠く 心の信 彼方へ放て」

~団結、全ては悪意を止める為に~

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 時刻は夜9時。

 東京駅近郊にある特事部本部……。
 そこには東京に集まり得る関係者が全て集まっていた。

 勇とちゃな、そしてその両親、心輝達、剣聖、レンネィ。
 そして福留とサポートの事務員達。

「―――以上が事の顛末です」

 勇が椅子に座り、彼等を前に今日起きた出来事を話し終えた。
 彼を取り囲む様に話を聞く者達のその中心で……勇のその口は悔しさからか、唇を強く噛み締め震えていた。

「……その獅堂とかいうヤロォ……絶対に許せねぇ……」
「そうね、そんな得体の知れない奴は早々に排除するべきだわ。 フェノーダラへの借りを返す為にも」

 様々な意見が飛び交うが、いずれも獅堂への攻撃を示唆するものばかりであった。

「皆さん少し落ち着いてください……。 皆さんはあくまでも国の要請で動かなければ我々もカバー出来る範囲が大きく違います」
「へっ、生ぬりぃなぁおっさん……そんなの完膚なきまでに砕いちまうだけでいいんだぁよ……」

 剣聖の言う事も最もだが……この国が法治国家である以上、必要以上の破壊行為は逆に自分達の立場を危うくしかねない。

「もうすぐ国上層部からの正式な通達が来ます。 それまでは情報の纏めを行いましょう」

 上手い具合に場を納めた福留を中心に話し合いが始まる。

「まず、彼の事に関して皆さんに話しておく必要があります」

 福留の口から獅堂の事が説明されると、そこに居る『こちら側』の人間から驚く事を示す様な唸り声が聞こえ始めた。

 獅堂雄英という人間……彼は日本の財界に君臨する一つの財閥の御曹司であり、将来は日本の未来を担うであろう若者であった事。
 獅堂グループの頭領たる彼の父親に見限られ、自分の居場所を失った……と思い込んでいる事。
 そして彼が妙に勇に対して固執しているという事。

「……彼の父親は決して彼を見限ってはいませんでした……ただ、負けぬ心を持ってほしい……そう言っていました」
「坊ちゃんだからこその敗北感とかそんななのかな……」
「恐らくは。 彼は純粋ですからね……純粋なくらいに……歪んでしまったのでしょう」
「へっ……所詮はガキってこったろ……」

 だが、力を持った餓鬼ほど残酷で醜悪なものは無い。

「先日、カプロ君より頂いた魔剣を彼に譲ってしまったという報告が有りました」
「譲ったってぇ、どういう事だよ?」
「判りません……研究員達は彼が責任者の様に振る舞っていたので渡してしまった……としか言っていませんでした」
「エリート故のエリートオーラ!!……が出てたのかも?」

 すると突然、オフィスチェアに体を乗せながら口を出すあずーのおでこに強烈なデコピンが飛び、途端「ぎゃわー」と叫びながら地面に倒れて悶え苦しみ始めた。

「解せないわね……幻惑の力を持つ魔剣の類かしら?」
「んなぁの大抵残ってねぇだろ……っつっても、フェノーダラを焼いたのは恐らく【ベリュム】だろうな」
「【ベリュム】ってそんな……!? あれは伝説にしかない魔剣じゃない!?」

 獅堂の話から外れる様に剣聖達が話を始める。
 その様子を静かに周囲が聞く中、静かに心輝が手を上げた。

「ちとレン姐さん質問」

 上手い彼女の呼び方を披露するも、それをスルーしながらレンネィが心輝の方を見る。

「なぁに?」
「【ベリュム】ってなんスか?」
「あぁ……【ベリュム】ってのはね……」
「遥か昔にとある王が持ってた凶悪な魔剣だぁよ」

 レンネィが自信満々に答えようとしていた所を剣聖に抜け駆けされ、彼女は彼の大きな胸板を拳で強く叩いた。
 しかしそれに全く動じる事も無く剣聖は説明を続ける。

「その威力は最大であれば国すら焼く巨大な魔剣ってぇ言われてる。 空の彼方にあるもんでなぁ、誰も手なんか出せやしねぇ」
「国を……!?」

 国と言っても彼等にとっての規模の国であり、大陸全土を焼く程ではないだろう……しかしそれでも十分驚異的と言えるだろう。

「んまぁ、力を溜めるのに最大で数年とか言われてるレベルの魔剣だがなぁ……そんな魔剣を持っていた王が周囲を脅す為に力を振るおうとしたんだぁよ」

 そこで語りを止めると……腕を組み、感慨深そうに頷く。

「それで……?」

 もったいぶる剣聖に心輝が追撃を掛ける。
 その気になった剣聖は得意げにニヤリと笑みを見せると、語りを続けた。

「そりゃもう予想通りの展開よぉ……周囲から反感を買った王は多数の国に同時に襲われ結局その際に魔剣を操る触媒は壊されたっていう話だ」
「んじゃもう動く訳無いじゃないッスかぁ……冗談キツイよソーマさん!!」
「んだから憶測だっつってんだろうがクソガキが……大体なんだ、その『そーま』ってのは!?」
「ソード・マスター……だからソーマさんって事ッスよお」

 その瞬間彼の頭にきついゲンコツが飛んだ。

ゴォン!!

「いってぇええええ!!」

 途端心輝もまた倒れ込み、あずーと友に転がり始める。
 だが雰囲気が雰囲気なだけに……笑いが飛ぶ事は無かった。

「馬鹿野郎が……名前ってのはなぁ、力の根源なんだよ!! それを略すたぁ以ての外だぁ!!」
「す、すんません!!」

 剣聖が鼻息を荒げながら「ったく……」と呟き、再び両腕を組み直す。
 予想外の場外乱闘に呑まれながらも……福留が「まぁまぁ」と手を掲げて場を諫めた。

「と……とりあえず、仮定を真実として捉えると……彼はその【ベリュム】という力でフェノーダラを焼いた……そして何かしらの幻惑能力を持つ……そうですね?」
「恐らくはな。 だが大昔の大戦時にそういった類の魔剣は殆ど失って効力が解らねぇ物も多い……なんせ文献なんか殆どねぇからな」

 彼等の伝説……遥か昔に創世の女神によって戦う力を得た魔者達と、彼等を認めない人間達との血で血を洗う争いがあった時代。
 神話とも呼べる彼等の伝説は、その凄惨さ故に残る記録はほとんど無いと剣聖は言う。

「まぁ、この伝説はあくまで人間側の話だ。 魔者側ともなりゃ全く違った観点でなぁ……後は知りたきゃ自分らで調べな」

 創世の女神の史観……それは人間と魔者とでそれは大きく異なる……今まで勇達が聞いてきた事だ。
 それと同様に魔剣にも伝説があり、人間と魔者で知る真実は異なるのだろう。

「これでは彼の行動が読めないと……手の打ちどころがありませんねぇ……」

 するとそこにちゃなが口を挟む。

「勇さんがが気を取り戻した時は私が命力を込めて強く殴ったので……もしかしたら強い衝撃とかで治るのかも……」
「おぉ、成程……」
「まぁその可能性も否定出来ねぇな……とはいえ俺が殴ったらどいつも生きて立ち上がれねぇだろうけどなぁ……ッヘヘ」
「うっへぇ……剣聖さん加減してくださいよぉ!?」

 その途端笑い声が事務所内に木霊する。
 少なからず緊張を解そうとする意図もあったのだろう……そんな様子を前に、剣聖が「フッ」と笑みを浮かべていた。

「可能性があるのであれば、何とかなるかもしれませんね……出来うる限りの戦力が必要になるかもしれませんが」

 戦力……そこに居合わせた者達が福留の考えうる全てだった。
 だが世の中には例外も在り得るものだ。
 
 彼等が語り合っていると……不意に部屋の外から声が上がった。

「話は大体聞かせてもらった……俺も行こう……そんな危険な奴は俺達白の兄弟としても見逃すわけにはいかん」

 その声と共に部屋の外から姿を現したのはアージであった。

「ア……アージさん来るんすか!? でもマヴォさんはまだ体治ってないッスよね?」
「無論奴は置いていく……俺だけ同行させてもらう」

 まだマヴォはリハビリが必要であり、訓練こそ行ってはいるがあくまでも衰えた体力を戻す為だ。
 とはいえアージ単体でも勇と同等の力を持つ……十分過ぎる程の戦力と言えるだろう。

「アージさんが来てくれれば鬼に金棒ですねぇ」
「おう、なら俺も行くぜ……フェノーダラには借りが有るからなぁ」
「復讐は無意味とか俺に言ってませんでしたっけ……」
「へへ、これは復讐なんかじゃねぇ、いわゆる『オレイマワリ』ってやつよ」
「な、成程……。 随分日本語覚えてきたんスねー……」

 微妙に意味が違う気もするが、暴れたいという意思だけははっきりと判る。

 すると事務所の電話が鳴り響き……事務員がすかさず電話に出ると、福留へと繋ぐ。
 福留が受話器を取ると、そこからは総理の声が聞こえてきた。

『臨時総会の結果が出た……』
「それで、結果は……はい……分かりました」

 福留が総理と短い対話を交わすと、物の数秒で通話は終了する。
 そして受話器を置くと……皆を見る様に顔を上げた。

「国からの正式要請です……獅堂雄英を……止めろと」
「そうこなくちゃね」
「ボッコボコにしてやんよ!!」

 周囲が沸き上がり、その気迫を事務所内一杯に広げる。
 打倒獅堂……その想いが闘志を湧かせ、彼等の気持ちを一つにしたのだった。


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