426 / 1,197
第十四節「新たな道 時を越え 心を越えて」
~藤咲勇と田中茶奈~
しおりを挟む
茶奈が校舎裏から回り込む様に歩き、周囲を見渡しながら勇を探す。
しかしどこを見ても彼の姿は見つからない。
「勇さん……またあそこかな……」
そうぼそりと呟くと、彼女は周囲に人が居ないかどうかを確かめる様に辺りを見回し始めた。
その時彼女の視界に映ったのは……校舎と敷地内に立つ大きな木の合間。
そこを見つけた茶奈は周囲を確認しつつ、その場所へと足を運ぶと……両腕を左右に広げその手に命力を込める。
すると彼女の周囲の空気が持ち上がる様に動き、彼女の着る制服や柔らかい髪がゆらゆらと揺らぎ始めた。
「んっ!!」
ボウッ!!
その瞬間、低く弾ける様な音と共に彼女の体が高く高く飛び上がった。
あっという間に校舎の上空にまで到達した彼女の体が、青い空の下に晒される。
露出した肌が太陽の光を吸い込んで白く瞬かせながら……彼女はその肢体を手馴れた様にくるりと捻り、弧を描いた。
誰にも気付かれる事無く……彼女の軽い体が校舎の屋上へと到達し、堅い靴底がコンクリート製の床に当たって高々な音を響かせる。
そんな彼女の視線の先は屋上入り口を覆う壁……視界にはそこにもたれかかる勇の姿が映っていた。
「勇さん、やっぱりここにいた……」
「茶奈……どうしてここに?」
彼女の突然の登場に気付いた、勇が驚いた顔で彼女を見つめる。
勇が驚いたのは彼女が跳んできたからではなく、単に彼を追ってやってきた事に対してだ。
「最近勇さんは目を離すとすぐ一人になろうとするので心配なんです」
少し尖った様な口調でそう語ると……茶奈はゆっくり勇の下へ歩み寄っていく。
「ごめんな、静かに過ごしたくてさ」
「それなら静かに隣に居ますから」
茶奈は勇の傍まで来ると、彼と同様に壁にもたれかかり空へ視線を移す。
勇もまた彼女に釣られる様に空を見上げた。
二人の頭上に広がるのは一面の青。
透き通った白を淡く抱く空色は、ただ見るだけでその心を落ち着かせる程に壮大で……それでいて、何者も混じる事の無い孤独だった。
彼の左目が空と同じ青の瞳を覗かせ、日光を吸い込んでその色を白く輝かせる。
空と一つに成りそうな程に……そのコントラストは空の景色に馴染んでいた。
「またコンタクト外して……また風に飛ばされても知りませんよ?」
「はは……ごめん、目が乾いちゃってさ」
獅堂との戦いの折、勇の左目の網膜はエウリィと同じ空色へと変化した。
それは戦いが終わった今でも治す事無く、なお在り続けている。
それが目立つのは不味いという事もあり、普段はカラーコンタクトを付けて誤魔化している訳だ。
再び手に持っていたコンタクトを手馴れた様に左目へ着けると、以前と同じ濃い茶色の瞳が両目に揃う。
よく見ればそのコンタクトの裏から若干青い瞳が透けて覗かせていた。
春の風が二人を煽り、時折髪を揺する。
気付けば世界が変わりもう1年……そのたった1年で勇という少年の人生は大きく変わったのだ。
「なぁ茶奈……」
「うん?」
その1年で茶奈という少女の人生も大きく変わった。
「……風、気持ちいいね……」
「……うん……私好きだよ、この風」
大きく変わった世界……しかしこの普段の生活は何も変わらない……。
そんな毎日が訪れ続けたらいい……そう思いたくもなろう。
そう思う程までに彼等の人生は大きく変わったのだ。
しかしどこを見ても彼の姿は見つからない。
「勇さん……またあそこかな……」
そうぼそりと呟くと、彼女は周囲に人が居ないかどうかを確かめる様に辺りを見回し始めた。
その時彼女の視界に映ったのは……校舎と敷地内に立つ大きな木の合間。
そこを見つけた茶奈は周囲を確認しつつ、その場所へと足を運ぶと……両腕を左右に広げその手に命力を込める。
すると彼女の周囲の空気が持ち上がる様に動き、彼女の着る制服や柔らかい髪がゆらゆらと揺らぎ始めた。
「んっ!!」
ボウッ!!
その瞬間、低く弾ける様な音と共に彼女の体が高く高く飛び上がった。
あっという間に校舎の上空にまで到達した彼女の体が、青い空の下に晒される。
露出した肌が太陽の光を吸い込んで白く瞬かせながら……彼女はその肢体を手馴れた様にくるりと捻り、弧を描いた。
誰にも気付かれる事無く……彼女の軽い体が校舎の屋上へと到達し、堅い靴底がコンクリート製の床に当たって高々な音を響かせる。
そんな彼女の視線の先は屋上入り口を覆う壁……視界にはそこにもたれかかる勇の姿が映っていた。
「勇さん、やっぱりここにいた……」
「茶奈……どうしてここに?」
彼女の突然の登場に気付いた、勇が驚いた顔で彼女を見つめる。
勇が驚いたのは彼女が跳んできたからではなく、単に彼を追ってやってきた事に対してだ。
「最近勇さんは目を離すとすぐ一人になろうとするので心配なんです」
少し尖った様な口調でそう語ると……茶奈はゆっくり勇の下へ歩み寄っていく。
「ごめんな、静かに過ごしたくてさ」
「それなら静かに隣に居ますから」
茶奈は勇の傍まで来ると、彼と同様に壁にもたれかかり空へ視線を移す。
勇もまた彼女に釣られる様に空を見上げた。
二人の頭上に広がるのは一面の青。
透き通った白を淡く抱く空色は、ただ見るだけでその心を落ち着かせる程に壮大で……それでいて、何者も混じる事の無い孤独だった。
彼の左目が空と同じ青の瞳を覗かせ、日光を吸い込んでその色を白く輝かせる。
空と一つに成りそうな程に……そのコントラストは空の景色に馴染んでいた。
「またコンタクト外して……また風に飛ばされても知りませんよ?」
「はは……ごめん、目が乾いちゃってさ」
獅堂との戦いの折、勇の左目の網膜はエウリィと同じ空色へと変化した。
それは戦いが終わった今でも治す事無く、なお在り続けている。
それが目立つのは不味いという事もあり、普段はカラーコンタクトを付けて誤魔化している訳だ。
再び手に持っていたコンタクトを手馴れた様に左目へ着けると、以前と同じ濃い茶色の瞳が両目に揃う。
よく見ればそのコンタクトの裏から若干青い瞳が透けて覗かせていた。
春の風が二人を煽り、時折髪を揺する。
気付けば世界が変わりもう1年……そのたった1年で勇という少年の人生は大きく変わったのだ。
「なぁ茶奈……」
「うん?」
その1年で茶奈という少女の人生も大きく変わった。
「……風、気持ちいいね……」
「……うん……私好きだよ、この風」
大きく変わった世界……しかしこの普段の生活は何も変わらない……。
そんな毎日が訪れ続けたらいい……そう思いたくもなろう。
そう思う程までに彼等の人生は大きく変わったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】魔法大戦 〜失われた古代魔法で無双する!〜
加瀬 一葉
ファンタジー
王立魔法学校。高等部に編入してきた冴えない生徒ラフィト。エリートが集うこの学校で、辺境出身のラフィトは落ちこぼれの劣等生なのだが……。
実は彼は、失われたはずの古代魔法を操る一族の末裔。魔族の脅威が増す時代に、ラフィトは人類を救うことができるのか?
過去と現在が交錯する、魔法ファンタジー。
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密
藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。
そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。
しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。
過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~
下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。
二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。
帝国は武力を求めていたのだ。
フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。
帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。
「ここから逃げて、田舎に籠るか」
給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。
帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。
鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。
「私も連れて行ってください、お兄様」
「いやだ」
止めるフェアに、強引なマトビア。
なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。
※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる