時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

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第十五節「戦士達の道標 巡る想い 集いし絆」

~出現、異質なる傭兵~

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「茶奈、動向はどう?」

 丘の上で瀬玲がインカムに手を充てて茶奈へと応答を請う。
 すると間も無く、フェードインする爆音と共に彼女の声が聞こえ始めた。

『―――勇さんがもうすぐ中心部に到達します!!』
「分かった。 そろそろ操作圏外に出るから、茶奈はそこで待機お願い」
『分かりました』

 インカムから手を離すと、腰に備えた双眼鏡に手を伸ばす。
 片手で器用に双眼鏡のピントを合わせつつ茶奈へ向けて視線を合わせると、彼女の動向を逃さず見つめ続けた。

 途端、再び茶奈が腕を奮い指を差す仕草が映り込む。

『二時の方向!!』

 そう聞こえた途端、瀬玲の左手に掴む魔剣が光を放った。

 それと同時に、覗く双眼鏡に映る矢弾の軌道光……全ては彼女の思うがままに操作されて放たれる射撃だったのだ。

『一人に当たりました!!』
「致命傷になってない?」
『大丈夫みたいです、痛がってますけど……』

 思わず瀬玲の口から安堵の溜息が漏れる。

 彼女のみならず、仲間達は全員魔者達に致命傷を負わせない様に戦っている。
 それはあくまで、彼等が未だ『殲滅に値する存在である』といった決定的な証拠が無いからだ。

 魔者は知能を持つ生き物。
 人間の様に考え、思考し、判断する高等生物だ。
 種族によっては人間の生活に順応し、人間の機械を使いこなす者も居る程。
 少なくとも……勇達にも、同調して仲良くなった魔者達が多数存在する。

 そしてこれからも戦うのではなく話し合う事が出来るかもしれないからこそ……彼等は出来うる限りの犠牲を避けて戦う事を基本としていた。

 それは勇を初めとして、仲間達がこの2年間で培ってきた一つの理念である。

 だがもし、相手が倒さねばならない悪意を持った相手なのであれば……勇達は迷わず力を奮うだろう。
 全ては闘争を無くす為に……。





 茶奈と瀬玲の援護の下、勇は一人ボノゴ族達の街に通じるであろう丘の中腹部へと到達していた。
 多くの魔者達の妨害に怯む事も無く……彼は誰一人殺傷せずに戦闘意思のみを確実に削いで突き進んでいく。

 勇の卓越した動きは並みの魔者では捉える事は出来ない。
 地を、木々を、あらゆる地形を利用した縦横無尽の動きに翻弄され、彼の姿をまともに掴む事無く地に伏していた。

 気付けば立つ者はまばら……残る者も穴蔵に身を潜め、隠れて逃げ惑う。

「戦意は無し……か?」

 その雰囲気に、ボノゴ族は聞いていたよりもどこか戦闘意欲が薄い種族だと感じさせる。

 魔者の中には怯む事はあっても戦いを止める事が無い獰猛な種族も存在する。
 知能が低かったり、戦う事を美徳とする文化を持っていたり……理由は様々だが、そういった者達は大概躊躇する事無く人間の命を奪う。

 だが勇達へ対応を依頼したアメリカ政府のオブザーバー曰く、死者は出ていないとの事。
 それが彼等への交渉の可能性を秘めていると言っても過言では無いが……油断は禁物である。

「ウッ……!! あれは……!!」

 その時、勇の目に一人の人影が映り込む。

 穴蔵からのそりと姿を現したのは……ボノゴ族とは全く異なる容姿を持った大柄の魔者。
 その手に持つのは、妖しい光を放つ一本の長剣。

「魔剣使い……かッ!!」

 突然現れた存在に、勇は魔剣を構え腰を僅かに屈める。
 彼の目の前に現れたのは、魔者の魔剣使いだった。

 魔剣とは本来魔者の武器と言われている。
 太古の昔……彼等の世界で魔者の為に造られた魔剣が発端となり、人間と魔者で戦いが今に至るまでに続いた。
 もちろんそれは『あちら側』の世界の理であるが……世界が混ざり合った現在、その理は当事者である勇達にも耳に入っている事だ。

「ククッ……久しぶりの戦いだぜぇ……!!」

 その者、まるでトカゲの様に波打つ青の鱗を持ち、2メートルはあろう長身を誇る肩幅の広い魔者であった。
 鱗の隙間からは体毛すら生え、トカゲとゴリラを足して二で割った様な容姿を誇っていた。

 ボノゴ達とは異なり殺意を持った視線を勇に向け、魔剣を構える。

「雇われてこの方、暴れる事なんざ滅多に無かったからなぁ~……クヒヒッ!!」

 魔剣は簡単に造る事は適わない……それ故に残存個数は限られている。
 だからこそ魔剣を手にした者は特異の存在となる為……用心棒の様に雇われては防衛や侵攻に一役買うという訳だ。
 これは魔者に限らず、人間側でも同様の事。
 魔剣を得る事で象徴として国の長、種族の長に収まる者すら居る程。

「悪いがァ……俺の為に死んでくれやァーーー!!」

 そう叫ぶと同時に魔者の魔剣使いが凄まじい勢いで飛び出した。
 剣の切っ先を勇へ向け、一気に貫く。



 だが、その一撃は……ただ空を突くのみだった。



「あ……れ……?」



 全ては一瞬。



 勇は目にも止まらぬ速さで飛び込み……その勢いを利用する様に剣を斬り上げ、突き出された魔剣の刀身を根本から叩き斬っていたのだ。

 そしてそれだけには留まらない。

 剣を斬り上げた事で生まれた遠心力を利用し、軸芯を中心に彼の体がぐるりと高速で回りながら宙を舞う。
 到達するのは……魔者の頭上。



ドガッ!!



 その瞬間……呆気に取られていた魔者の後頭部へ、翠星剣を握った拳での裏拳が打ち抜かれた。



「アガッ!?」

 凄まじい力で叩き付けられ、魔者はたちまち激しい衝撃のままに弾き飛ばされ大地へ転げていく。
 そしてその勢いが止まった時……魔者はピクリとも動く事無く、大地へと伏したのだった。



 たった一撃の下に。



 そのまま何事も無かったかの様に着地を果たし……そっと腰を起こす。
 気付けば彼の周囲は静寂が包み、湿気一つ感じない乾燥した空気が乾いた音を鳴り響かせるのみであった。

 攻撃意思の沈黙を悟った勇はおもむろにインカムへと手を伸ばす。

「魔剣使いが居たけど、叩き伏せておいた……まだ他にも居ないとも限らない、警戒してくれ」
『マジかよ!? つか瞬殺かよ……速過ぎだろ!!』

 堪らず心輝の驚きの声が漏れてきた。

「穴の内部が判らない以上、まだ侵入は待とう。 シンとあずの行動が落ち着いたら教えてくれ」
『おっけぇー!!』

 通信を終えると……勇はようやく剣の切っ先を大地へ落とし、肩の力を抜く。
 「フゥ」と一つ、疲れの乗った息を吐き出すと……その視線を僅かに大地へ向けた。

「まだ……ここからが問題だな」

 その視線の先に在るのは穴蔵。
 得体の知れぬ先に待つのは……果たして―――


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