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第十七節「厳しき現実 触れ合える心 本心大爆発」
~カレラ ノ ニチジョウ~
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魔剣使い総当たりレースが終わり二週間が過ぎた。
あの時の熱気も広くて狭いサーキットの中での話……世界は何も変わらない。
2年前のあの時から、何も変わらない。
昼過ぎ……街の一角にチャイムの電子音が鳴り響く。
その出どころは、公立白代高校……かつて勇、茶奈、心輝、瀬玲が通っていた高校だ。
それは終業を告げる鐘の音。
そしてそれを待ち焦がれたかのように……一人の人影が走る事を禁じられた筈の廊下へと急ぎ駆け出した。
「ちょっとあず!?」
長い二つのお下げを巻き上げながら勢いよく飛び出したのは、天然マイペース娘……あずーだった。
「あ、ごめんねーアキちゃん!! アタシもう行かなきゃー!!」
待ち構えていたかのように外に居た愛希に呼び止められるも、あずーは止まる事無く猛スピードで校舎を走り去る。
今にもけたたましいエンジン音が響いてきそうな程の勢いで。
あっという間に姿を消し……置いてけぼりな愛希が呆れ顔でガクリと肩を落とした。
「ハァ……アイツ最近付き合い悪くない?」
「アキがそう思うのも無理は無いけど、なんかやたら最近あずーに執心だよね?」
「そーそ、茶奈居なくなってから? もしかしてアキィ……」
その隣から風香と藍が彼女の呟きを拾い上げてはツッコミを入れる。
こんな風景も彼女達にとっては日常茶飯事。
「んなっ……訳あるかいっ!!」
そんな精一杯のツッコミが飛ぶのも……大体は日常茶飯事である。
彼女達は茶奈の元同級生であり、茶奈やあずーの友人である。
元々は茶奈へいじめを行っていた事もあったが和解し、今では茶奈達の事情は知らないまでも彼女の心の支えの一人とも言える存在であった。
とはいえ、学校を退学した茶奈や最近構ってくれないあずーに対して僅かながら寂しさを感じる様で。
「茶奈が忙しいのは判るんだけどさぁ~あずが忙しいのは未だわからないんだよね」
まるで同意を求めるかの様に後ろの二人へ振り向くが……そんな事が二人もわかる訳もなく。
お互い「やれやれ」と呆れた様なジェスチャーで愛希に返すと、彼女もまた「ハァ」と小さな溜息を漏らした。
結局彼女達はいつもの様に三人揃い踏みで……哀愁漂う背中を校舎に向け、学校を後にしたのだった。
―――
学生達が帰宅を始め、また部活に青春を費やす……そんな時間帯―――
魔特隊本部敷地内ではメンバー達がそれぞれの修練に励む姿がちらほらと見受けられた。
レースで得た教訓を元に、皆が以前よりも身に力を入れて練習に励むようになっていたのだ。
心輝やアージだけではない。
力不足を感じた者、何かのキッカケを得た者……理由は様々であったが、目指す方向性を掴む事が出来ただけでも大きな進歩と言える。
学業に勤しんでいたはずのあずーも学校を飛び出してそのまま本部へと足を運ぶ事が増えていた。
その様子こそ、いつもの彼女ではあったが……彼等の姿に触発されたのだろう。
そんな仲間達が修練を積むグラウンドの地下……魔剣使い用の訓練空間。
薄暗く広い空間の中に、火花を散らし合う二人の戦士の姿があった。
チュィィィンッ!!
パァーーーンッ!!
お互いの魔剣が当たり、その合間から小さな光の粒が弾け飛んでは異音を生む。
コンクリートに囲まれたその広大な空間を所せましと二人の影が飛び交い、交わる度に命力の光が幾度も弾けて舞い散った。
その度に淡く見え隠れする戦士達の輪郭。
反響率の高い空間なのだろう……炸裂音とも思える豪音が空間一杯に広がる様に響いていく。
キュワァンッ!!
ギャリギャリ……!!
二人の影が広場中央でお互いの攻撃を受け合い立ち止まる。
反発する力に負けぬ様、互いが力を込めて押し出すが……その均衡はなお保たれたままだ。
「どうしたの……まさかその程度ではないでしょう?」
「くっ……!!」
激しい火花状の光が連続的に打ち放たれ、二人の輪郭がハッキリと姿を晒した。
斬り掛かっていたのは勇。
それを受けるのはラクアンツェ。
ここぞとばかりに激しい光を打ち放ち振り下ろされた翠星剣は、交差された両腕によって受け止められていた。
拮抗してるかのようにも見える状況だが、それはラクアンツェが加減しているに過ぎない。
己の力量がその程度である、と知らしめる為に敢えて拮抗状態を作り出しているのだ。
勿論それは勇自身も知る所であるが。
チュイィーーーン!!
剣を滑らせ弾き、その勢いで後ろに跳ねて距離を取る。
横一閃に軌道を描いた翠星剣はそのまま水平状態で維持されたまま構えられた。
二人の間に距離が開き、それが膠着と沈黙を呼ぶ。
だがそれは意図して生まれたモノではない。
勇の額から流れるのは並々ならぬ汗。
それが戦闘の長さ、激しさを物語っていた。
「ハァッ……ハァッ……ッ!!」
トンッ……
呼吸の合間、再び勇のつま先が床を突いた。
小さな音とは裏腹に……目にも止まらぬ速さでラクアンツェとの距離を詰める。
瞬時にして彼女の背後へと回り込み、再び床を突く。
その身が鋭く切り返し、ラクアンツェへと一直線に迫った。
光を伴った斬撃が水平の軌跡を描き、その首へと真っ直ぐ振り抜かれ―――
―――残光を引いて、空気を裂いた。
勇の顔に浮かぶのは引きつり食いしばった表情。
―――これを躱すのかよッ!?―――
途端、彼の目下から恐ろしいまでの気迫と共に銀色の拳が突き上げられる。
命力の籠った一撃が強い光を帯びるが……間一髪、勇は顎を上げて拳を避けきった。
―――反応速度は上々……けれどっ―――
だがその瞬間、勇の腹部に強い衝撃が走る。
顎を上げた事で下半身の防御が疎かとなり、ラクアンツェの追撃に対応する事が出来なかったのだ。
「ごはァッ!!?」
途端、勇の体が勢いよく宙へと打ち上げられる。
そして勢いのままに訓練場の壁へと激しく打ち付けられたのだった。
ダァーーン!!
「かはッ!!」
壁が壊れるほどの衝撃ではないものの、激しい衝撃が彼の体に響き渡った。
間も無く体が「ズルリ」と地表へ引かれる。
まるで貼り付いた壁から剥がれる様に……勇の体が壁から離れ、遂には「ベシャリ」という音と共に床へと落下した。
力無く床に横たわる勇……もはやピクリとも動きはしない。
僅かな間を静寂が支配するも……ふと、「カツッカツッ」と床を叩く靴の音が響き始める。
足音たるその靴の音が徐々に勇の体に近づくと止まり……その代わりに慈しみを孕んだ声が優しく響き渡った。
「今日はここまでにしておきましょうか」
そう言われるや、勇の体がピクリと動き……手に掴んでいた翠星剣を「カラリ」と落とす。
「あ、ありがとう……ございました……」
床を背けて覗く顔から放たれる精一杯の声。
もはや彼は体を動かす事すらままならない程に……疲弊しきっていた。
熱く火照った体を冷たいコンクリート製の床がひんやりと癒す。
精一杯戦いきった彼は、色気無き心地良さを味わうかのように……そのまま体を休ませたのだった。
ラクアンツェが一つ心に物思いに耽る。
それは藤咲勇という特異な存在そのものに対して。
勇の身体能力の成長度合いは、他の仲間達や彼女が過去に出会った魔剣使いと比べてもかなりの卓越したモノだった。
では何故そう思えるのか……。
魔剣使いは元来、魔剣を極める為に命力を鍛える事に着眼点を置く傾向がある。
命力を鍛える事は目に見えて強くなる事、ひいてはその強くなる度合いが強いからだ。
だがいずれもそれらはそのうち頭打ちとなる事がわかっていた。
それが命力というものだから。
大なれ小なれど……当人が持ち得る才能とも言える命力量を超える事は出来ない。
そしてそれに満足した者達はすべからく鍛える事を辞めた。
それが真理……誰もが辿り着く境地とも言える終着点。
……そう思っていた。
だが、そこに限界を感じ……新たな修練方法を模索し、確立した者がいた。
―――その名は剣聖―――
彼は肉体の成長と命力の成長を並行して行う事で己が限界と才能をを越え、その先に到達する事が出来ると自身の肉体で証明したのだ。
そしてそれを知った他の二人もまた、同様に限界を超える事となった。
それが三剣魔と呼ばれる所以ともなった彼等の強さの秘密。
―――そして彼もまた、剣聖と同じ結論を導き出そうとしている―――
教えられた訳ではない。
答えがあった訳でもない。
それは勇自身が考え、導き、そして体現した結論。
床に伏す勇の姿を眺めながら瞳を窄める。
その鋭い眼差しは彼に対し密かな期待を込めているからこそ―――
「全く……貴方はどうしてこんな面白い事を見つけるのが得意なのかしらね」
「何か……言いました?」
「いいえ、独り言よ……今日はゆっくり休みなさい、次回がある様ならもっと激しく教えてあげるわぁ」
ラクアンツェの優しい口調での厳しい進言に、勇の口から堪らず「うへぇ……」という声が漏れる。
彼女はそんな声を前に「フフッ」と鼻で笑うと……そっと振り向き歩み出した。
その先に見えるのは、自分達の番を今かと待ち構えるアージ達の姿。
「さぁ、後がつかえているのだから、どんどん行くわよぉ~」
「応!! よろしく頼む!!」
その日突発的に行われる事となったラクアンツェによる実技戦闘訓練。
希望者にのみ実施する事となった訓練で、勇を始め、アージ、マヴォ、レンネィ、心輝が果敢にも彼女に戦いを挑んだのだった。
当然勝てる者が居る訳もなく。
僅か2時間程で総勢5人の希望者は揃い揃って完膚なきまでにボコボコにされてしまい……事後、訓練場の隅に転がる彼等の姿があったという。
あの時の熱気も広くて狭いサーキットの中での話……世界は何も変わらない。
2年前のあの時から、何も変わらない。
昼過ぎ……街の一角にチャイムの電子音が鳴り響く。
その出どころは、公立白代高校……かつて勇、茶奈、心輝、瀬玲が通っていた高校だ。
それは終業を告げる鐘の音。
そしてそれを待ち焦がれたかのように……一人の人影が走る事を禁じられた筈の廊下へと急ぎ駆け出した。
「ちょっとあず!?」
長い二つのお下げを巻き上げながら勢いよく飛び出したのは、天然マイペース娘……あずーだった。
「あ、ごめんねーアキちゃん!! アタシもう行かなきゃー!!」
待ち構えていたかのように外に居た愛希に呼び止められるも、あずーは止まる事無く猛スピードで校舎を走り去る。
今にもけたたましいエンジン音が響いてきそうな程の勢いで。
あっという間に姿を消し……置いてけぼりな愛希が呆れ顔でガクリと肩を落とした。
「ハァ……アイツ最近付き合い悪くない?」
「アキがそう思うのも無理は無いけど、なんかやたら最近あずーに執心だよね?」
「そーそ、茶奈居なくなってから? もしかしてアキィ……」
その隣から風香と藍が彼女の呟きを拾い上げてはツッコミを入れる。
こんな風景も彼女達にとっては日常茶飯事。
「んなっ……訳あるかいっ!!」
そんな精一杯のツッコミが飛ぶのも……大体は日常茶飯事である。
彼女達は茶奈の元同級生であり、茶奈やあずーの友人である。
元々は茶奈へいじめを行っていた事もあったが和解し、今では茶奈達の事情は知らないまでも彼女の心の支えの一人とも言える存在であった。
とはいえ、学校を退学した茶奈や最近構ってくれないあずーに対して僅かながら寂しさを感じる様で。
「茶奈が忙しいのは判るんだけどさぁ~あずが忙しいのは未だわからないんだよね」
まるで同意を求めるかの様に後ろの二人へ振り向くが……そんな事が二人もわかる訳もなく。
お互い「やれやれ」と呆れた様なジェスチャーで愛希に返すと、彼女もまた「ハァ」と小さな溜息を漏らした。
結局彼女達はいつもの様に三人揃い踏みで……哀愁漂う背中を校舎に向け、学校を後にしたのだった。
―――
学生達が帰宅を始め、また部活に青春を費やす……そんな時間帯―――
魔特隊本部敷地内ではメンバー達がそれぞれの修練に励む姿がちらほらと見受けられた。
レースで得た教訓を元に、皆が以前よりも身に力を入れて練習に励むようになっていたのだ。
心輝やアージだけではない。
力不足を感じた者、何かのキッカケを得た者……理由は様々であったが、目指す方向性を掴む事が出来ただけでも大きな進歩と言える。
学業に勤しんでいたはずのあずーも学校を飛び出してそのまま本部へと足を運ぶ事が増えていた。
その様子こそ、いつもの彼女ではあったが……彼等の姿に触発されたのだろう。
そんな仲間達が修練を積むグラウンドの地下……魔剣使い用の訓練空間。
薄暗く広い空間の中に、火花を散らし合う二人の戦士の姿があった。
チュィィィンッ!!
パァーーーンッ!!
お互いの魔剣が当たり、その合間から小さな光の粒が弾け飛んでは異音を生む。
コンクリートに囲まれたその広大な空間を所せましと二人の影が飛び交い、交わる度に命力の光が幾度も弾けて舞い散った。
その度に淡く見え隠れする戦士達の輪郭。
反響率の高い空間なのだろう……炸裂音とも思える豪音が空間一杯に広がる様に響いていく。
キュワァンッ!!
ギャリギャリ……!!
二人の影が広場中央でお互いの攻撃を受け合い立ち止まる。
反発する力に負けぬ様、互いが力を込めて押し出すが……その均衡はなお保たれたままだ。
「どうしたの……まさかその程度ではないでしょう?」
「くっ……!!」
激しい火花状の光が連続的に打ち放たれ、二人の輪郭がハッキリと姿を晒した。
斬り掛かっていたのは勇。
それを受けるのはラクアンツェ。
ここぞとばかりに激しい光を打ち放ち振り下ろされた翠星剣は、交差された両腕によって受け止められていた。
拮抗してるかのようにも見える状況だが、それはラクアンツェが加減しているに過ぎない。
己の力量がその程度である、と知らしめる為に敢えて拮抗状態を作り出しているのだ。
勿論それは勇自身も知る所であるが。
チュイィーーーン!!
剣を滑らせ弾き、その勢いで後ろに跳ねて距離を取る。
横一閃に軌道を描いた翠星剣はそのまま水平状態で維持されたまま構えられた。
二人の間に距離が開き、それが膠着と沈黙を呼ぶ。
だがそれは意図して生まれたモノではない。
勇の額から流れるのは並々ならぬ汗。
それが戦闘の長さ、激しさを物語っていた。
「ハァッ……ハァッ……ッ!!」
トンッ……
呼吸の合間、再び勇のつま先が床を突いた。
小さな音とは裏腹に……目にも止まらぬ速さでラクアンツェとの距離を詰める。
瞬時にして彼女の背後へと回り込み、再び床を突く。
その身が鋭く切り返し、ラクアンツェへと一直線に迫った。
光を伴った斬撃が水平の軌跡を描き、その首へと真っ直ぐ振り抜かれ―――
―――残光を引いて、空気を裂いた。
勇の顔に浮かぶのは引きつり食いしばった表情。
―――これを躱すのかよッ!?―――
途端、彼の目下から恐ろしいまでの気迫と共に銀色の拳が突き上げられる。
命力の籠った一撃が強い光を帯びるが……間一髪、勇は顎を上げて拳を避けきった。
―――反応速度は上々……けれどっ―――
だがその瞬間、勇の腹部に強い衝撃が走る。
顎を上げた事で下半身の防御が疎かとなり、ラクアンツェの追撃に対応する事が出来なかったのだ。
「ごはァッ!!?」
途端、勇の体が勢いよく宙へと打ち上げられる。
そして勢いのままに訓練場の壁へと激しく打ち付けられたのだった。
ダァーーン!!
「かはッ!!」
壁が壊れるほどの衝撃ではないものの、激しい衝撃が彼の体に響き渡った。
間も無く体が「ズルリ」と地表へ引かれる。
まるで貼り付いた壁から剥がれる様に……勇の体が壁から離れ、遂には「ベシャリ」という音と共に床へと落下した。
力無く床に横たわる勇……もはやピクリとも動きはしない。
僅かな間を静寂が支配するも……ふと、「カツッカツッ」と床を叩く靴の音が響き始める。
足音たるその靴の音が徐々に勇の体に近づくと止まり……その代わりに慈しみを孕んだ声が優しく響き渡った。
「今日はここまでにしておきましょうか」
そう言われるや、勇の体がピクリと動き……手に掴んでいた翠星剣を「カラリ」と落とす。
「あ、ありがとう……ございました……」
床を背けて覗く顔から放たれる精一杯の声。
もはや彼は体を動かす事すらままならない程に……疲弊しきっていた。
熱く火照った体を冷たいコンクリート製の床がひんやりと癒す。
精一杯戦いきった彼は、色気無き心地良さを味わうかのように……そのまま体を休ませたのだった。
ラクアンツェが一つ心に物思いに耽る。
それは藤咲勇という特異な存在そのものに対して。
勇の身体能力の成長度合いは、他の仲間達や彼女が過去に出会った魔剣使いと比べてもかなりの卓越したモノだった。
では何故そう思えるのか……。
魔剣使いは元来、魔剣を極める為に命力を鍛える事に着眼点を置く傾向がある。
命力を鍛える事は目に見えて強くなる事、ひいてはその強くなる度合いが強いからだ。
だがいずれもそれらはそのうち頭打ちとなる事がわかっていた。
それが命力というものだから。
大なれ小なれど……当人が持ち得る才能とも言える命力量を超える事は出来ない。
そしてそれに満足した者達はすべからく鍛える事を辞めた。
それが真理……誰もが辿り着く境地とも言える終着点。
……そう思っていた。
だが、そこに限界を感じ……新たな修練方法を模索し、確立した者がいた。
―――その名は剣聖―――
彼は肉体の成長と命力の成長を並行して行う事で己が限界と才能をを越え、その先に到達する事が出来ると自身の肉体で証明したのだ。
そしてそれを知った他の二人もまた、同様に限界を超える事となった。
それが三剣魔と呼ばれる所以ともなった彼等の強さの秘密。
―――そして彼もまた、剣聖と同じ結論を導き出そうとしている―――
教えられた訳ではない。
答えがあった訳でもない。
それは勇自身が考え、導き、そして体現した結論。
床に伏す勇の姿を眺めながら瞳を窄める。
その鋭い眼差しは彼に対し密かな期待を込めているからこそ―――
「全く……貴方はどうしてこんな面白い事を見つけるのが得意なのかしらね」
「何か……言いました?」
「いいえ、独り言よ……今日はゆっくり休みなさい、次回がある様ならもっと激しく教えてあげるわぁ」
ラクアンツェの優しい口調での厳しい進言に、勇の口から堪らず「うへぇ……」という声が漏れる。
彼女はそんな声を前に「フフッ」と鼻で笑うと……そっと振り向き歩み出した。
その先に見えるのは、自分達の番を今かと待ち構えるアージ達の姿。
「さぁ、後がつかえているのだから、どんどん行くわよぉ~」
「応!! よろしく頼む!!」
その日突発的に行われる事となったラクアンツェによる実技戦闘訓練。
希望者にのみ実施する事となった訓練で、勇を始め、アージ、マヴォ、レンネィ、心輝が果敢にも彼女に戦いを挑んだのだった。
当然勝てる者が居る訳もなく。
僅か2時間程で総勢5人の希望者は揃い揃って完膚なきまでにボコボコにされてしまい……事後、訓練場の隅に転がる彼等の姿があったという。
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