485 / 1,197
第十七節「厳しき現実 触れ合える心 本心大爆発」
~シンシンシタク オキザリテ~
しおりを挟む
海外への出動となれば、当然日帰りなど出来る訳は無い。
ヨーロッパ方面ともなれば地球の裏側……長い時間を使い、場合によっては一週間以上も現地滞在する事はざらである。
移動による身体へのストレスを解きほぐす為に最低でも一日は現地で休養を取るなど、心身のケアは魔特隊の出張要項にも含まれる。
また時差ボケによる身体のリズムの調整も彼等には重要で、これには『あちら側』の人間も同様に毎度の事ながら手を焼いている事だ。
「衣類OK、パスポートOK、生活用品はホテルにあるとして……こんな所でいいかな……」
勇が一般的に片手で持てる程度の大きさのリュックサック一つで荷物の整理を済ませる。
彼自身お洒落である訳でもなければ趣味道具が多い訳でもない。
趣味やお洒落の為に大きなスーツケースを常に持ち歩く心輝や瀬玲とは異なり、彼の場合は基本的に着回しする服を用意するだけで済む為、移動の際の荷物整理は非常に簡素だ。
またこれにより移動も楽になるという事もあり、それに倣った茶奈も同様にする傾向にある。
荷物を整理する勇の又隣にある茶奈の部屋では、同様に自分の荷物を整理する茶奈の姿があった。
こちらは比較的近くの国での対応なので滞在期間は短い。
その為いつもの小さなウサギ型のリュックサック一つで済んでいる様だ。
勇は準備を整え一段落すると……椅子に腰を掛け、学生時代から使っている勉強机にその手を添える。
机の上に置いてある少し大きめのアルミケースをそっと手に取ると、おもむろにそのロックを外し「カパッ」と音を立てて上蓋を開いた。
そこにあるのは、翠星剣の核とも言える50モンズ級の命力珠。
虹色の輝きを放ち、その力をすぐにでも解き放たんと渦巻く珠を見つめ……勇は戦いになるかもしれない状況に対し覚悟を行う。
「使う事が無ければ……それが一番いいさ」
彼がそう呟きながら視線を移すと……そこには翠星剣と、剣聖より借り受けた魔剣「アラクラルフ」が映り込んだ。
剣聖とラクアンツェから受け取った指摘……彼の戦い方の幅を広げる為に、自分に何が出来るのか……思考を巡らせる。
コンコン。
すると不意に勇の部屋の扉から高い音が上がり、彼の声を待つ事無くゆっくりと開いた。
「勇さん、そろそろ出発しないと遅れちゃいますよ」
茶奈が隙間から顔を覗かせ彼を呼ぶ。
「あ、もう行かないとか……ありがと」
軽く言葉を交わすと、勇は立ち上がり、荷物を持つ。
リュックを背負い、翠星剣の本体を専用の鞄に包み背負う。
そして専用ケースにアラクラルフを仕舞うと、命力珠の入ったケースと共に両手に携えた。
こうして持ってみると少量の荷物でも十分多い。
勇と茶奈の持つ魔剣が大型だからこその荷物の量なのだと言えばそうなのかもしれない。
「幾つか荷物持ちましょうか?」
「え? あ、いやいや……」
善意での進言であろうが、女の子に荷物を持ってもらうのは勇の男として持つ僅かなプライドでも許す筈が無く。
無垢な善意が時折男を意固地にさせる。
「自分の分くらいは、自分で持っておきたいからね」
それは何気ない一言のつもりだった。
だが、それを受けた茶奈は……途端に「ムスッ」とした表情を浮かべ―――
「……じゃあ私も自分の荷物を持っていきますからっ!!」
突然そう強い口調で返すと……ドタドタと廊下を鳴らしながら自室へ戻っていった。
「あ……俺なんか不味い事言ったかな……」
そんな時、ふと脳裏にラクアンツェに言われた事を思い出す。
―――君はちょっと思いやりに欠けるんじゃないかしらねぇ~―――
その言葉がじわじわと勇の頭の中で反響して大きくなっていく。
最近は戦いの事ばかり気にしていたからなぁ……と溜め息交じりに呟く勇の姿がそこにあった。
無垢な女性も時折には面倒クサイのだ。
……時折であるかどうかは別の話ではあるが。
家を出た勇と茶奈はいつもの様に歩き本部へと向かう。
作戦の最終確認を行った翌日の今日……勇の出発の日の出来事。
先日の明るい雰囲気とは全く異なり、茶奈の一方的な苛立ちからの微妙な空気を伴ったまま二人は別れ……勇のチームを乗せた車は空港へと出発する。
平野がオペレーティングメンバーとして同行し、勇達を乗せた便は空高く舞い上がった。
幾つかの空港を経由して予定地であるトルコへと向かう航空機はただ静かに、しかし轟々とエンジン音を猛らせ深青の彼方に消えていったのだった。
ヨーロッパ方面ともなれば地球の裏側……長い時間を使い、場合によっては一週間以上も現地滞在する事はざらである。
移動による身体へのストレスを解きほぐす為に最低でも一日は現地で休養を取るなど、心身のケアは魔特隊の出張要項にも含まれる。
また時差ボケによる身体のリズムの調整も彼等には重要で、これには『あちら側』の人間も同様に毎度の事ながら手を焼いている事だ。
「衣類OK、パスポートOK、生活用品はホテルにあるとして……こんな所でいいかな……」
勇が一般的に片手で持てる程度の大きさのリュックサック一つで荷物の整理を済ませる。
彼自身お洒落である訳でもなければ趣味道具が多い訳でもない。
趣味やお洒落の為に大きなスーツケースを常に持ち歩く心輝や瀬玲とは異なり、彼の場合は基本的に着回しする服を用意するだけで済む為、移動の際の荷物整理は非常に簡素だ。
またこれにより移動も楽になるという事もあり、それに倣った茶奈も同様にする傾向にある。
荷物を整理する勇の又隣にある茶奈の部屋では、同様に自分の荷物を整理する茶奈の姿があった。
こちらは比較的近くの国での対応なので滞在期間は短い。
その為いつもの小さなウサギ型のリュックサック一つで済んでいる様だ。
勇は準備を整え一段落すると……椅子に腰を掛け、学生時代から使っている勉強机にその手を添える。
机の上に置いてある少し大きめのアルミケースをそっと手に取ると、おもむろにそのロックを外し「カパッ」と音を立てて上蓋を開いた。
そこにあるのは、翠星剣の核とも言える50モンズ級の命力珠。
虹色の輝きを放ち、その力をすぐにでも解き放たんと渦巻く珠を見つめ……勇は戦いになるかもしれない状況に対し覚悟を行う。
「使う事が無ければ……それが一番いいさ」
彼がそう呟きながら視線を移すと……そこには翠星剣と、剣聖より借り受けた魔剣「アラクラルフ」が映り込んだ。
剣聖とラクアンツェから受け取った指摘……彼の戦い方の幅を広げる為に、自分に何が出来るのか……思考を巡らせる。
コンコン。
すると不意に勇の部屋の扉から高い音が上がり、彼の声を待つ事無くゆっくりと開いた。
「勇さん、そろそろ出発しないと遅れちゃいますよ」
茶奈が隙間から顔を覗かせ彼を呼ぶ。
「あ、もう行かないとか……ありがと」
軽く言葉を交わすと、勇は立ち上がり、荷物を持つ。
リュックを背負い、翠星剣の本体を専用の鞄に包み背負う。
そして専用ケースにアラクラルフを仕舞うと、命力珠の入ったケースと共に両手に携えた。
こうして持ってみると少量の荷物でも十分多い。
勇と茶奈の持つ魔剣が大型だからこその荷物の量なのだと言えばそうなのかもしれない。
「幾つか荷物持ちましょうか?」
「え? あ、いやいや……」
善意での進言であろうが、女の子に荷物を持ってもらうのは勇の男として持つ僅かなプライドでも許す筈が無く。
無垢な善意が時折男を意固地にさせる。
「自分の分くらいは、自分で持っておきたいからね」
それは何気ない一言のつもりだった。
だが、それを受けた茶奈は……途端に「ムスッ」とした表情を浮かべ―――
「……じゃあ私も自分の荷物を持っていきますからっ!!」
突然そう強い口調で返すと……ドタドタと廊下を鳴らしながら自室へ戻っていった。
「あ……俺なんか不味い事言ったかな……」
そんな時、ふと脳裏にラクアンツェに言われた事を思い出す。
―――君はちょっと思いやりに欠けるんじゃないかしらねぇ~―――
その言葉がじわじわと勇の頭の中で反響して大きくなっていく。
最近は戦いの事ばかり気にしていたからなぁ……と溜め息交じりに呟く勇の姿がそこにあった。
無垢な女性も時折には面倒クサイのだ。
……時折であるかどうかは別の話ではあるが。
家を出た勇と茶奈はいつもの様に歩き本部へと向かう。
作戦の最終確認を行った翌日の今日……勇の出発の日の出来事。
先日の明るい雰囲気とは全く異なり、茶奈の一方的な苛立ちからの微妙な空気を伴ったまま二人は別れ……勇のチームを乗せた車は空港へと出発する。
平野がオペレーティングメンバーとして同行し、勇達を乗せた便は空高く舞い上がった。
幾つかの空港を経由して予定地であるトルコへと向かう航空機はただ静かに、しかし轟々とエンジン音を猛らせ深青の彼方に消えていったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】魔法大戦 〜失われた古代魔法で無双する!〜
加瀬 一葉
ファンタジー
王立魔法学校。高等部に編入してきた冴えない生徒ラフィト。エリートが集うこの学校で、辺境出身のラフィトは落ちこぼれの劣等生なのだが……。
実は彼は、失われたはずの古代魔法を操る一族の末裔。魔族の脅威が増す時代に、ラフィトは人類を救うことができるのか?
過去と現在が交錯する、魔法ファンタジー。
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密
藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。
そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。
しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。
過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~
下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。
二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。
帝国は武力を求めていたのだ。
フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。
帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。
「ここから逃げて、田舎に籠るか」
給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。
帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。
鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。
「私も連れて行ってください、お兄様」
「いやだ」
止めるフェアに、強引なマトビア。
なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。
※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
