時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

文字の大きさ
492 / 1,197
第十七節「厳しき現実 触れ合える心 本心大爆発」

~コイゴコロ~

しおりを挟む
 車の進むがままに走り、気付けば都内のマンション……レンネィの住む家へと辿り着いていた。
 雨が降っているという事と、太陽が落ちて出来た薄暗さが助長し……マンションから漏れる明かりが妙な高級感を彩っていた。

 実際に彼女の住む家はそれなりにお高いマンションだ。
 一人暮らしで住むには大きいと感じる程の。

 地下に備えられた住人用駐車場へと車を入れ、それを停めると彼女達が降車していく。
 周囲には目に入れる事もはばかれるような高級車がいくつか並んでおり、逆に彼女の軽自動車が妙に際立っていた。

 後部座席から手に持てるだけの荷物を抱えると……二人が協力してエレベータを介して彼女の家へと運んでいく。
 それを4回ほど繰り返すと……ようやく車の中に詰められていた荷物が無くなり、落ち着きを見せたのだった。

「はい、おしまいっと……誘っておいてなんだけど……ありがとうね、シン」
「ウ、ウス……助けになって良かったっす……」

 先程からしおらしい態度を見せる心輝を前に、レンネィがまたもや疑問を浮かべ顔を傾けるが……何かを閃いたのか、僅かに目を見開くと途端に微笑みを浮かべた。

「もうだいぶ経ってしまったし……折角だから晩御飯食べて行きなさいな、私が腕によりをかけて美味しいもの作ってあげるわよぉ」
「マ、マジスカ……!?」

 思いがけないサプライズに心輝の顔に喜びが「パァ」っと浮かび上がる。
 そんな彼の反応が予想外だったのだろう……思わずレンネィが僅かに首を引かせた。
 だが……その反応が彼女の心にジワジワと高揚感に似た感情を沸々とさせ、その顔にニッコリと笑顔を浮かび上がらせる。
 そのままレンネィは鼻歌を鳴らしながらキッチン奥へと姿を消していった。

 それを見送ると……心輝は部屋の中央に備えられたソファーへと腰を掛け、ガラス窓越しの外を見つめた。

「はぁ~……ヤベェ、ドキドキが止まらねぇ……」

 ショッピングモールを出る時から、彼の鼓動はずっと高鳴りっぱなしであった。
 こんな経験など一度も無かった彼にとって、それが「恋」なのだろうと本来は気付くはずも無いが……既に彼はそれを認識していた。



―――あんな事に続いて家にまで躊躇なく入れて貰えて挙句手料理だとォ……―――



「なんだこの……出来過ぎイチャラブシチュエーションッ……!!」

 まるで大人向けのドラマを彷彿とさせる展開に動揺を隠せない。

 不意に振り向くと……そこには広い部屋を無駄に使わんばかりに置かれたダブルサイズベッドが。



―――……ンマッ……マジかよ!?―――



 レンネィには恋人や配偶者が居るとは聞いていない。
 なのになぜダブル……そう思うと心輝の脳裏に如何わしい映像が流れ……その頬を更に赤く染めていく。

「あぁそれ、私寝ぐせ悪くてねぇ~大きい方がいいなぁと思って」

 そんなベッドを見つめる心輝に、不意に後ろから現れたレンネィが察したのか丁寧に説明を始める。
 それに気付いた心輝が「ハッ」として顔を正面に戻すと……既に彼女は彼の前に立っていた。
 突然の彼女の再来に思わず心輝はドキッとして体が固まる。

「そ、そうっすか……た、大変っすね……」
「慣れたもんだけどね~男の子を誘って一緒に寝る事も出来るし、一石二鳥かなぁって」



―――誰とですかぁーーーーーー!?―――



「も、もう一緒に寝た奴とか居るんですかね……?」

 恥ずかしげもなくそんな事を話すレンネィに……心輝がついつい口を滑らしてしまう。
 だがそんな反応を見ると……レンネィは「フフッ」と笑い、そっと彼の顔の傍へその頭を降ろす。
 そして腰を下ろしている彼のすぐ耳元で……艶めかしく呟いた。



「……まだ誰とも寝てないわよぉ……」



 甘く囁かれたその言葉、その息遣いに……心輝の背筋に「ゾクゾクッ」とした痺れが駆け巡る。
 快感にも似た感覚に、心輝の思考が堪らず停止した。

 レンネィがそっと頭を持ち上げると……「ウフフッ」と一笑し、再びキッチンへと戻っていった。



 誘っているのだろうか……心輝の脳裏にそんな言葉が思い浮かぶ。



 もしそうだとしたら……彼女を押し倒せばそのまま……なんて事を考え始め、心輝の目が「ピクピク」と痙攣し始める。



―――いやいや……レン姐さんの事だ。
          きっと揶揄からかってるだけ……―――



 そう自分に言い聞かせるも、眉間から熱い汗が滴り落ちていく。

「落ち着けぇ俺、考えるなぁ俺……そうだよし、ダイジェンディ―を組み立てよう……」

 現実逃避の為におもむろに側に置いてあったプラモデルの箱を持ち上げ、正面にあるガラス張りの机の上にそっと置くと……歪んだ箱を揺すって上蓋を滑らせ開いた。

 そこに映るのは大きな説明書やランナーに繋がれたプラモデルの部品が沢山詰まった中身の様子。

 ボリューミィとも言えるその内包量に、心そこに在らずのはずの心輝が「うおぉ」と声を上げる。
 ギークな彼が歓びを上げる程の徹底的な部品の数々、オタク心を刺激するセットの小道具の数々を前にし……ようやく彼らしい表情が戻って来ていた。

「マジかよ……オーバーレイヤーマントまであるのかよ……!! これ作った奴、わかッてやがる……!!」

 作中に僅かにしか出てこない小道具までも盛り込んだそのキット内容に舌を巻く。
 もし彼が通常の状態でこのプラモデルを前にしていたら、きっと大声を張り上げていただろう……「これを待っていたのだぁー!!」と。
 さすがにレンネィの家である手前、そんな事が出来る訳も無く、ビニール袋に梱包された部品を包装ごと一つづつ箱から取り出し中身を暴いていく。
 箱の側面にも作品の絵などの印刷が施され、至る所にファンを唸らせる趣向を凝らす作りに身を打ち震えさせていた。

「すげぇ……マジすげぇこれ……!!」

 取り出した袋を掲げ中身を凝視すると、見た事のあるパーツが目に留まり「おお……」と声を上げる事数回……拘りぬいたディテールに「ダイジェンディ―愛」をひしひしと受け取った心輝の顔は既に子供の様な無邪気な笑顔へと移り変わっていた。

 そんな彼の側へ再びキッチンから出てきたレンネィが歩み寄る。

「あらシン、とうとう我慢出来なくなっちゃったのねぇ」
「ウ、ウス……けどこれはマジで半端ねぇっすよ……!!」
「へぇ~どれどれ?」
「例えばこれなんすけど……!!」

 興味本位で聞くレンネィを前に、心輝がオタク心満載で語り始めると……彼女がそれを嫌がる事もなく真面目に話を聞き入れる。
 「これが彼の本音なのだろう」……彼女が素直に彼の言葉に相槌を打つのは、今の彼が紛れもなく好きなのだと思わせる程に真っ直ぐだったからだ。



 お互いが本音で語り合い、本音で在りあう……今となってはそんな事が珍しいとも言える今の時代で、住む世界が異なっていた年の離れた二人の男女が語り合う。

 決してそれはお互いの趣味が似ている訳でも、方向性が同じという訳でもない。

 ただ、それが自分であるとハッキリと前に出しあう事が、二人の距離を近づけたきっかけとなったのだろう。



 その日、レンネィの手料理を堪能した心輝は、二人が眠くなるまでお互いの趣味の話を語りあった。
 互いにとって、それはきっと今までに無い楽しい時間だっただろう。

 今はまだ、それ以上の関係では無いのだとしても……。


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

【完結】魔法大戦 〜失われた古代魔法で無双する!〜

加瀬 一葉
ファンタジー
 王立魔法学校。高等部に編入してきた冴えない生徒ラフィト。エリートが集うこの学校で、辺境出身のラフィトは落ちこぼれの劣等生なのだが……。  実は彼は、失われたはずの古代魔法を操る一族の末裔。魔族の脅威が増す時代に、ラフィトは人類を救うことができるのか?  過去と現在が交錯する、魔法ファンタジー。

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...