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第二十節「心よ強く在れ 事実を乗り越え 麗龍招参」
~1Rー再び相対する二人~
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二人が一歩下がり距離を取り力強く構える。
試合開始の合図と共に二人は既に臨戦態勢に入り、お互いを見据えていた。
「さぁて……コウが連れて来た彼がどんなものか……」
勇は左腕を前に構え、床に足をじっくりと据えてすり足で相手を追うタイプ。
片や池上は軽くステップを踏み、軽快な足取りで相手の隙を伺うタイプ。
互いに異なるスタンスを用いて相まみえる……互いに間合いを維持し、中央を軸に二人の体がゆっくりと反時計回りに回り始めた。
勇が左肩を前にするが故に……死角を狙い、その背後を取る様に池上が動いているからだ。
死角を取られまいと正面を維持するが……その時先制したのは池上。
急にその動きを早め、勇の死角へ一気に回り込み……左手のジャブ。
鋭い一撃が勇へと襲い掛かる。
だが……
パァン!!
勇の顔に目掛けて突き出された拳が勇の裏拳によって外側へ強く弾かれた。
余りにも強い弾きに池上の左腕ごと飛び上がり、突きの勢いを殺す。
スローモーションにも見えたその一瞬……高く舞い上がった池上の左腕の脇下から……迷いの無い一閃が貫いた。
バヒョウッ!!
空気を裂く一撃……だがその一撃は池上の高く上がった顎の下を通過する。
途端、「パシンッ」という小さな音と共に勇の突き出された右手に軽い衝撃が走り、同時に池上の体が一気に距離を離した。
その顔は強張り、冷や汗を一筋……。
「あっぶねぇ~……」
だがその一撃を避けられた事に、勇自身も驚きを憶える。
「今の避けるのかよ……やるじゃん」
以前の池上であればそれで終わっていただろう。
彼とやりあってからおおよそ2年……勇にとってその2年は普通の人間とは大きく異なると言える程に成長した期間であったからこそ……常人であろう池上の成長スピードを舐めていた所があった。
だがその瞬間勇はその考えを改めて再び彼を見つめる。
池上は最早、以前のチンピラの時とは訳が違うのだと。
再び膠着状態へと陥り、互いの出方を伺う。
そんな様子を眺めていた倉持の顔は口を大きく開け、唖然とした姿を見せていた。
「あれが素人な訳ないだろぉ……」
確かに、勇が言う様な素人であるかと言えば嘘であろう。
今日に至るまでに魔特隊メンバーへと実施された実技訓練には実際のボクシング経験者を呼んだ実戦演習を行った事もあった。
そういった経験もあるからこそ、今までの戦闘経験と合わせればこの様な事など造作も無いと言える。
そんな様子を椅子に座り表情を変えずじっと見つめる茶奈……そんな彼女を気遣ってか、倉持が軽く彼女に話し掛けた。
「退屈させてしまったかな? 女の子だとこういうのはあまり興味ないんじゃないかい?」
「いえ、そんな事無いですよ。 とても為に成ると思いますし。 池上さん……?は少し動きにムラがある様に感じます」
「そ、そうかい?」
「慎重に成り過ぎなのかな……思い切りが足りなくて勇さんに見抜かれてますよ」
淡々と解説する茶奈を前に、倉持は彼女にまで驚きの顔を浮かべていた。
そんな二人の会話など耳に入る訳も無く……勇と池上の均衡は徐々に変化を見せていた。
先程の先制攻撃の失敗に気圧されたのか、それとも勇が動き慣れてきたのか……左右に動く池上を追い詰める様にその逃げ道を塞ぎながら力強い一歩を踏み込んでいく。
タンッ
ダンッ!!
パパンッ!!
池上が徐々に距離を詰めてくる勇に軽いジャブで牽制し、距離を測る。
勇はそれを左腕で防ぎながら距離を詰めていく。
突然勇の肩が前に突き出し、そして下方から抉る様に左ボディブローが飛び出した。
池上はそれをバックして躱そうとするが……途端、背にロープがぶつかり勢いが殺される。
だが、池上の体が僅かに屈み……力を篭めて固めた右腕がブローを防いだ。
パァンッ!!
軽快な炸裂音と共に池上の体がリング角のポストへと引き込まれる様にのけぞらせた。
そして続く勇の右フック。
水平に弧を描きながら繰り出される一撃。
それも腕に防がれ衝撃だけが池上の体に伝わるのみ。
だがそれを受けた池上当人の顔には必死の表情が浮かぶ。
「うおおーーー!?」
更に続く勇の左フック。
ガードの外側を狙うかの様に襲い掛かる拳も、かろうじて伸びた腕が引っかかり動きを制した。
カァーン!!
途端鳴り響くデジタルの金鳴音。
「1ラウンド終了だ!! コーナーに戻って!! 1分休憩!!」
その拍子に倉持が大声を上げ二人を制する。
その声が聞こえたのか二人は動きを止め……勇が反対側のコーナーへととぼとぼ歩いていった。
勇が歩いて向かうコーナーの下に茶奈がトテトテと歩き近づく。
「勇さんご苦労様です。 どうでした?」
「あぁ、なかなか面白いよ……人ってこうも強くなれるんだな……」
特に疲れた様子も見せず、茶奈に笑顔でそう返した。
「こういうのも悪くないかもな。 単純にセンスが磨ける気がする」
「そうですかぁ……私もやろうかなぁ」
そう言って「しゅっしゅ」と口ずさみながらカワイイワンツーを繰り出す茶奈を見た勇がつい「アハハ」と声を出して笑い声を上げる。
そんな和気藹々の二人に目も暮れず……池上サイドでは、既に息を切らし横隔膜で呼吸をする池上がロープに肩を掛けて項垂れていた。
「大丈夫かコウ?」
「あぁ……やっぱスゲーわアイツ……動きが読まれてる気がする」
「助言に成るかわからんが……思い切りが足りない様だぞ」
「思い切りかァ……やっぱどっかビビッてんだろな……あの時のトラウマかねぇ」
それは勇に初めて敗北した時、そして彼を襲撃し返り討ちにあった時を指すのだろう。
その時、池上は一撃すらも打ち込まれる事なく……気迫だけで押し負けた。
それが未だ彼の中の勇の存在を強大に見せているのだ。
「トラウマくらい跳ね除けて見せろ……それが出来なきゃ次の相手には勝てねぇぞ」
「おう……っつか、藤咲の奴……二位より強いんじゃね……?」
「ん……まぁ、それならそれで……」
気付いてしまった事実を前に何とも言えない空気を醸し出しながら……池上がそっと立ち上がると、リング外に立つ倉持も一歩下がり彼をじっと見守る。
間も無く第二ラウンドの始まり。
互いが再びコーナーの前で拳を握り締め、時を静かに待ち構えていた。
試合開始の合図と共に二人は既に臨戦態勢に入り、お互いを見据えていた。
「さぁて……コウが連れて来た彼がどんなものか……」
勇は左腕を前に構え、床に足をじっくりと据えてすり足で相手を追うタイプ。
片や池上は軽くステップを踏み、軽快な足取りで相手の隙を伺うタイプ。
互いに異なるスタンスを用いて相まみえる……互いに間合いを維持し、中央を軸に二人の体がゆっくりと反時計回りに回り始めた。
勇が左肩を前にするが故に……死角を狙い、その背後を取る様に池上が動いているからだ。
死角を取られまいと正面を維持するが……その時先制したのは池上。
急にその動きを早め、勇の死角へ一気に回り込み……左手のジャブ。
鋭い一撃が勇へと襲い掛かる。
だが……
パァン!!
勇の顔に目掛けて突き出された拳が勇の裏拳によって外側へ強く弾かれた。
余りにも強い弾きに池上の左腕ごと飛び上がり、突きの勢いを殺す。
スローモーションにも見えたその一瞬……高く舞い上がった池上の左腕の脇下から……迷いの無い一閃が貫いた。
バヒョウッ!!
空気を裂く一撃……だがその一撃は池上の高く上がった顎の下を通過する。
途端、「パシンッ」という小さな音と共に勇の突き出された右手に軽い衝撃が走り、同時に池上の体が一気に距離を離した。
その顔は強張り、冷や汗を一筋……。
「あっぶねぇ~……」
だがその一撃を避けられた事に、勇自身も驚きを憶える。
「今の避けるのかよ……やるじゃん」
以前の池上であればそれで終わっていただろう。
彼とやりあってからおおよそ2年……勇にとってその2年は普通の人間とは大きく異なると言える程に成長した期間であったからこそ……常人であろう池上の成長スピードを舐めていた所があった。
だがその瞬間勇はその考えを改めて再び彼を見つめる。
池上は最早、以前のチンピラの時とは訳が違うのだと。
再び膠着状態へと陥り、互いの出方を伺う。
そんな様子を眺めていた倉持の顔は口を大きく開け、唖然とした姿を見せていた。
「あれが素人な訳ないだろぉ……」
確かに、勇が言う様な素人であるかと言えば嘘であろう。
今日に至るまでに魔特隊メンバーへと実施された実技訓練には実際のボクシング経験者を呼んだ実戦演習を行った事もあった。
そういった経験もあるからこそ、今までの戦闘経験と合わせればこの様な事など造作も無いと言える。
そんな様子を椅子に座り表情を変えずじっと見つめる茶奈……そんな彼女を気遣ってか、倉持が軽く彼女に話し掛けた。
「退屈させてしまったかな? 女の子だとこういうのはあまり興味ないんじゃないかい?」
「いえ、そんな事無いですよ。 とても為に成ると思いますし。 池上さん……?は少し動きにムラがある様に感じます」
「そ、そうかい?」
「慎重に成り過ぎなのかな……思い切りが足りなくて勇さんに見抜かれてますよ」
淡々と解説する茶奈を前に、倉持は彼女にまで驚きの顔を浮かべていた。
そんな二人の会話など耳に入る訳も無く……勇と池上の均衡は徐々に変化を見せていた。
先程の先制攻撃の失敗に気圧されたのか、それとも勇が動き慣れてきたのか……左右に動く池上を追い詰める様にその逃げ道を塞ぎながら力強い一歩を踏み込んでいく。
タンッ
ダンッ!!
パパンッ!!
池上が徐々に距離を詰めてくる勇に軽いジャブで牽制し、距離を測る。
勇はそれを左腕で防ぎながら距離を詰めていく。
突然勇の肩が前に突き出し、そして下方から抉る様に左ボディブローが飛び出した。
池上はそれをバックして躱そうとするが……途端、背にロープがぶつかり勢いが殺される。
だが、池上の体が僅かに屈み……力を篭めて固めた右腕がブローを防いだ。
パァンッ!!
軽快な炸裂音と共に池上の体がリング角のポストへと引き込まれる様にのけぞらせた。
そして続く勇の右フック。
水平に弧を描きながら繰り出される一撃。
それも腕に防がれ衝撃だけが池上の体に伝わるのみ。
だがそれを受けた池上当人の顔には必死の表情が浮かぶ。
「うおおーーー!?」
更に続く勇の左フック。
ガードの外側を狙うかの様に襲い掛かる拳も、かろうじて伸びた腕が引っかかり動きを制した。
カァーン!!
途端鳴り響くデジタルの金鳴音。
「1ラウンド終了だ!! コーナーに戻って!! 1分休憩!!」
その拍子に倉持が大声を上げ二人を制する。
その声が聞こえたのか二人は動きを止め……勇が反対側のコーナーへととぼとぼ歩いていった。
勇が歩いて向かうコーナーの下に茶奈がトテトテと歩き近づく。
「勇さんご苦労様です。 どうでした?」
「あぁ、なかなか面白いよ……人ってこうも強くなれるんだな……」
特に疲れた様子も見せず、茶奈に笑顔でそう返した。
「こういうのも悪くないかもな。 単純にセンスが磨ける気がする」
「そうですかぁ……私もやろうかなぁ」
そう言って「しゅっしゅ」と口ずさみながらカワイイワンツーを繰り出す茶奈を見た勇がつい「アハハ」と声を出して笑い声を上げる。
そんな和気藹々の二人に目も暮れず……池上サイドでは、既に息を切らし横隔膜で呼吸をする池上がロープに肩を掛けて項垂れていた。
「大丈夫かコウ?」
「あぁ……やっぱスゲーわアイツ……動きが読まれてる気がする」
「助言に成るかわからんが……思い切りが足りない様だぞ」
「思い切りかァ……やっぱどっかビビッてんだろな……あの時のトラウマかねぇ」
それは勇に初めて敗北した時、そして彼を襲撃し返り討ちにあった時を指すのだろう。
その時、池上は一撃すらも打ち込まれる事なく……気迫だけで押し負けた。
それが未だ彼の中の勇の存在を強大に見せているのだ。
「トラウマくらい跳ね除けて見せろ……それが出来なきゃ次の相手には勝てねぇぞ」
「おう……っつか、藤咲の奴……二位より強いんじゃね……?」
「ん……まぁ、それならそれで……」
気付いてしまった事実を前に何とも言えない空気を醸し出しながら……池上がそっと立ち上がると、リング外に立つ倉持も一歩下がり彼をじっと見守る。
間も無く第二ラウンドの始まり。
互いが再びコーナーの前で拳を握り締め、時を静かに待ち構えていた。
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