時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

文字の大きさ
613 / 1,197
第二十三節「驚異襲来 過ち識りて 誓いの再決闘」

~宿 敵 来 訪~

しおりを挟む
 緊急発進したヘリコプターが轟音を立てて一直線に目的地へと向かっていく。
 幾つもの住宅街や都市部を通り抜けて高速で移動する機体。
 その中で心輝達がインカムとタブレットを使い、福留から状況の説明を受けていた。

『今日の朝頃、埼玉西部の高地に突然出現した魔者達はそのまま麓へと直進して近隣の住宅街を襲い始めました。 相当な進行速度の為、確認と状況把握が遅れて事態はどんどん悪化しています。 確認映像をタブレットへ送付しますので確認を』

 間も無くタブレットに送信される幾つかの写真。
 そこに映し出されたのは、まるで騎士の様に甲冑、盾、そして5メートルはあろうかという程の長い突槍スピアを携え、嘴を有した四本足の獣に跨り走る魔者の姿であった。

 その魔者を見た途端……レンネィが顔に陰りを落とす。
 真剣な面持ちを構え、画像を睨み付ける様に見据えた彼女には……既に昂りから来る命力の迸りが僅かに感じられた。

「……クラカッゾ……ッ!!」
「くらかっぞ……?」

 レンネィの口から漏れた一言……それに反応し、周囲の者達が彼女に目を向けた。
 彼女の異様な雰囲気を前に、誰しもが途端声を殺し唾を飲む。

「奴等がこの世界に来たなんて……ね……来ていないと思っていたから、安心していたのだけど……」
『……知っているのですね?』
「えぇ、忘れようもない相手よ……宿敵と言っても過言ではない程にね……!」

 その声色は先程までとは打って違ってとても低く……憎悪や怒りといった負の感情に満ちた声質。
 彼女の雰囲気を察した皆は、彼女とクラカッゾと呼ばれた魔者との間に並々ならぬ大きな因縁がある事を察させた。
 
『よろしければ、情報を教えて頂いても?』
「えぇ……奴等クラカッゾ族は、いわゆる少数精鋭から成る騎馬民族よ。 『嘴馬犬イブリブ』と呼ばれる騎乗用の家畜に跨って戦う事に重点を置いていて、突進力を使った戦法で一気に人間の集落を襲撃する事が多い好戦的な魔者達なの」

 彼女の言う通り、写真に載った魔者達はいずれも獣に乗っている。
 数こそ四人程度しか見えないが、いずれもが似た格好の所が彼女の証言の信憑性を色濃くさせていた。
 彼等が跨った獣は言うなれば神話などに出て来るヒポグリフと呼ばれる生物が近いと言える姿。
 短く太い脚がその力強さを物語る様であった。

「奴等は……特に王のヴィジャールーは人を殺す事に悦びを感じる程の戦闘狂……それだけには留まらず自分の生き死にすら遊びの様に扱い、仲間も騎乗する獣すらも勝つ為の道具にしか思っていない狂気染みた相手よ……!!」

 そう言い終えると……レンネィが「ギリリ」と歯を食いしばり、更に命力を昂らせる。

『なるほど……彼等と戦った経験は?』
「えぇ、あります……あれは絶対に忘れられない戦いだったわ……」

 そう漏らすと……静かに何度も画像をスクロールさせ、映された数少ない画像を繰り返し繰り返し確認し始めた。
 画像に映る光景の隅々までに目をやり、些細な情報を集める。
 そんな様子を前に、気に成った心輝が彼女へと話し掛けた。

「何か画像に気に成る事でもあるんスか?」

 レンネィはタブレットを突く指を止めると……視線を向ける事無く静かに口を開く。

「奴は狡猾なの……もしかしたら何かしら罠を用意してるかもしれない。 少しでも状況を把握して完膚なきまでに叩き潰す、それが大事な事よ」
「ウ……ウス……」

 彼女は既に戦闘態勢へと移行されており、厳しい口調が心輝を委縮させる。
 彼の言葉で踏ん切りがついたのだろう……彼へそう答えると、顔をタブレットから離して仲間達へと向けた。

「福留さんの話から察するに、奴等は今二手に分かれて行動しているわ……王1、雑兵3の別行動ね。 だから今回、私達も二手に分かれて行動しようと思う」
「了解だぜ……一刻も早く鎮静化しないといけないしな……」

 アンディとナターシャも彼の声に静かに頷く。
 まだ半月にも満たない期間しか共に過ごしていない彼等ではあったが……勇という象徴に同調するかの様に、行動理念は既に魔特隊の理念のそれへと準じていた。

「アンディとナターシャは雑兵三匹をお願い。 私と心輝が王を叩く」
「っしゃ、背中は任せてくれ!!」

 レンネィの提案に俄然やる気を見せる心輝。
 だが彼とは逆に……雑兵退治を割り当てられた二人はどこか不満そうだ。

「ちぇ……オイラ達も王って奴と戦ってみたいなぁ」
「四人ならきっと楽勝―――」

 そう言いかけた時……レンネィの拳が強く握りしめられ、口元が大きく歪んだ。



「調子に乗るなッ!!」



 突如レンネィの怒号が機内に響き、心輝達が驚き身動きをすら止める。
 ヘリコプターを操縦していた操縦士までもが彼女の声に驚き、戸惑いを見せていた。

「これは死闘よ……如何な相手だろうと最善策を尽くさねばならない……お前達は自分の役目を果たせ!!」

 今までに見せた事の無い程のレンネィの怒号。
 彼女をそう揺り動かせる程までの相手だという事なのだろう。
 彼女の怒りの剣幕を前に……いつも調子に乗る二人が声も上げられず、ただその口をぱっくりと開けたまま怯えの表情を浮かべて彼女を見続けていた。

「二人共、返事はッ!?」
「あっ……は、はいっ!!」
「はい……」

 しおらしく答えた二人は思わず互いの手を繋ぎ……そのまま静かに顔を俯かせる。
 そんな二人を前にしたレンネィは……「フゥ」と溜息を一息吐くと、その顔を落ち着いたシワ一つ無い表情へと戻していった。

「……私達の目的はあくまで緊急事態への対処……その事を忘れてはいけないわ。 シンもいいわね?」
「……ウス」

 心輝もまた彼女の気に充てられたのだろう……体に命力を漂わせ、備えた魔剣を熱くさせていた。

「……現場までまだ時間がある……少し、話をしましょうか……」

 全員の意思統一が出来たと感じた彼女はそう呟くと……そっとシートの背もたれに背を預け、口を開く。



 そして静かに語り始めた……かつて彼女が経験した、宿敵との戦いの出来事を。


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

【完結】魔法大戦 〜失われた古代魔法で無双する!〜

加瀬 一葉
ファンタジー
 王立魔法学校。高等部に編入してきた冴えない生徒ラフィト。エリートが集うこの学校で、辺境出身のラフィトは落ちこぼれの劣等生なのだが……。  実は彼は、失われたはずの古代魔法を操る一族の末裔。魔族の脅威が増す時代に、ラフィトは人類を救うことができるのか?  過去と現在が交錯する、魔法ファンタジー。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

処理中です...