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第二十三節「驚異襲来 過ち識りて 誓いの再決闘」
~形 勢 均 衡~
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ヴィジャールーが姿を消して間も無く、心輝達は周囲に気配を向けて警戒していた。
建物が多く連なる空間において、命力レーダーは役に立たない。
物理的な遮蔽物が波の進む道を塞いでしまうからだ。
意識を集中させる事で僅かな気配を探り、相手の出方を待つ。
足場の悪い建物の上に立とうものなら、戦い辛い上にあるかもしれぬ罠が待ち構えている可能性もあるからだ。
レンネィが以前戦った際も、建物に仕掛けられた罠によって苦戦を強いられた事があり……それを踏まえた結論であった。
コォーーーーンッ……ォンッ……
突然、ぼやけた高い音が周囲に響き……二人がピクリと魔剣を構えて更なる警戒を呼ぶ。
「……来るわ、物音に気を付けて」
「ウス……!!」
だが、そんな二人を驚愕させる程に……予想を超えた出来事が彼等を襲った。
大きな影を作り、空から一台の車が舞い飛んできたのだ。
「なっ!?」
「うおおおおッ!?」
宙で横回転しながら彼等の下へ飛び込んでくる車。
二人が咄嗟に跳び躱す。
途端、大音を立てて大地へと落下した車が破片を飛び散らしながらアスファルトの上を転がっていった。
「だめよ!! シンッ!!」
その時、不意にレンネィから叫び声が上がり……逃げ跳んだ心輝が「ハッ」として周りを見渡す。
彼の目に映るのは住宅街の全貌。
低く跳ねたレンネィと違い……心輝は思わず建物の屋根を超える程に高く跳ねていたのだ。
「やべッ―――」
その瞬間、空高く飛び上がった心輝に向けて何かが高速で飛び込んで来た。
それに気付き、心輝が空中で魔剣から炎を噴き出し応戦の構えを取る。
だが飛び込んできた物を目にした時……思わず慌て、その体で一身に受け止めた。
それは……人の遺体であった。
心輝の体に当たった途端、「グチャリ」という音と共に血のりがその体にべっとりと付き……白目を剥いた男の顔が彼の視界に飛び込んで来た。
「うおああーーーーーーッ!?」
突然の出来事に驚き、心輝は思わず遺体を突き放す様に放り投げる。
だがその拍子に彼の体は突き放した時の勢いと重力作用による上昇速度低下からなる浮遊感に見舞われ、バランスを崩して真っ逆さまとなった。
それはヴィジャールーにとっての好機以外の何物でも無かった。
これ見よがしにヴィジャールーが跳び上がり、心輝へ向けて襲い掛かっていたのだ。
僅かな間を縫って行われた行動は、まるでその状況になるのがわかっていたかの様な間髪入れぬ行動。
ヴィジャールーの顔が大きく歪んだ笑顔を浮かべ、その槍を掴む腕に力を篭めて突き出した。
心輝へと向けられた鋭い槍先が一直線に襲い掛かる。
「ヒヘヘヘッヘェェェーーーーーー!! 一突きだァーーーーーー!!」
長く鋭く、赤く染まった槍が心輝の体へと突き刺さろうとした瞬間……心輝の口が「ギリリ」と強く噛み締められた。
バォォォンッ!!
「なンッ!? だとォッ!?」
爆音が鳴り響き、心輝のグワイヴが炎を解き放つ。
凄まじい炎が力を伴い、彼の体を動かしたのだ。
途端、彼の体が空中で大きく回転し……槍の軌道から自身をズラした。
ガッゴォン!!
「っがァッ!?」
その時……心輝の体の側面を突き抜け迫りくるヴィジャールーの顔へと強い衝撃が走る。
回転した勢いを利用した心輝の回転蹴りが見舞われたのだ。
ヴィジャールーの頭が大きく仰け反りを見せるが……命力が大きく籠っていなかった為か、そのダメージは音程には与えられなかった様だ。
その顔は苦痛に歪んではいたが、その目には強い力を灯したままだった。
ヴィジャールーは怯みを見せながらも……咄嗟に盾を捨てて空いた左腕を振り回し、その拳を心輝の腹部へと見舞う。
ドッゴォ!!
「ぐふぉッ!?」
心輝の顔が歪み、苦悶の表情を浮かべながら……殴られた衝撃でその体が弾き飛ばされた。
それは一連の出来事……擦れ違い様に互いに一撃を食らわせ、勢いのままに落下していく。
心輝はバランスを取り戻す為に、魔剣から出す炎の勢いに任せて再び空へと舞い上がる。
それに対し、なお獣に跨ったままのヴィジャールーは姿勢を低くし着地の衝撃に備えていた。
ダッダダッ……
獣が静かに着地し、立ち止まる事なく走り続ける。
獣に跨るヴィジャールーは振り向く様に見上げ、高く弧を描いて空を滑空する心輝の背を眺めていた。
「今の魔剣使いはァ……空ァ飛ぶのかよォ!? ありえねェぜ……!! ヒヘェエ!!」
そう漏らしながら顔を正面に向け進路を見据える。
その瞬間、建物の合間からレンネィが飛び出しヴィジャールーへと一直線に飛び掛かった。
「覚悟ォ!!」
「くぅおおおおッ!?」
狙うは敵の首……再び竜巻の如き回転斬撃の嵐がヴィジャールーへ見舞われる。
突然の出来事に彼もまた焦りを隠せない。
咄嗟に手に掴んでいた槍を縦に掲げ、斬撃を防ぐ。
だが防ぎきれなかった斬撃が身に纏う鎧を刻み、貫いた数撃がその肉体を僅かに刻んだ。
淡い霧状の血飛沫を僅かに舞い散らせながらレンネィの斬撃が彼の背後を過ぎ去っていく。
そして勢いのままに民家の石垣を蹴り出し地面へと着地した。
彼女はその攻撃がなおも致命打にならない一撃と成ってしまった事に悔しさから、思わず歯を強く噛み締めた表情を浮かべていた。
レンネィがヴィジャールーの走り去る背中を目で追うが……再び建物の影へと姿を消し、気配もまた煙の様に消え去ったのだった。
「シン、無事!?」
『お、おう!!』
インカムに手を充て二人が対話を交わす。
互いに分かれた現状で無事を確認すると……間も無く心輝が屋根を伝ってレンネィの元へと飛び込んで来た。
「奴は!?」
「また建物の影に消えたわ。 警戒を怠らないで」
攻勢なのか劣勢なのか……どちらとも言えぬ現状、再び振り出しに戻ったとも言える状況で警戒はなお続く。
「俺が空から奴の姿を追うか?」
心輝が空を飛べる事は相手には知られたが……空というフィールドが彼専用である事には変わりない。
そこに仕掛ける事はあっても、罠は無い……そう思い、彼が提案を挙げる。
だがレンネィの意見はなお変わる事は無かった。
「例え奴を見つけたとしても、私の速度では奴に追い付くのは無理……貴方一人で仕掛けるのももっと危険。 結局奴を追い詰めるには、奴が遊んでいる時が唯一の反撃のチャンスなの」
ヴィジャールーが戦いを愉しみ、攻撃を仕掛けて来る時こそが最大のチャンス。
レンネィは今までの経験から導き出した結論を崩す様子はない。
自身の持ち味を生かす事が出来ない状況に心輝も若干不満げの表情を浮かべる。
とはいえ彼女の言う事もまた理解しているからこそ、彼は無言で彼女の背中へと自身の背中を合わせた。
「アンディとナターシャがでしゃばる前に片付けると言ったのだから……やるわよ!!」
「おう!!」
まだ余力は十分……二人の顔はなお闘志滾る表情を浮かべていた。
建物が多く連なる空間において、命力レーダーは役に立たない。
物理的な遮蔽物が波の進む道を塞いでしまうからだ。
意識を集中させる事で僅かな気配を探り、相手の出方を待つ。
足場の悪い建物の上に立とうものなら、戦い辛い上にあるかもしれぬ罠が待ち構えている可能性もあるからだ。
レンネィが以前戦った際も、建物に仕掛けられた罠によって苦戦を強いられた事があり……それを踏まえた結論であった。
コォーーーーンッ……ォンッ……
突然、ぼやけた高い音が周囲に響き……二人がピクリと魔剣を構えて更なる警戒を呼ぶ。
「……来るわ、物音に気を付けて」
「ウス……!!」
だが、そんな二人を驚愕させる程に……予想を超えた出来事が彼等を襲った。
大きな影を作り、空から一台の車が舞い飛んできたのだ。
「なっ!?」
「うおおおおッ!?」
宙で横回転しながら彼等の下へ飛び込んでくる車。
二人が咄嗟に跳び躱す。
途端、大音を立てて大地へと落下した車が破片を飛び散らしながらアスファルトの上を転がっていった。
「だめよ!! シンッ!!」
その時、不意にレンネィから叫び声が上がり……逃げ跳んだ心輝が「ハッ」として周りを見渡す。
彼の目に映るのは住宅街の全貌。
低く跳ねたレンネィと違い……心輝は思わず建物の屋根を超える程に高く跳ねていたのだ。
「やべッ―――」
その瞬間、空高く飛び上がった心輝に向けて何かが高速で飛び込んで来た。
それに気付き、心輝が空中で魔剣から炎を噴き出し応戦の構えを取る。
だが飛び込んできた物を目にした時……思わず慌て、その体で一身に受け止めた。
それは……人の遺体であった。
心輝の体に当たった途端、「グチャリ」という音と共に血のりがその体にべっとりと付き……白目を剥いた男の顔が彼の視界に飛び込んで来た。
「うおああーーーーーーッ!?」
突然の出来事に驚き、心輝は思わず遺体を突き放す様に放り投げる。
だがその拍子に彼の体は突き放した時の勢いと重力作用による上昇速度低下からなる浮遊感に見舞われ、バランスを崩して真っ逆さまとなった。
それはヴィジャールーにとっての好機以外の何物でも無かった。
これ見よがしにヴィジャールーが跳び上がり、心輝へ向けて襲い掛かっていたのだ。
僅かな間を縫って行われた行動は、まるでその状況になるのがわかっていたかの様な間髪入れぬ行動。
ヴィジャールーの顔が大きく歪んだ笑顔を浮かべ、その槍を掴む腕に力を篭めて突き出した。
心輝へと向けられた鋭い槍先が一直線に襲い掛かる。
「ヒヘヘヘッヘェェェーーーーーー!! 一突きだァーーーーーー!!」
長く鋭く、赤く染まった槍が心輝の体へと突き刺さろうとした瞬間……心輝の口が「ギリリ」と強く噛み締められた。
バォォォンッ!!
「なンッ!? だとォッ!?」
爆音が鳴り響き、心輝のグワイヴが炎を解き放つ。
凄まじい炎が力を伴い、彼の体を動かしたのだ。
途端、彼の体が空中で大きく回転し……槍の軌道から自身をズラした。
ガッゴォン!!
「っがァッ!?」
その時……心輝の体の側面を突き抜け迫りくるヴィジャールーの顔へと強い衝撃が走る。
回転した勢いを利用した心輝の回転蹴りが見舞われたのだ。
ヴィジャールーの頭が大きく仰け反りを見せるが……命力が大きく籠っていなかった為か、そのダメージは音程には与えられなかった様だ。
その顔は苦痛に歪んではいたが、その目には強い力を灯したままだった。
ヴィジャールーは怯みを見せながらも……咄嗟に盾を捨てて空いた左腕を振り回し、その拳を心輝の腹部へと見舞う。
ドッゴォ!!
「ぐふぉッ!?」
心輝の顔が歪み、苦悶の表情を浮かべながら……殴られた衝撃でその体が弾き飛ばされた。
それは一連の出来事……擦れ違い様に互いに一撃を食らわせ、勢いのままに落下していく。
心輝はバランスを取り戻す為に、魔剣から出す炎の勢いに任せて再び空へと舞い上がる。
それに対し、なお獣に跨ったままのヴィジャールーは姿勢を低くし着地の衝撃に備えていた。
ダッダダッ……
獣が静かに着地し、立ち止まる事なく走り続ける。
獣に跨るヴィジャールーは振り向く様に見上げ、高く弧を描いて空を滑空する心輝の背を眺めていた。
「今の魔剣使いはァ……空ァ飛ぶのかよォ!? ありえねェぜ……!! ヒヘェエ!!」
そう漏らしながら顔を正面に向け進路を見据える。
その瞬間、建物の合間からレンネィが飛び出しヴィジャールーへと一直線に飛び掛かった。
「覚悟ォ!!」
「くぅおおおおッ!?」
狙うは敵の首……再び竜巻の如き回転斬撃の嵐がヴィジャールーへ見舞われる。
突然の出来事に彼もまた焦りを隠せない。
咄嗟に手に掴んでいた槍を縦に掲げ、斬撃を防ぐ。
だが防ぎきれなかった斬撃が身に纏う鎧を刻み、貫いた数撃がその肉体を僅かに刻んだ。
淡い霧状の血飛沫を僅かに舞い散らせながらレンネィの斬撃が彼の背後を過ぎ去っていく。
そして勢いのままに民家の石垣を蹴り出し地面へと着地した。
彼女はその攻撃がなおも致命打にならない一撃と成ってしまった事に悔しさから、思わず歯を強く噛み締めた表情を浮かべていた。
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「シン、無事!?」
『お、おう!!』
インカムに手を充て二人が対話を交わす。
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「奴は!?」
「また建物の影に消えたわ。 警戒を怠らないで」
攻勢なのか劣勢なのか……どちらとも言えぬ現状、再び振り出しに戻ったとも言える状況で警戒はなお続く。
「俺が空から奴の姿を追うか?」
心輝が空を飛べる事は相手には知られたが……空というフィールドが彼専用である事には変わりない。
そこに仕掛ける事はあっても、罠は無い……そう思い、彼が提案を挙げる。
だがレンネィの意見はなお変わる事は無かった。
「例え奴を見つけたとしても、私の速度では奴に追い付くのは無理……貴方一人で仕掛けるのももっと危険。 結局奴を追い詰めるには、奴が遊んでいる時が唯一の反撃のチャンスなの」
ヴィジャールーが戦いを愉しみ、攻撃を仕掛けて来る時こそが最大のチャンス。
レンネィは今までの経験から導き出した結論を崩す様子はない。
自身の持ち味を生かす事が出来ない状況に心輝も若干不満げの表情を浮かべる。
とはいえ彼女の言う事もまた理解しているからこそ、彼は無言で彼女の背中へと自身の背中を合わせた。
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