639 / 1,197
第二十四節「密林包囲網 切望した過去 闇に紛れ蠢きて」
~宴~
しおりを挟む
南米、チリ。
コモドゥロ・アルトゥーレ・メリノ・ベニテス国際空港。
サンティエゴ国際空港とも言われるこの場所に勇達は降り立った。
長旅という事もあり、体を癒す為にサンティエゴへと寄港……一泊後、ブラジルへ発つという予定である。
地球を半周したという事もあり、彼等の為に用意された特別な航空機を使用しても疲れは溜まるものだ。
サンティエゴを選んだのは、その疲れを癒す為の寄港先としては順路的に丁度良かった事が挙げられる。
だが、それ以外にももう一つ……彼等にとってメリットがある理由があった。
それはこの街が、既に魔者との融和を始めた街であったからだ。
魔者の事が公表されてから既に2年余り……だが実は、彼等にとってはそれ以上に魔者との交流は長い。
フララジカが起きたその日、サンティエゴ北部の街中で突如転移が行われたのである。
まるでそれは渋谷で起きた変容事変と同じ様な状況。
その後、チリ政府によって閉鎖された同地域は封鎖地域として扱われたが……実は秘密裏に市民との交流が行われていたというのだ。
それもそのはず……転移してきたのは隠れ里。
敵意の無い魔者達だったからこそ、彼等は分かり合うのも早かったという訳である。
アシャバ族と呼ばれた彼等はオッファノ族と似た、全身短毛の大柄な種族。
恐らくオッファノ族との血族なのだろう。
だが性格は至って温厚で、転移後は戦う気を持たない人間と普通に接していたのだという。
警察や軍隊との衝突はあったが、決して彼等から戦いを挑む事は無く。
そして魔者の存在が公表されて以来、彼等と和解し今に至る。
街中にはちらほらとアシャバ族が歩き、人と挨拶を交わす姿が見受けられる程。
こうした人間と魔者との垣根が低いこの街であれば、アージとマヴォが出歩く事も適う。
それがこの場所を選んだ理由という訳だ。
たった一夜だけではあるが……羽根を伸ばす為に、彼等の乗る車は街中を駆け巡った。
チリ政府も今回の寄港には前向きだった様で、魔特隊に協力を惜しまなかった。
専用車両に運転手付き……おまけにガイドまで。
そして何より……アシャバ族の一人が彼等を迎えたのだった。
勇達の力添え無しに人間と和解した彼等の存在は、勇達にとっての希望以外の何物でもない。
おまけに彼はこれほどまでに無い程陽気な性格で……初対面の勇達でも明るく接し、彼等の心を掴むには時間は掛からなかった。
大柄で陽気な者同士……マヴォとは特に『相棒』などと呼び合う程に意気投合出来た様だ。
時間が押す中……彼等のガイドの下で、ぐるりとサンティエゴの街中を回る様に車を走らせる。
空港の周りの殆どが屋根の低い建物が連なるが、街中に近づくと途端に大きな建物が目立ち始めていた。
そして間も無く……街の空気が一変する。
アシャバの里とサンティエゴの境目へと訪れたからだ。
そこは勇達にとっても驚く場所であった。
それもそのはず、アシャバだけではない……他の種族の魔者までもがその場所に居たのだから。
その場所はいわゆる魔者特区……チリ政府と国連が共同で設立した、魔者が住める街【共存街】。
そこへ各国が手を取り合った、あるいは保護した魔者達が集まり、人と共に生活している。
その中には空島で国連に保護された魔者も居るというのだから驚きだろう。
魔者に関心を持つ『こちら側』の人間が、彼等と交流を持つ為にこの地へ訪れる者も少なくない……実はそれなりにメジャーな地とも言える。
観光と、交流と、そして発展を踏まえたその街は、世界初とも言える試みを行う最先端の異文化交流場の一つなのである。
この場所と比べれば、日本の魔者に対する環境は不十分と言いきれる程に、深く浸透しているのだ。
その街で、勇達は食事を摂る事となった。
チリ料理、そしてアシャバの伝統料理……様々な彩りを持つ料理が振る舞われる歓迎っぷりに、さすがの勇達も驚きを隠せない。
宴は夜まで続き……初めて会ったのにも関わらず、人間と魔者、そして魔剣使い……彼等はなんら変わり映えの無い笑顔を浮かべ、陽気な時間を大いに楽しんだのだった。
楽しい宴が終わりを告げ、勇達はアシャバのガイドと別れを告げると……車両に乗って彼等の泊まる予定のホテルへと向かう。
彼等を迎えたのは高級ホテル。
華やかさを感じさせる外観に、彼等の心を躍らせた。
当然待つのは豪華な部屋。
二人一部屋で割り当てられ、おかしくない組み合わせでそれぞれの夜を過ごす事となった。
その組み合わせに異議を唱える者も約一名居たが当然通る訳も無く……こうして彼等はようやく床に就く事が出来たのであった。
静かな朝を迎えた勇達は、朝食を摂った後……ブラジルへ向かう為に再び国際空港へと足を運ぶ。
先日彼等を迎えてくれたアシャバのガイドや現地の人々が見送る中……勇達は彼等との再会の約束を交わし、その場を後にした。
再び大空へ舞い上がる彼等の乗った専用機……それを見つめ見送る者達。
各々の想いを胸に、間も無く始まるであろう戦いに決意を固めるのであった。
コモドゥロ・アルトゥーレ・メリノ・ベニテス国際空港。
サンティエゴ国際空港とも言われるこの場所に勇達は降り立った。
長旅という事もあり、体を癒す為にサンティエゴへと寄港……一泊後、ブラジルへ発つという予定である。
地球を半周したという事もあり、彼等の為に用意された特別な航空機を使用しても疲れは溜まるものだ。
サンティエゴを選んだのは、その疲れを癒す為の寄港先としては順路的に丁度良かった事が挙げられる。
だが、それ以外にももう一つ……彼等にとってメリットがある理由があった。
それはこの街が、既に魔者との融和を始めた街であったからだ。
魔者の事が公表されてから既に2年余り……だが実は、彼等にとってはそれ以上に魔者との交流は長い。
フララジカが起きたその日、サンティエゴ北部の街中で突如転移が行われたのである。
まるでそれは渋谷で起きた変容事変と同じ様な状況。
その後、チリ政府によって閉鎖された同地域は封鎖地域として扱われたが……実は秘密裏に市民との交流が行われていたというのだ。
それもそのはず……転移してきたのは隠れ里。
敵意の無い魔者達だったからこそ、彼等は分かり合うのも早かったという訳である。
アシャバ族と呼ばれた彼等はオッファノ族と似た、全身短毛の大柄な種族。
恐らくオッファノ族との血族なのだろう。
だが性格は至って温厚で、転移後は戦う気を持たない人間と普通に接していたのだという。
警察や軍隊との衝突はあったが、決して彼等から戦いを挑む事は無く。
そして魔者の存在が公表されて以来、彼等と和解し今に至る。
街中にはちらほらとアシャバ族が歩き、人と挨拶を交わす姿が見受けられる程。
こうした人間と魔者との垣根が低いこの街であれば、アージとマヴォが出歩く事も適う。
それがこの場所を選んだ理由という訳だ。
たった一夜だけではあるが……羽根を伸ばす為に、彼等の乗る車は街中を駆け巡った。
チリ政府も今回の寄港には前向きだった様で、魔特隊に協力を惜しまなかった。
専用車両に運転手付き……おまけにガイドまで。
そして何より……アシャバ族の一人が彼等を迎えたのだった。
勇達の力添え無しに人間と和解した彼等の存在は、勇達にとっての希望以外の何物でもない。
おまけに彼はこれほどまでに無い程陽気な性格で……初対面の勇達でも明るく接し、彼等の心を掴むには時間は掛からなかった。
大柄で陽気な者同士……マヴォとは特に『相棒』などと呼び合う程に意気投合出来た様だ。
時間が押す中……彼等のガイドの下で、ぐるりとサンティエゴの街中を回る様に車を走らせる。
空港の周りの殆どが屋根の低い建物が連なるが、街中に近づくと途端に大きな建物が目立ち始めていた。
そして間も無く……街の空気が一変する。
アシャバの里とサンティエゴの境目へと訪れたからだ。
そこは勇達にとっても驚く場所であった。
それもそのはず、アシャバだけではない……他の種族の魔者までもがその場所に居たのだから。
その場所はいわゆる魔者特区……チリ政府と国連が共同で設立した、魔者が住める街【共存街】。
そこへ各国が手を取り合った、あるいは保護した魔者達が集まり、人と共に生活している。
その中には空島で国連に保護された魔者も居るというのだから驚きだろう。
魔者に関心を持つ『こちら側』の人間が、彼等と交流を持つ為にこの地へ訪れる者も少なくない……実はそれなりにメジャーな地とも言える。
観光と、交流と、そして発展を踏まえたその街は、世界初とも言える試みを行う最先端の異文化交流場の一つなのである。
この場所と比べれば、日本の魔者に対する環境は不十分と言いきれる程に、深く浸透しているのだ。
その街で、勇達は食事を摂る事となった。
チリ料理、そしてアシャバの伝統料理……様々な彩りを持つ料理が振る舞われる歓迎っぷりに、さすがの勇達も驚きを隠せない。
宴は夜まで続き……初めて会ったのにも関わらず、人間と魔者、そして魔剣使い……彼等はなんら変わり映えの無い笑顔を浮かべ、陽気な時間を大いに楽しんだのだった。
楽しい宴が終わりを告げ、勇達はアシャバのガイドと別れを告げると……車両に乗って彼等の泊まる予定のホテルへと向かう。
彼等を迎えたのは高級ホテル。
華やかさを感じさせる外観に、彼等の心を躍らせた。
当然待つのは豪華な部屋。
二人一部屋で割り当てられ、おかしくない組み合わせでそれぞれの夜を過ごす事となった。
その組み合わせに異議を唱える者も約一名居たが当然通る訳も無く……こうして彼等はようやく床に就く事が出来たのであった。
静かな朝を迎えた勇達は、朝食を摂った後……ブラジルへ向かう為に再び国際空港へと足を運ぶ。
先日彼等を迎えてくれたアシャバのガイドや現地の人々が見送る中……勇達は彼等との再会の約束を交わし、その場を後にした。
再び大空へ舞い上がる彼等の乗った専用機……それを見つめ見送る者達。
各々の想いを胸に、間も無く始まるであろう戦いに決意を固めるのであった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】魔法大戦 〜失われた古代魔法で無双する!〜
加瀬 一葉
ファンタジー
王立魔法学校。高等部に編入してきた冴えない生徒ラフィト。エリートが集うこの学校で、辺境出身のラフィトは落ちこぼれの劣等生なのだが……。
実は彼は、失われたはずの古代魔法を操る一族の末裔。魔族の脅威が増す時代に、ラフィトは人類を救うことができるのか?
過去と現在が交錯する、魔法ファンタジー。
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密
藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。
そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。
しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。
過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~
下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。
二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。
帝国は武力を求めていたのだ。
フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。
帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。
「ここから逃げて、田舎に籠るか」
給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。
帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。
鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。
「私も連れて行ってください、お兄様」
「いやだ」
止めるフェアに、強引なマトビア。
なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。
※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる